最後のKISS 【1】




涼介と拓海のバトルが終わったあとのこと・・・。

「藤原。お前に惚れたよ。その卓越したドライビングテクニックも含めて、
お前のすべてが知りたい。・・・つき合ってくれないか?」

単刀直入に涼介は拓海に告白をした。

拓海はただポーーっと頬を上気させたまま、何も答えず、

「返事、待ってるぜ。」

と涼介に携帯の番号の書かれたメモを渡され、ボーっとFCを見送った。





高橋家にて・・・。

「アニキ・・・・今日は、さ、・・・・・」
啓介が涙目で部屋に入ってきたと思ったらすぐに言葉に詰まって泣き出した。

「啓介、泣くなよ。オレは大丈夫だ。」

「だって・・・ア、ニキィ・・」

21歳にもなる男がぐすぐすと鼻をすすっている姿に、涼介は

(負けたのはオレなんだがな・・・)

と、苦笑した。

啓介が泣きやむ頃合いを見計らって、

「実はな、さっき、藤原に交際を申し込んできた。」

「ええっ!?」と、啓介は泣きはらした目をぱちくりさせた。

「・・アニキ・・・・?それ・・・マジ?」

「オレは至って本気だが?」

負けたというのに、それどころか藤原への愛をうち明けるほど
余裕しゃくしゃくの兄ににに啓介は、驚き、

「アニキってすげーーーー!!」

                ・・・・・・そして尊敬していた。(・・・)





藤原家では・・・・。

(あんなカッコいい人がオレに告白してくるなんて・・・)

悩ましげな顔をして拓海はベッドの上でごろごろと寝返りをうった。

涼介に見つめられて、拓海は金縛りにあったように、動けなかった自分を思い出す。

(オレ・・・あの人に見つめられると心臓がドキドキするんだよな・・)

既に涼介に恋をしている拓海なのであった。





それからは、男同士という障害を越えて、2人の交際はなかなか順調にスタートした。
しかし、2人の間に、大変な問題があったのである。


・・それは、涼介が拓海を抱きしめたときだった。

「拓海・・・もう離さないよ・・」

「涼介さん・・。」

文字通り、ラブラブな状況でソレは起こった。


ひし、と抱き合っていた涼介が、急に咳き込み始めたのだ。

ごほっ、ごほごほっ!

「涼介さん!!大丈夫ですか?」

気遣う拓海が背中をさする。

大丈夫、と、拓海のやさしさにじーーんとして、再び涼介ががばっ、と
拓海に抱きつくと、

ごほっ!!

咳がでる。

(おかしい!!何故なんだ!!こんな時に!!)

冷静を装いながら彗星様は脳をフル回転させた。

(今までこんな事はなかったハズ・・・)

(・・・そういえば、昔豆腐を食ってアレルギーになったことが・・・ってはっ!!!)

(拓海の家は豆腐屋!!!)

フル回転だか何だか分からないが、涼介のはじきだした結論は、

自分が”豆腐アレルギー”ということであった。


顔色が悪い涼介が、黙りこくって遠くを見つめている姿に
、 拓海は不安になって、

「涼介さん・・?」

と、涼介を見上げる。

その姿に涼介はぐらっ、としながら、抱きしめたい衝動を抑える。

「拓海・・・。すまない。しばらく会えなくなるかもしれない・・・。」

「ええっ!?どうしてですか?」

問いかける拓海の目尻に滲んだ涙を拭いながら、涼介は、

「理由は聞かないで欲しい・・。だが、オレが拓海を愛してることにかわりはないから・・」

「涼介さん・・・・」

涼介はそう言って拓海の額にキスをすると、FCに乗って帰っていった。





(マズイッ!!非っ常にマズイ!!このままではオレと拓海の未来が・・・)

ゴアァァアーーーー!!

甲高いエンジン音とともに、彗星様は頭を更にフルスピードで回転させたのであった。




さて、またまたコメディーです。(笑)
こんなアニキにどこまでついて来れるかしら!?(・・冗談です・・)




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