NO'6 Talk to About HER.

 

その日4番目に偽名を吐いた男性は、

ショウ子ちゃんの顔が某アイドルに似ている等と騒ぎ、交際を申し込んだのでした。

その男性はいかにも遊び人といった雰囲気で、

軽い言い回しで口説き文句に属する台詞を吐き、彼女痩せた胸に触りました。

このお店は御触り禁止だというのに。手癖の悪い雄です。流石遊び人。

彼女は体に触られた事よりも、某アイドルに似ていると言われた事実に驚愕したようでした。

同時にショウ子ちゃんの、在って無いようなアンバランスな自尊心が傷付けられました。

そのアイドルは、ショウ子ちゃんの美意識に少しも引っ掛からない顔付きだったので。

やんわりと断って上体をそらし、肩に回されている男性の腕を払うと、

ミスター遊び人は自分の親が金持ちである事、自分の車の事、自分が某有名人と知り合いである事等を

次々と途絶える事無く話し、自分をアピールし出しました。

「すごーい」等と如何にも感嘆するフリをして、ショウ子ちゃんは別の事に驚いています。

こんな男性が現実に存在するなんて。

ショウ子ちゃんにとっては自己アピールとゆうよりは馬鹿さ加減をアピっているようでした。

そんな自分の持ち物や環境等、生まれてから後手に付随する物理的財産に過ぎず、

決して自分自身の価値ではないのに。

ミスター・遊び人は惜しげも無く自分のバカさを数珠の様に展開し、決して自分の内面の話をしませんでした。

ショウ子ちゃんの眼に映る彼の顔や体は、決して悪くは無い。

けれど少しも彼女の価値観に引っ掛かる話は有りませんでした。

こんな所でこんな話をして、こんな商売女を口説く男なんて、付き合った所で何の意味も有りません。

どうせ他の某アイドルに似ているというだけの女に、見境なく手を出すのに決まっています。

彼女にそうした様に。

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