★☆プラグ イン☆★をするのはいつの日か
ヒュ〜(風)
ヒュ〜(風)
ヒュ〜(風)
真っ暗
真っ暗
真っ暗
深い?
深い?
深い?
と言うことは
と言うことは
と言うことは
助からな「助ける!!」
各々の頭の中で繰り返されていた言葉が、その対象であるべき人物と、同じ顔をした人物によって遮られる。
「助けるんだ!オレ達で!!」
妙に達のところが強調された言葉を、その場にいるクラスメイトへと投げかける。
「でも、この崖じゃ・・・」
アオイが見えない崖の底を見つめる。ただ暗闇が広がるばかりだ。
「それでも、トモユキを助けなきゃ!」
トモヤの脳裏には自分に助けを求める弟の姿が浮かんでいた。
「きっと怪我してるはずだ。早く、助けに行ってやらなきゃ・・・」
(そうだ、きっと怪我して泣いてるに違いない。オレの助けを待ってるはずだ。早く、早く行ってやらなきゃ)
顔を俯けながら、強く拳を握るその姿に、周囲にも緊張が走る。
「トモヤくん・・・」
アオイがトモヤの前へと、一歩進み出る。
トモヤは更に深く、顔を俯ける。
「じゃ、トモヤくんが降りてねv」
「え?」
語尾にハートマークがついていそうな口調で言われた言葉にトモヤが顔を上げると、いつの間にやらマモルとコウジが、彼の体に縄を巻き付けていた。
「え?あの、これは・・・」
一体・・・。自分に付けられた縄をつまみ上げながら、アオイへとおそるおそる問いかけてみる。縄の先には、縄を木に巻き付けているナオキの姿があった。
「トモヤくんが、トモユキくん追いかけて崖に降りてね」
パチン。
アオイが指を鳴らすと、トモヤに縄を巻き付けた後、そのまま彼の背後に控えていたマモルとコウジが、今度はその腕を、左右それぞれがっしりとつかむ。
そしてそのまま彼を崖の方へと引きずっていく。
「いや、あの、降りるにしてももうちょっと準備ってものが」
必死の訴えに、アオイはにこにこと笑いながら手を振り、その他の人々は、哀れみのような表情を顔に浮かべているか、トモヤから顔を背けているかのどちらかだった。
足をふんばらせて必死でその場にとどまろうとするが、元々引っ張っていた二人に縄を巻き付け終えたナオキも加わり、三人掛かりで引きずられ、その抵抗は虚しく終わった。
「許せ・・・オレ達も自分の身が可愛いんだ・・・・・・」
コウジの沈痛そうな声が聞こえる。
闇がトモヤを迎える。
(ああ、確かにこれなら一人で寂しがってる弟のところに行けるな・・・待ってろよ、トモヤ。今兄ちゃんが行くからな。そして崖の底で二人で暮らそう。そう、真っ暗な崖の底で・・・崖の・・・)
「そんなのイヤだ〜〜〜〜〜〜!!」
トモヤは落ちる寸前で、必死の抵抗を試みる。全身全霊を掛けて、崖とは反対の方向へと、体を押し進めた。
トモヤをつかむ三人も、そのトモヤの抵抗に抗う。自分たちの後ろには、微笑む者がいるのだから。もしもこの任務が遂行できなかったら、その時は・・・
本来なら一人対三人でトモヤは既に落ちているところなのだが、実際に落とされかけているトモヤの抗おうとする気持ちの方が強く、戻りも進みもしない。四人とも一瞬も気を抜くことはなく、暫くそのまま時が過ぎる。
やがて、その均衡状態は別のところから加えられた力によって終わりを告げた。
「早く降りてよ」
その言葉と共に少しの衝撃が与えられ、トモヤの体は闇へとダイブした。
段々と小さくなっていく、バイバイと手を振っている自分をつついた人物の姿に向かって、トモヤはずっと言いたかったことを叫んだ。
「これは、降りるじゃなくって、落ちる・・・っていうか落とされるだ〜〜〜〜〜!!」
トモヤが段々声を大きくしているのに対し、その発生源がアオイ達から離れていくせいで、彼女達に聞こえるトモヤの声の大きさは変わることはなかった。
最後の時まで
トモヤに付けられていた縄がやがてピンと張り、そしてすぐにブチッと言う音と共にその張りはなくなった。
