公開講座「住環境整備の手法を探る」に参加して はじめに 第1回 「住環境整備総論」 (4月17日) 第2回 「福祉用具に対する建築的配慮 (1)」 (車いす、杖、歩行器) (4月24日) 第3回 「福祉用具に対する建築的配慮 (2)」 (リフト、段差解消機、階段昇降機) (5月8日)
国際医療福祉大学大学院の公開講座「住環境整備の手法を探る」の13回の講座に今年4月から7月にかけて参加してきました。講師は、FJCの創設や検定試験のテキスト作成にも関わり、世田谷区総合福祉センターの特別アドバイザー、各種審議会の委員も務める住環境整備論の第一人者、野村歓先生です。BSLの「せたがや住宅福祉ガイドブック」作成時にもコメントをいただいた方です。 授業は、午後6時半から8時まで、地下鉄青山3丁目の近代的駅前ビルの5階ホールで、大きなプロジェクタースクリーン2面にパワーポイントのスライドを駆使した、わかりやすくポイントを押さえた講義でした。インターネット同時中継も行われ、社会人も多く受け入れる最近の大学の授業も様変わりしたなと感じました。生徒は、大学院生約20名、一般30名程度でしょうか?毎回の出席者は約30名程度でしたが、皆大変熱心に聞いていました。 講座の内容は教科書に書いてある以上のものではありませんが、主に、OTやPTを目指す学生用なので、症例別の事例紹介が多いということで興味がありました。BSLのすまいの相談や我が家の義母や実家の母のためのちょっとした改修には関わってきましたが、実践という意味では経験不足、知識不足の私にとっては、ポイントのみがわかりやすくコンパクトにまとめられているので、短い時間で知識の確認ができたことは大きな収穫でした。また、この年になると、知識や情報はすぐに忘れてしまうけれど、「BSLの住まいに関する基本的な考え方」はやはり間違っていなかったのだと意を強くすることができました。 そこで、この講座に参加した私にとってのまとめの意味もあり、BSLのHPに、毎回の授業で感じた「なるほど納得と思ったポイント」や「私的な感想」をブログ風に綴っていこうと思います。気楽に読んで、住まいの相談など、何らかの参考にしていただければと思います。 実際の内容については、テキスト 「OT/PTのための住環境整備論」野村歓、橋本美芽共著 三輪書店(3780円) に詳しくあり、たぶん来年度も同様な講座が開催されると思うので、興味のある方は受講されるとよいと思います。
私たちBSLの相談活動を通じて一番感じてきたこと・・・ 「誰のため、何のための改修かを常に意識し、簡単に出来ることからとりかかる、連携をとりながら考える・・・など」が大切であるという考え方の基本をまとめてお話していただいた感じの初回の授業でした。 ●共感したこと 「一般に流布されているマニュアルのほとんどは、加齢対応、要介護又は車いす使用者に焦点を当てたもので、個人対応ではなく共通事項的な色合いが強いが、加齢状態や障害は、本来個別性があるもの。個々の対応まではできないが、少なくとも疾患別の住環境整備の手法は考えられるはずなので、疾患別に今までの実施例や体験を中心に講義したい。」 ・・・・私も同感・・・・対策に正解はなく、ほんとにケースバイケースだと思う。 ●ポイント <住環境整備相談の留意点> (私たちが相談を受けるときに、押さえておくべき当たり前のことですが、もう一度確認) ■生活している場所で相談を ・一日の生活を見よう(ex 間接リウマチの人は、朝が動かない手が、昼になると動く) ・日常生活全体を見よう(ex 不便・不自由な点は何か) ■できる限り詳細な情報の収集と整理を ■相談に関するキーパーソンの存在(誰か?) ■心身状況の変化への対応 ■家族の同意 ■費用と実施の有無(費用負担は誰か?) ■相談の主体は相談者にある(高齢者は一般に積極的でない。家族が介護しやすいかなど) ■フォローアップをきちんと行う ・使い勝手の確認 ・使い勝手の変化に対応(ADLの変化、介助内容の変化) ●参考図書 積算資料ポケット版「バリアフリー編」経済調査会 住宅整備に関する費用の大まかな目安として参考になる。毎年改定版がでている。やや安めの価格かもしれないとのこと。
