愛 情 ゲ ー ム ( 前 編 )






ちりり、と。
背中に軽い痛みが走った。

「ってー…」

「あ、…ごめん。」

「いや、別にいーけど」

動くたびに、髪から汗がぽつりと垂れて。
七原の髪に落ちた。

何故か、綺麗だと思う。七原を。
何処か繊細で、何処か無理してる。絶対。
其れを支えるのは何なのか?(やっぱりロックですかね、奥さん?)

きっと俺にも知らないことをあいつは知っていて。
ロックやったり女に告白されたり告白したり呼吸をしたりして。

その場に唯生きてるんだ。

「…七原」

「ん?」

「七原クン、"ヨッキューフマンな顔"してるわよ?クスッv」

「…何のつもりだよー」

「相馬のマネ」

相馬かよ、あーそうか相馬かよ、光子サンかよ、と七原はグチグチ文句を言い始めた。
まあ、其れは冗談として、と俺が言うと、冗談とは思えねえんだよ三村が言うと、と言い返された。
少しの、一瞬の間のあと。
俺は七原を抱きしめた。
なんか、いいにおいがする。

「…みむら、いーにおいがする。」

俺が思ってたことそのまんまズバリと言われて正直焦った。
落ち着け、と自分自身に言い聞かせてから、

「そ?」

と首を傾けてみせた。

「うん。うまそーなニオイ」

「じゃあ、さ」

俺が言い終わるのと行動、どっちが早かったんだろうか。
七原にキスしたあと
七原はきょとんと此方を見つめていた。

「キスして味確かめよっか、シューヤちゃん?」

小さい、呟きが。
確かに聞き取れた。

「…や、だあ」

「何だよ其れ」

「あのさぁ三村」

「ん」





「泣きたい。三村のこと好きすぎて泣きたい」






…なあにを今更。


俺はこんなにも七原を愛してるのに(好きだなんて気持ちじゃ抑えきれないくらい)。
七原に伝わってないというのはショックで(こいつが鈍感なのかもしれないけど)。
それと同時に、何で今更其れをいうのかとか(俺に伝わってないと思ってんのか?)。

俺はお前がわかんねえよ、七原。

「俺だけに愛してるって言って」

(うつむいて泣きそうな顔)

「他の女と同じような扱いにしないで」

(扱えねえよ、男じゃん、お前)

「女と比べるようなモンでもねえだろ」

(何でもう少し優しい言い方が出来ないんだ)

「みむら、おれどうしていいかわかんねえ」





何でそんな





泣きそうなんだよ、七原。








俺はそれなりに今までの女と違う扱い方をしてきたつもりだった。
優しく壊れ物を抱くように扱ったつもりで
キスのときも何をするときも
俺はそっと優しく抱いてた。



つ も り な の に 。


「俺はな」

「…ん。」

「多分もうまともな恋が出来ない」

「其れってどういうこと。」

「まともに女とデートしたりキスしたり寝たりとかできねえってことだよ。…つまり」

七原の額に軽く自分の額をくっつけて。
笑った。

「七原は今まで付き合ったどの女とも違う。其れなりに区別はつけたつもりだ、オーケイ?
 簡単な推理ですよ、ワトソン君」

七原はまたきょとんとして俺を見つめた。
そしてまた何時ものように






笑える日が来るのだろう。







「…俺、三村のこと好きだよ。」

「何言ってんの七原。俺お前のこと好きじゃねーもん」

「!?(え!?)…何だよー。俺のこと嫌いなのかよ!」

「オイオイオイ。好きじゃないけど嫌いとも言ってねーぞ」

「…?」







「"愛してる"」





















「…クッセー」















愛情ゲーム後編
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ああヤッチマッタ…!
37の小説です。前編というか三村編です。三村変です。(誤変換ではない)
最後の「クッセー」は七原の台詞です。ええ紛らわしいこと!
死んで詫びます。(そうするべき)
我侭だし。なんか悟空化してるし(by最遊記)。
…ネ。(何