NO’9 talk to about Her

 

黙々と無言で食べ続ける男と、半笑いのまま立ち尽くす女。

まるで安っぽいドラマを見ているみたいだと、彼女は無責任に思います。

トラブルに困惑し、しばらくウロウロしていた、ボーイと呼ばれるお店の男性が、

事もあろうにショウ子嬢を其の男性のお付きに指名しました。

無責任で楽しい傍観者だった筈の彼女は、突然シュールなTVドラマの舞台に上げられました。

彼女はボゥイのお兄さんを恨めしいと感じ一瞥します。

この様な面倒臭い役割を与えるなんて、こうゆうのは見てるだけで十分等と心の中で悪態をつきまくりながら、

平静を装って男性の前に座りました。男性は箸を止めて、ショウ子ちゃんの顔を見上げました。

初めて向き合って顔を見合わせます。

やや下がり気味な眉毛と、意外な程つぶらな二重瞼が、余計に哀れな印象を与えます。

下がり眉毛はしばらくショウ子ちゃんの顔を見つめると、

「冷めちゃったけど、コレ、食べて」等とテーブルを箸で指し示しました。

「有難う御座います。戴きます。」と曖昧な事を言って微笑みましたが、

薄暗い照明で何の料理かもよく解らず、

しかも先程の哀れな光景が残像の様に残り、何の変哲も無い御料理に迄暗い印象を残し、

とても口に運ぶ気にはなりません。彼女はこんな所で食事をする気など無い。

こんなお店で、こんなに御料理を注文するこの男性は、どうやらお金には不自由無い様です。

何といってもボッタクリですから。

音も無く冷めていくボッタクリ料理を前に、源氏名と呼ばれる名前を名乗りました。

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