ビンボー戦隊アキナマン

市ノ瀬蝶子さん・作



<第四章 戦士の日常>


涼介さん御用達戦隊バトルフィーバーD!

▼ メンバー ▼
バトルホワイト・涼介(必殺技/すべて必殺なので特になし!)
バトルイエロー・啓介(必殺技/泣きおとし)
バトルパンダ・拓海(必殺技/ブラックアウト)
バトルブルー・沙雪(必殺技/愛のムチ)
ボトルブラック・中里(必殺技/霊視)



それはある日の昼下がり・・・。
「あたし、分かっっちゃったわ・・・」
基地のリビングでコーヒーをすすりながら、沙雪がつぶやいた。
「なにがだよ?」
中里、啓介、拓海の3人が、興味津々で沙雪に注目する。
お誕生日席に座っている涼介だけが、どうせくだらねぇことだろ、と新聞を読み始めた。

「Dはやっぱり・・・」
うんうん・・・と、3人がうなずく。涼介はこっそり聞き耳を立てた。
「涼介×啓介、涼介×拓海よね(はあと)」

ぶーっ、と中里がコーヒーを吐き出す。
きったねぇ、と中里の向かい側に座っていた啓介が眉をひそめ、キッチンで洗い物を
していた史浩にタオルを持ってこさせた。

「兄弟モノはギンガマン(それしか知りません)からの宿命。
1号×2号はガッチャマンからの宿命・・・カップリングは逆だけどね」
うっとりした表情で、沙雪は満足そうに話した。新聞を読みつつ涼介も、
(沙雪もたまにはいいコト言うな・・・フフ・・・できる巨乳はキライじゃないぜ)
と、ポーカーフェイスでコーヒーをすする。

「ちょっと待て!!」
しかし啓介は納得がいかないらしく、斜め向かいに座る沙雪をビッと指さした。
おい沙雪!!拓海が2号ってどーゆうことだよ!?オレがDのナンバー2だぞ!?
アニキ(はあと)オレ以外の組み合わせなんてオレは認めないぜ!!」
「涼介さん、ダブルエースって言ったもん・・・」(エースはナンバー2じゃないよ拓海)
ぼそっ、と啓介のとなりに行儀よくお座りしていた拓海がつぶやく。

「ンだとコラァー!?ヤんのかこのガキャー!!」
大体テメェはハナッから気にいらねぇンだよっ、と啓介が拓海の胸ぐらをつかむ。
「聞いてンのか、ああ?」
啓介に首をガクガクと揺すられながら、拓海がクッ・・・と笑った。

「おい・・・その辺でやめとけよ」
なんとなく事態を察して、涼介は啓介を制止したが・・・。
「別に・・・啓介さんがいいんなら・・・いいですよ、犯っても
ゴゴゴゴゴ・・・と拓海の体内からダークなオーラが勢いよく噴射されるのを霊媒師中里は目撃した!!

「まずいぞ!攻オーラが出てる!ブラックアウトしやがった・・・ァ!」
「啓介のバカッ!!またやったわね!!」
「ち、ちがうよ、オレじゃねえよー!元はと言えば沙雪が・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないぞ啓介!ターゲットはお前だ!よけろ!」
「うわぁっ!」

がしっ!と勢いよく拓海が啓介にしがみつく。はぁはぁと荒い息を弾ませながら、
拓海はサカリのついた獣のように、そのままソファに啓介を押し倒した!
「ア、アニキ〜!」
啓介は目に涙を浮かべて拓海の手を振りほどこうともがくが、なにせブラック拓海に
なると腕力が20%増しなのでどうにもならない。

「ふふ・・・啓介さん・・・かわいいですよ・・・なんか、もっと泣かせたくなっちゃうなァ・・」
つつ・・・と拓海のイケナイおててが啓介のパーカーのなかに忍び寄る。
「うぎゃあああっ!アニキーッ!!ヤバいよー!!」
かわいそうなくらいわめきながら、あくまでも涼介だけを呼ぶ啓介!!(愛だね)

「ナニやってんのよっ!早く助けてあげなさいよバカ!!」
沙雪がたまらず涼介を怒鳴る。

「ま、まて!邪魔するな!!シュミレーション中だ!!」

「アホかお前ーッ!!てゆうかむしろ天才すぎて
考えてることが分からーん!!」


沙雪は涼介に一発お見舞いすると、
「しゃーない、あたしたちでなんとかするわよ中里!!」
ひゅ、とムチをならす。拓海を正気に戻すには、大きなショックを与えるしかない。
「オ、オレは嫌だぞ!!だってそいつ攻になると(男に)見境ねーんだぜ!!
啓介よりもオレは自分のバックバージンの方が大事だ!!」

