NO'5 Talk to About HER.
日付が変わりました。
電車はもう既に終わっているというのに、男性の出入りは途絶える事は有りません。
相変わらずBitch・ショウ子は、一向に慣れる事の無いヒールの高い靴でヨロヨロと場所を移動しては、
新しい男性の煙草に火をつけ続けます。
新しい出会いが絶えません。絶えないけれど離別がすぐにやってきて、
その度に彼女はもうこの人とは二度と会わないかもしれないワ、等と思いながら
何の感傷も伴わないインスタントな別れの台詞を吐きます。
出会いを演出するボゥイと呼ばれる御兄サンが、新しい男性を御通しになり、
「ショウ子でェーす」等と、プライベートの知り合いには見せられないような自己紹介をする度、
彼等を此処に向かわせているのは一体何だろうと考えます。
性欲でしょうか、其れとも寂しさなのでしょうか。
(どっちもアリだね)
彼女は解っているつもりです。傲慢な物請いが如何にも彼女らしい。
夜を一人で居られない人間が居る事を、彼女は頭では知っています。
この場所は其れの埋め合わせ。只のフェイク。
ショウ子ちゃんは自分に与えられた仕事をその程度にしか思っていませんでした。
しかし時に本気で彼女の日常性に組み込まれようと、自分を主張する男性が居て、彼女を驚かせます。
インスタントにプライベートと区切って嘘を吐きまくるショウ子ちゃんにとっては、不測の事態です。
そんな時、雌としての絶対の自信等持っていない彼女は、此処での自分の価値が解らなくなる。
自分はこんな所で求められるような種類の雌では無い。
それはショウ子ちゃんのプライドでもあり、コンプレックスでもあるのです。