・・・・・・・・・・
しばし、その場に沈黙が訪れた。
「あの・・・トモヤくん危ないんじゃ・・・」
その静けさを破ったのは、さすがクラスのリーダーvみんなのこと気にかけてるんだね!のショウだった。
「大丈夫よ」
根拠がある分けないのだが、アオイの声はやけにはっきりと自信を持っていた。
ショウはなおも言いかけようとするが、ため息と共に、隣にいたナオキにポン、と肩を叩かれたことにより、それは続けられることはなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
先程よりも長く、そして重苦しい沈黙に、その場は包まれた。
「あ!いた。みんな〜」
今度は明るい声によって沈黙が破られた。
言葉のする方を皆が一斉に向くと、そこにはこちらに駆け寄ってくるケントの姿があった。何故か服がそこらじゅう破れ、擦り傷をあちこちに作っており、その姿は、満身創痍と言って過言ではなかった。
「あっ!てめぇ!!何処いやがった!!」
「そーいえばケントくん、今日一度も姿見掛けなかったね」
隣でいきり立つナオキを見て、彼が朝からずっとケントを捜して走り回っていたことをショウは思い出した。
ケントに向かって爆走するナオキの姿に、その場は先程の沈黙は完璧にどこかへと消え去り、明るい雰囲気に包まれた。
が。
「お〜い。こっちだよ」
「うん」
ナオキは走るのを止めた。
ケントと一緒に、こちらへと走ってくる者がいる。ケントとは違い、服には全然すり切れたところもなく、見た限りでは怪我も全然なく、元気そうだ。長い青い髪は風になびかれ、緩やかに波打っている。その顔には輝くばかりの笑顔が溢れ・・・その顔は・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
三度、沈黙が訪れた。
約二名を除いたそこにいる人物の全ては、輝く笑顔で駆け寄ってくる二名のうち、一名を凝視した。
二人はみんなの元へと着き、明るく会話を始めた。
「そういえばトモユキくん、何であんなとこにいたの?」
「う〜ん。わかんない」
「なんだよそれ〜」
「ケントくんこそ、何であんなとこにいた・・・来たの?」
「え?走ってたらいつのまにか」
「なんだよそれ〜」
アハハハハ。
明るい笑い声が場に広がる。
二人分の笑い声が。
「それにしてもあいつなんだったんだろうね〜?」
「だね〜。ボク食べられるかと思っちゃった」
「オレも」
ずっと一名を見続けていた人々は、一斉に視線を転じた。
後ろへと。
暗闇へと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今度の沈黙は、長かった。
否、正確には沈黙ではなかった。二人はしゃべりまくっていたから。
しばらくして、彼らの頭上で鳥の鳴き声がした。
アホーアホー
「カラスが鳴くから、か〜えろ」
誰が言ったのか、こうして、ダイバーランドの小学生達の遠足は、終わりを告げた。
それから一週間後。
親王家のチャイムが鳴らされ、トモユキが玄関へと出たが、そこには誰もいなかったという。
そしてその翌日。
行方不明だった長男が、ボロボロすり切れすり切れ破れ破れで何か真っ黒真っ黒な格好をして、頭にまるで寝ていたところを扉を思いっきり開けられてそのまま意識不明に陥ったようなたんこぶを付けた姿で、自宅の玄関の前で倒れているところを、近所のおばちゃんに発見されたという。
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ずいぶん遅くなってしまいました。
しかも駄。
こんなものですが、掲示板に感想書いて下さったお二方に捧げます(←かなり迷惑。すいません)△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽△▼▲▽
帰る