「・・・・・・っ!!(あきれて何も言えない沙雪)」
そんな問答をしているうちに、拓海は啓介のパーカーをまくり上げ、
恐怖の乳首攻めに入った。
「あっ・・・・・くっ・・・やめっ・・」
一番弱いところを攻められ、啓介は嫌々をするようにかぶりをふる。
「ふふ・・・別に堪えなくたっていいですよ・・・イイんでしょ、ココ」
「くそっ・・タレが・・・ぁ・・ッ」
拓海は勝手に啓介を組み敷いておっぱじめるし、涼介は一人でぶつぶつ言ってるし、
中里は悪魔払いを始めるし・・・。

沙雪は何だかすべてのことがどうでもよくなって、拓海のテクを拝見でもしようかと
向かい側のソファーに腰かけた時だった。


「よし!!シュミレーション終了だ!!」

今更という気もするが、涼介がようやく拓海を愛する啓介から引きはがした。
(それだけのためになんであんなにシュミレーションに時間がかかんのよ・・・)
天才の考えていることはわからない。
しかしもっとわからないのは「つきぬける天才!!」の考えていることだ。

「フフ・・・涼介さん・・・いいニオイがする・・・」
するり、と拓海は今度は涼介の首筋に唇を押し当てる。
「ヤバイぞ!!ターゲットを涼介に替えやがった!!」
もはや実況リポーターの霊媒師中里。

しかし涼介も負けてはいない。涼介がすうっ・・・と息を吸い込むと、史浩が申し合わせたように
ラジカセのスイッチを入れた。
あやしいキーボード音とともに、ちゃ〜ちゃらら〜♪と伴奏が流れ始めた。
続いて涼介はどこからともなくマイマイクを取り出すと、
ぶらっか!!ぶらっかぁ〜あっ!(←こう聞こえる)」と気合い(?)を入れた後、
聞き覚えのあるセリフを奏でだした。

ク、ウ、ル、になーれドーンルーコーンロー(←こう聞こえる)
シ、ミュ、レ、イ、ショ〜ン、どぉ、り、さ〜 ♪


「いやあああああッやめてエエエエエッ!!!」
「あ、あわわわわわ・・・」
涼介の奏でるステキな音階に、沙雪は感動してつんざくような奇声を上げ、
狂ったように耳をふさいでぶんぶんと頭を振り、中里は感激のあまりその場に腰を抜かした。

「ん・・・あれ・・・?涼介・・・さん・・・?」
涼介の腕の中で、あれほどサカッていた拓海も正気に戻る。
「気がついたか・・?」
歌うのをやめた涼介に顔を覗きこまれて、拓海が「ハイ・・・」と顔を赤らめてうつむく。
「シュミレーションは、成功したようだな」
ふぅーっ、と涼介は額の汗を拭った。さすが天才。
拓海を正気の戻すまでが、彼のシュミレーションだったのだ。

「これが高橋涼介必殺技其ノ二十三、歌だ!!
すごいぜアニキ!!やっぱりアニキは最高だー!!今度はオレと、
奇跡の薔薇を歌おーぜーッ!!」

兄の歌は、啓介の回復効果もあるらしい。にっくき拓海(いろんなトコでライバル)
に押し倒されてヘコんでいるはずの啓介は、元気いっぱいでソファーから飛び起きて、
兄とそろいのマイマイクを取り出すと「いつまでくついてんだよっ!」と兄から
拓海を引きはがし、史浩に合図する。

まもなく、奇跡の薔薇の前奏が流れ始めた。
「なんでアイツの歌聴いて回復できんのよ・・・」
「おそるべし、高橋啓介・・・だな・・・」
3人の様子を眺めながら、沙雪と中里は改めて味方の恐ろしさを知ったのだった。

「アイツの歌で正気に戻ってしまう拓海くんのほうが、まだまだ甘い、ってとこかしら。
ヤバッ!はじまるわ!私たちはまともな人間なんだから、アイツの必殺技に堪えられない!
帰るわよ、中里!!」
「お、おう・・・(←いいなり・・・だけどちょっと嬉しい)

こうして今日も平和に戦士の日常は過ぎていくのでした。



<第四章・完>



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