イイコンビ
イイカップル・・・



イイフーフ




・・・ばかみたい。

なにが良い夫婦だよ。俺のばーぁか。



******

「ここんとこ、めっきり寒くなったね〜密。」

はく息が窓を曇らせる。
もうすっかり寒くなった11月下旬。
都筑は仕事の手を止め、窓の外を指差しながら密の方に振り返る。

「おい、都筑!窓に落書きすんじゃねえよ!?跡残るだろ!?」

手をくりくりと動かして、窓に文字らしきものを書いていた都筑に密は注意した。

「えへへへ〜vvほら!何書いたと思う?」

「・・・なんだよ・・・?」

「へへvv」

「ひ・そ・かvv」

「//////////////!!!!????」

一気に真っ赤になってしまった。

・・・・・・くすくす。

「な、何笑ってるんですか?!」

はたから見ている方が照れてしまうようなこの二人のやり取りに、
周囲の者達が笑い出す。
それを止めようとしている密を見て、
さらに笑いがこみ上げてしまう事にも気づかずに、
密は必死に抗議している。

本当に、密は誰が見ても可愛かった。

「あ〜!?密は俺のものなんだから!?
皆、俺に無断で勝手に密で遊ばないでよ〜〜!!」

いきなり後ろから抱きしめられた。
スッポリと腕の中に収まってしまう。

「まあ都筑さん!?一人占めはいけませんわ!!
私達だって密さんの事愛してますのに!!」

「そーよそーよ!!都筑ちゃん!!密くんは皆のものよ〜!」

「違うよ!!密は俺だけのもんだもんー!!」

まただ・・・。と、この三人を除く全ての者は思った。
密を巡ってのこの都筑とゆまさやコンビの三人の低レベルな戦いは、
今では召喚課の名物となってしまっている。

「お〜ま〜え〜ら〜!!!???いい加減にしろよ〜!?」

ふつふつと怒りが込み上げてくる密を背に、
いまだにこの三人は低レベルな言い争いをしている。

「お!!・・・・?」

大声をあげようとした密がとたんに口をつぐむ。
ドアの方を見やると、そこには可愛らしい少女が立っていた。

「ひーちゃん、お仕事終わったの?」

その少女は愛らしい瞳を密の方に向けて近づいてきた。
今までの雰囲気とはうって変わって、密はその少女に微笑みかけた。

「ああ、終わったよ、”上総”。」

ひょいっと少女を抱き上げた密はくすくすと笑っていた。

その少女の名前は”上総”

以前、都筑と密が担当していた事件の被害者となってしまった少女だった。
しかし、その特殊な能力を買われ、死後、近衛課長の第二秘書としてこの
召喚課で働くことになったのだった。

「今日も俺のところに泊りに来るか?上総。」

抱きかかえたまま、密は上総にそう尋ねた。
事件がおさまった後、幼い上総を一人で生活させるのは不可能だった為、
召喚課の女性職員と一緒に暮らす事になったのだが、
週末や翌日が休みの祝日などは、召喚課のお兄さん、お姉さんのところへ
お泊りに行くのが習慣になっていたのだった。
そして、その大半を占めるのが、なぜか密の家だったりもして・・。

「明日は23日だろ?国民の休日、”勤労感謝の日”だから。
いくらなんでも、この日くらいは召喚課も休みだからさ。」

密はそんな言葉をちらりと都筑の方を向いて言った。

・・・・う”ど、どうせ俺には縁のない日ですよ〜・・・

都筑は暗く肩を落とした。
この前、書庫室を爆破してしまった為、当分休みは望めるはずもなく、
明日も休日出勤をすることになっているのだ。



「ねえ、ひーちゃん。上総ね、今日は亘理お兄ちゃんのところにお泊りする!」

「えっ?亘理さんとこ・・・?」

上総の思いがけない発言に、密が少しとまどった。

「俺んとこか??」

上総に指さされた亘理は急な上総の申し出に驚き、自分で自分を指差しながら尋ね た。

「うん!!亘理お兄ちゃんの所がいい!!」

そう言うと、上総はするりとひそかの腕から抜け出し、パタパタと亘理の足元へと駆 け寄った。

「・・・上総・・・?」

亘理の足にピトっとくっついている上総。

「なあ、ほんまに俺んとこでええんか?うちのラボ、汚いで??」

困った様な顔をした亘理と上総の目が合う。
その瞬間、上総は亘理にウィンクをし、何かの合図をした。
すると、亘理は何かに気づいた様に笑い出し、上総を軽々と抱き上げた。

「ハハハ!!わかったで〜!!ほな、早いとこ、うち行こか?上総v
そや!巽、お前も一緒にどや!?な、上総vv今日は俺と巽の二人で遊んだるさか い〜!!
夜更かしもOKやで。なんたって、明日は休みなんやし〜!!」

「え?私も亘理さんの家に行くんですか?!」

「そやそや!せっかく今日は”11月22日”なんや!家族団欒(?)せなあかん で〜!」

陽気な声で亘理が言う。

「ほな、俺らは帰るで〜!お先〜〜!」

なかば強引に巽を連れだし、亘理と上総は召喚課を後にした。
残されたものたちは、このドタバタにあっけにとられていたが、時間がたつにつれて
皆、帰宅してしまい、未だに残っているのは、
デスクの上に山のように詰まれた始末書を片付けている都筑と、
例によって例の如く、それを手伝っている密の二人だけになってしまった。

「あ〜、終わらないよ〜ιι」

「自業自得だろ、そんなの。ほら!へばってないでさっさと片付けろよ!」

「・・うん。でもさ!密が手伝ってくれたおかげで随分減ったよ〜!!
後はさ、俺明日来てやるから、密、帰らない・・・?」

「・・・。明日、ちゃんとやれよ・・・?」

うん!やるやる!!」

都筑の言ったとおり、始末書は密の協力により、大方片付いている。
トントン、と書類を整えて、都筑のものの上に重ねて置いた。

「ね〜密!!今日密の家に行ってもい〜い?」

「は?」

書類を課長の机の上に置きに行った都筑が、振り返り様に聞いた。

「だめ・・・かなあ?」

いつもならここで軽くあしらわれ、”NO”の返事をもらう所だが、 今日はいつもと違った。

「・・・別に・・・いいけど・・。」

「えっ!?」

都筑の予想外の喜びにハッとして、密は慌てて訂正した。

「ば、ばか!!深い意味なんかないからな!?ただ、上総が今日泊りに来ると思って、
二人分の材料買ってきちまったから!!それだけだ!!」

真っ赤になって俯いてしまう密。

「えへへ〜〜vv」

一方の都筑はというと、これ以上ないくらいにやけきっている。

「じゃ、帰ろっか・・・?」

「・・・うん。」

コートを着込んで二人して召喚課を後にする。
外はやはり身を切るような寒さになっていた。
”これじゃ先が思いやられるね〜”
と、都筑が肩をすくめる様な格好で言うと、密は小さくうなづいた。
二人並んで家路についた。
途中、都筑が
”寒そうだから”
とコートの仲に密を入れようとしたが、あっけなく”ばか”の一言で玉砕してしまっ た。
しかし、”このくらいはさせてよ”と言う都筑のねばりに負けて、
密はしかたなく都筑と手をつないだ。
”密の手、冷たい”
そう言って都筑は自分のコートのポケットに密と指をからめたまま差し込んだ。
密がなにか言ってたけど、知らないふりをした。
だって、これだけは密がなにいってもやめる気はなかったし・・・。





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