NO'8 Talk to About HER.
常に喧燥に包まれている店内を、ふいに静寂が支配する事が有ります。
常時流れているテクノ・ユーロが静けさの中で存在感を発揮するのは、
店内で何かしらの揉め事が起こった時です。
思考の大半を無責任な好奇心で甘やかしているショウ子嬢は、
独特の直感で、其れが人が創り出す修羅場であると確信し、視力、聴力、洞察力の
全て現場に集中させます。
アルコヲルに占拠されている人間独特の眼差しを持つ中年男性が、
お店の女の子、私の同僚に位置する女の子を前に
「この娘はスグ嘘をつくから嫌だ。付きを変えてくれ」と訴えています。
テーブルの上にはたくさんのお酒と料理が並べてあって、
男性は辛辣な表情を浮かべ俯き、無言で料理を食べ続け、決して女の子の顔を見ようとはしません。
女の子は困った風を装いながらも、半笑いを浮かべています。
(薄暗い証明の下、突っ立って薄笑うこの女、怪奇特集に出てきそう・・)
例によって全くどうでも良い事を考えながらも、
彼女には、この女の心が男性の半分も痛んではいない事が解ります。
金で買った女に嘘をつくなだなんて、言うほうがどーかしてる。
怪奇特集女とショウ子ちゃんは、きっとその話をさせたら良き友達になる事でしょう。
騙される方が悪いのです。こんな所で吐く台詞や笑顔なんて、嘘以外に占めるモノなんて無いのですから。
明ら様に愚かで、その解り易さがかえって切ない、シュールな光景でした。
黙々と無言で食べ続ける男と、半笑いのまま立ち尽くす女。
まるで安っぽいドラマを見ているみたいだと、彼女は無責任に思います。