●ちょっと確認【福祉用具とは】 「福祉用具とは、心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある老人または心身障害者の日常生活上の便宜を図るための用具およびこれらの者の機能訓練のための用具並びに補装具をいう。(福祉用具法第2条 平成5年10月1日施行)」 ・・・今日は、歴史、用語の変遷などのお話から始まった。関連用語としては、医療用具、医療機器、福祉機器、介護機器、介護用具、自立支援機器などがある。紀元前から義手が作られ、ローマ時代にもう車いすがあったのだ。その開発の影には戦争があった。それぞれに定義はあるが、結構曖昧な使われ方がされている。今は「福祉用具」という呼び方が主流とのこと。福祉機器展でもわかるようにその進歩は著しい。 ● ポイント <福祉用具を選択するときの確認事項> ①身体的要件(ADL/運動能力/疾患、障害の将来の予測) ②心理的要件(障害の受容/福祉用具を使いこなそうとする意欲/集中力や学習能力) ③社会的要件(家族状況/住宅状況) <福祉用具を選ぶとき、忘れずにチェックすべきことを私なりにまとめると> ・使用者、家族、介護者にとって、使用するメリットがあるか? ・使用者、家族、介護者が使いこなせるか? (例:天井走行式リフター、エレクトロニクス製品・・・介護者が使いこなせる?) ・使用に際して、安全・安定しているか? ・持ち運びは容易か? ・掃除や修理が容易か? <車いすへの建築的配慮> ・段差の解消→20㎜以下(キャスターが小さい場合は、更に段差が小さいことが必要) ・床材の硬さ ・通行幅員、スペースの確保(自走用車いす:750〜780㎜ 介助用車いす:700〜750㎜) <杖、歩行器使用への建築的配慮> ・段差の解消→5㎜以下(転倒する恐れ、すり足の人はつま先が上がらない) ・滑りにくい床材の選択 ・歩行時に音の出ない床材 ・通行幅員の確保 ● 特に共感したことや感想 ・車いす、補聴器、歩行器は、本人に適合(Fitting)するものを見つけるのはとても難しい。 専門家の意見が必要。 ・外国では残存機能をできるだけ活かそうという思想が強く、歩行器が多用されているが、 日本では使用環境や使用訓練などの点で使用が少ない。 在宅で歩行器がうまく利用されている事例やメリットを知りたいものだ。
やや専門的でしたが、実際に利用を検討する上で私が気になったポイント事項のみ、記載します。 ■床走行式リフト(介護保険対象) 外国では多用されるが、日本の住宅であまり使われないのは何故? →少しでも段差があると使えない(敷居)。畳はめりこむ。 移動スペースが広くないと使えず、操作も難しい。 ■固定式リフト(介護保険対象) ベッドサイド、浴室、玄関先などでの使用例はかなり多い。 メーカーは「モリトー 」がほぼ独占(水圧式 約80万円)。 しっかりポールを立てる位置があれば、段差解消が不要になり便利。 但し、介助者の操作能力がある程度必要。 ■据え置き式リフト(介護保険対象。建築工事不要) ベッドから車いすへの移乗に便利(6〜8畳の部屋でOK)50〜70万円。 介助労力は軽減されるが、高齢者はいやがる。 ■天井走行式リフト(介護保険対象外)(障害者助成あり) 建築上の制約(天井補強)、高齢者が怖がる、トランスファー時の介護が増大することから、 障害者以外あまり普及しない。「かるがる君」は室間移動が可能でよく使われる。100〜120万円 ■段差解消機(工事を伴わない形で設置すれば、介護保険福祉用具の対象) うまく利用すれば利用価値はありそうだが、設置上の制約や留意点がある。 ・テーブル(650〜800)㎜×(850〜1200)㎜の大きさが入る設置スペースが必要。 介助者が乗れるスペースも考えると更に広さが必要。ほとんどが受注生産。 ・油圧式の場合、テーブル高さはGL+(20〜70)㎜となり、 GLとテーブルをそろえるには、ピットが必要で、固定 工事が必要。その場合介護保険対象外 ・新築時の設置には確認申請必要(あとでつけることが多い) ・一定の荷重があるので、埋設物 に注意(ガス管、水道管など) ・機械式の場合電源が必要 ・上昇したとき、下部に入り込まぬように配慮が必要(カバーやジャバラ) ■階段昇降機 これも設置上の制約や留意点がある。費用もかかるし本当に必要かよく考えたい。 ・新築時には確認申請が必要 ・階段の幅に余裕を(750㎜以上) ・いすの高さが車いすと合わない (車いすの場合、高さを合わせること、階段上下にトランスファーするスペースが必要) ■住宅用エレベーター 制約や留意点 ・新築や改築時に確認申請必要 ・家族全員の使い方を考えて、本当に必要かどうか。約240万円前後。 |