明徳寮ちょっといい話

明徳寮生も知らない、知られざる明徳寮の話。誰も知らないし知る必要もないちょっといい話です。

第一回〜消えた「北斗の光」2番〜

「北斗の光」は明徳寮で最も多く歌われる寮歌です。寮祭期間の歌練の最初と最後には必ず歌いますし、寮全体のイベント(入魂式、全寮コンパ、追いコン)では締めにリーダー長が指揮してみんなで歌います。僕の所属していたブロック(隣近所4部屋で構成されるグループの事。寮の行事はたいていブロック単位で参加していた)のように、最後まで残って歌を歌わず自分らの部屋に戻ってブロック飲み会に移行するところもありましたが、とにかく「北斗の光」は明徳寮で最もなじみの深い歌と言えるでしょう。

さて、「北斗の光」は3番まであり(参考)、寮では当然3番までしか歌いません。室蘭工業大学の学位記授与式(いわゆる卒業式)で卒業生が貰える寮歌CDの歌詞カードにも「北斗の光」は3番までしか書いていません。以上の事だけを見ると、「北斗の光」は3番までしかないように思えます。

ところで「北斗の光」は、学位記授与式に室工大合唱団と管弦楽団によって演奏されます。合唱団に所属していた僕は寮の口伝バージョンと、楽譜に書いてある合唱団バージョンの二通り、「北斗の光」を歌っていました。で、合唱版の楽譜には、歌詞が4番まで書いてあるのです。現在の1番と2番の間に、「2番」としてそれは書かれており、通常は演奏しないため歌詞に訂正線が引かれています。現在の2番と3番は数字がずれて「3番」、「4番」となっており、合唱団では1、3、4番を歌うということになっていました。これが消えた「北斗の光」2番です。

ではその歌詞を書いてみます。

さつさつのかぜ てんをゆく つきはくばくの たいへいよう
いっしゅうかげなき めいきょうや おもいはとおく ソロモンの
とうときかみに ささぐなり どーはつてんをつかんかな

楽譜が手元になかったため、楽譜を所有していらっしゃる工大合唱団のOBさんに教えていただいた歌詞です。ごらんの通り、楽譜はひらがなでしか表記されていませんでした。これを僕の推測で漢字を振ってみると以下のようになります。

颯颯の風天を征く
月漠々の太平洋
一舟影無き明鏡や
思いは遠くソロモンの
尊き神に捧ぐなり
怒髪天を突かんかな

「北斗の光」が作曲されたのが昭和19年である事から、「ソロモン」とはおそらく昭和17年8月のソロモン海戦の事だと思われます。まだ戦争中だったんですね。で、「尊き神」とはこの海戦で亡くなった兵士の事でしょう。戦争で死んだ兵士は靖国神社に祀られて神になったそうですから。こういった軍事色が原因で、その後歌われなくなったのだと思います。しかしそれが何故合唱団の楽譜には残っていたのか、本当に正式な歌詞だったのか(後で誰かが作詞したのか)等判らない事が残っています。確か合唱団には歴代指揮者が纏めた「合唱団における寮歌の変遷」という小冊子があったかと思われます。今度室蘭に行った際には確かめてみたいと思います。なんか、こういう軍国主義な時代の歌が、学生運動が吹き荒れた時代にも途切れず歌い継がれて今に至っているのが個人的には非常に面白いと思います。ほーら、ちょっといい話ですね。

この件について何かご存知の方はメールや掲示板でお報せ下さると幸いです(何もお礼はできませんが)。

参考文献

CD「荒涼北州 室蘭工業大学歌・寮歌」歌詞カード 製作:室蘭工業大学同窓会 

「北斗の光」合唱楽譜

2003/02/01


(電々、平成14年卒)

追記

工大の同窓会誌「モ・ルラン」46号に、エールの作者である保科盛さんが寄稿され、それによると「北斗の光」はそもそも春夏秋冬を4章構成で歌った歌で、「消えた二番」は「夏の章」であったそうです。歌詞は「月漠々の」「怒髪天をも」と、僕が推測した上記のものと若干違いがあります。もちろん保科さんが書かれたものが正しいと思います。正しい「消えた二番」歌詞を読みたい方は「モ・ルラン」46号を読んでください。OBには郵送されています。現役は学生課かN棟2階の喫煙スペースにでも行って捜してみましょう。(2003/04/17)

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