ビンボー戦隊アキナマン

市ノ瀬蝶子さん・作

▼ メンバー ▼
アキナレッド・池谷
アキナグリーン・健二
アキナブルー(仮)・拓海
アキナイエロー(仮)・イツキ
アキナピンク・なつき




<第一章 拓海争奪ドラフト会議>


「オレがですかァ。池谷先輩の戦隊にィ・・・?」
戦隊ドラフト会議で池谷の戦隊に1位で指名された拓海は、いつもの通りぼーっと
した表情で言った。

「なー頼むよ。是非はいってくれ」
池谷は手を合わせて頼み込んだ。ドラフト会議前の記者会見で
「あのハチロクはアキナマンの秘密兵器だ」なんてフカしまくったので、
入ってもらわないと恥をかくのだ。

しかし、その表情は拓海の優しさ(流されやすさとも言う)を当て込んでいるのか、
さほど切迫したものではない。
「おまえの色はブルーにしてやるからさ。な?知ってるか?ブルーって戦隊の中で
一番モテるんだぞ?」
女の子のことしか頭にない健二がスケベな笑いを浮かべる。
「絶対入れよな拓海!お前とセットでオレも入れてもらえることになってるんだからな!」
えらそうに情けないことをイツキがツバを飛ばしながら熱弁する。

そんなイツキをさりげに無視して、
「拓海くん♪なつきと一緒に戦おう♪」
なつきがただでさえ短いスカートの裾をチラリと持ち上げた。
4人の押せ押せムードに流されて、拓海が面倒臭そうに頭を掻く。

「はいるのは別にいいんだけど・・・」
拓海のセリフに4人は「おおっ」と喜色を浮かべたが。
「オレもう涼介さんの戦隊にはいってるから・・・涼介さんがなんて言うか・・・」

「なにいいいいいいいいっ!」
サラリと言ってのける拓海に、4人は一気に天国から地獄へと突き落とされた。
「ヒドイッ!拓海くん!純情そうなカオして、お手付きだったんだっー!チッキショー!
こんな戦隊やめてやるー!」
「あっ、なつきちゃんっ!」
滝のような涙を流し、「拓海くんのホモー!」と叫びながら、池谷の制止も聞かずに
なつきはダッシュでドラフト会場から出て行った。

「てんめー拓海ィ!女の子泣かすな!てゆーかその前に貴重なウチの隊員を減らすな!」

池谷は割と「えっちぃ」なつきが気に入っていたので、拓海の胸倉をつかんで
ユサユサと揺さぶった。拓海はなすがままになっていたが、突然、
「あ・・・」
と、恋する乙女のような声を漏らしてかあっと赤くなった。
視界には、すでに池谷はいない。

「涼介さん・・・」
拓海が吐息のようにその名前をつぶやく。拓海の視線を追って見ると、
会場の入り口に、これから舞踏会にでも行くような格好で、
涼介が腕組みをしてこちらを見ている。

「た、高橋涼介!!なんで、秋名のドラフト会場に高橋涼介がきてんだぁ・・・!?」
涼介は、思わず大声で叫んでしまった池谷のところまでツカツカと無表情で歩み寄ると、
拓海の胸倉をつかんでいるその手をむんずとつかんだ。

「質問は、この汚い手を離してからにするんだな」
「ひ、ひいいいいいっ」
絶対零度のまなざしを向けられて、池谷は拓海からソッコー手を離すと、
どしんとその場に腰を抜かしてしまった。

「おいっ、大丈夫か!?」
健二が駆けつけて池谷を抱き起こす。池谷はさぞ恐ろしいものを見たのだろう。
涙目でカタカタと震えている。失禁しなかったのが不思議なくらいだ。

 解放された拓海を涼介はぎゅっと抱きしめた。
「ああ・・・拓海。お前がどこかの安っぽい戦隊に無理矢理
入れられてはいないかと、オレは心配で心配で居ても立ってもいられなかったよ・・・」
「涼介さん・・・」
涼介の極上の微笑みに、拓海はウットリしている。ウットリとなった拓海に、
涼介はオレのものだと主張するがごとく公衆の面前でチュウまでして見せた。

「さあ、拓海。こんなケダモノたちの巣窟にこれ以上いる理由は皆無だ。

オレたちの、愛の巣に帰ろう・・・(はあと)

「はい・・・(はあと)」
涼介に肩を抱かれ、幸せいっぱいの表情で、「じゃ、そういうことだから(はあと)」と
イツキに言うと、拓海は会場を後にした。

「た、たくみ・・・なのか??今のは・・・」
あまりのことに、イツキはボーゼンとしている。
「これだから、寒色系のヤツはキライなんだ・・・」
涼介の地獄耳に届かないように、ぼそりと健二がつぶやいた。


☆ビンボー戦隊アキナマン、第一章にして解散の危機!
どうする池谷!どうなるアキナマン!

それよか涼介の戦隊のほうが気になるぜ!   <第一章・完>




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