ビンボー戦隊アキナマン

市ノ瀬蝶子さん・作



<第三章 新生アキナマン発足!>


「ほ、本当ですか!?オレの戦隊に入ってくれるって・・・!?」
基地兼職場であるガソリンスタンドで、一日の仕事が終わり、帰る準備をしていた池谷の前に、
突然文太が「ハイオク満タン」と現れた。
「ああ・・・困ってるみてェだしな・・・」
文太は無精髭の生えた顎をぼりぼりと掻きながら、池谷が給油する手つきを眺めている。

「ありがとうございます!!恩にきります!!」
(ああっ、これでようやく新生アキナマン誕生だー!)
アツイ男、池谷は、たまらず、くーっとガッツポーズを決めた。

「おい、兄ちゃん」
「アキナレッドって呼んでください(はあと)」
(そういや文太さん、(←すでに名前で呼んでる)のカラーは何色がいいかなァ)
指をくわえながらぼ〜っと空を見つめ考え込む池谷に、呆れたように文太が言った。
「ガソリンあふれてっぞ・・・」
「うわっ!!(お約束)」

翌日、血と汗と涙と情熱と愛と根性とその他様々なもので
ようやく文太を説き伏せることに成功した池谷は、困っていた。

「ピ、ピンク(女の子)が足りないっ!!」
拓海を入れ損ねたことで、紅一点のなつきが脱退してしまっていたことを
すっかり忘れていた池谷だった。

「すみません・・・」
そこへ、ベンツに乗った女の子が現れた。
「給油お願いしたいんですけど・・・」
「あっ、ハイすいませんっ」
池谷はあわててベンツの給油にかかる。

「私、白石と言います。ひとつ・・・聞いてもいいでしょうか?
あなたならたぶん知ってるでしょう」
池谷がフロントガラスを拭いていると、白石と名乗る女の子が話しかけてきた。
「いいですけど・・・?」
道でも聞かれるのかと思って、池谷は営業スマイルを浮かべる。

「秋名山には、戦隊が出るでしょう?」
「!!」
意外なことを聞かれて、池谷は目を見開いた。
「なぜ、オレたちのことを・・・」
「お噂はかねがね。」
三つ編みに四角いふちメガネをかけた白石は、にっこりと微笑んだ。
その言葉に池谷は(もしかして、オレたちって有名!?)なんてちょっと嬉しがる。

「最近、ピンクの子が脱退なさったとか」
「え、ええ・・・」
「それで、もしよろしければ私を入れていただけないかと・・・」
「え、えええええええ!?」
あまりに突然のことに、池谷は七段階の「え」を連発した。
気弱そうな外見とは裏腹に、白石は強気で池谷に詰め寄る。
「そ、それはもちろん嬉しいけど・・・。せ、戦隊ってのは特殊な集まりだからさ、
その、例えばなつきちゃんはセクシーダンスで全員(味方含)を戦闘不能にする能力があった
んだけど・・・、なにか得意な技とか・・・ある?」


「ええ。私の場合は・・・呪殺とか・・・」
「じゅ、じゅさ・・・?」
白石の身体からユラリと立ちこめる「何か」を感じ取って、
池谷は思わず持っていた雑巾で冷や汗を拭った。

「呪殺、です。呪い殺すんです。」
ギラリ、と白石のメガネがあやしく光る。
「あとは外縛したり・・・結界を張ったりもできます」
「な、なるほど・・・」
なぜか自分のまわりの空気だけが一気に冷たくなったように感じて、
池谷は、ぶるっと身震いした。

「入れていただけますよね?」
じっと見つめてくる白石の視線にえも言われぬ恐ろしさを感じて、
何かに操られたように池谷はうなずくことしか出来なかった。

「・・・また明日、来ますね。」
白石が、ニヤリと嬉しそうに笑う。
つられて池谷も引きつった笑いを浮かべた。
ところで・・・、ガソリンあふれてますけど」
「!!(そのうちクビ)」
「それじゃ」

ガソリンスタンドを後にした白石は、ニヤリとひとりほくそ笑んだ。
(私の催眠暗示はやっぱり最高ね・・・ふふふ・・・待ってなさい、拓海くん!)
危険なオーラを発しながら、秋名の街をベンツはひた走る。(初心運転者)
なんにせよ、こうしてアキナマンは再結成されたのだった。


新生ビンボー戦隊アキナマン
▼ メンバー ▼
アキナレッド・池谷(必殺技/あつあげくださいパンチ)
アキナグリーン・健二(必殺技/ナンパ)
アキナイエロー・イツキ(必殺技/マシンガントーク)
アキナシルバー・文太(必殺技/オヤジビンタ)
アキナピンク・白石(必殺技/呪殺)


<第三章・完>



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