「ねえ、密ぁ。何か手伝う事ある〜?」

「ない!!お前はそこでじっとしてろ!!」

ちぇ〜っとぼやきながら、都筑はリビングでTVを見る事にした。
密はというと、先程からキッチンで夕食の準備をしている。
何やら今日のメニューはビーフシチューらしい。
TVから目をはなし、キッチンを見る。
青色のエプロンを着ている密の後姿を見ると、今すぐにでも抱きしめたくなってしまう
衝動にかられるけど、料理中ということもあって我慢した。

「よし!できた!!」

そういうと、密は皿にもったビーフシチューを都筑のいるリビングに運んだ。

「どーぞ・・・。」

都筑の前にはよく煮込んだおいしそうな匂いのするビーフシチューが置かれた。

「密・・・前から思ってたけど・・・料理上手たねvv」

にこにこしながら密にありがとうを何回も言う。

「そんくらい、誰だって作れるよ!ほら、いいから食べるぞ!」

少々照れた密がそそくさといただきますのポーズをする。
つられて都筑もいただきます。

「・・・おいし〜vvv」

「うん。まあまあかな・・・。」

「え〜〜!??まあまあじゃないよ!?すっごくおいしいよ!!密vv」

食事が始まってからそんな会話の繰り返し。
都筑はすでに2杯目のビーフシチューを食べている。
よほどおいしかったのだろう。食べるスピードが1杯目と変わっていない。

「ねえ、密・・・。
それよりさ、今日何の日か知ってる・・・・?」

「え?何の日だったっけ??」

「密、知らないの〜〜??」

ムッ!
今のはちょっとむかついたぞ!?

「なんだよ!?言えよ!?」

「え〜〜〜〜?!ホントにホントに知らないの!?」

「だーかーらー!!何の日だよ?!」

密が都筑に詰め寄った。
都筑はというと、口にくわえていたスプーンをようやく離し、密に向けてにっこりと 笑いかけた。

「へへへvvv今日はね・・・」

「・・・・・??」



「良い夫婦の日なんだよ?密vv」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜????!!!///////////」

何を言っているんだ?この男は!?

「だからね、今日は密と二人っきりで過ごしたいなって思ってたんだ。」

体中の体温が一気に上がってしまった。
都筑が何を言っているのかよく、理解できない。

「でも、密この頃上総と一緒に過ごす事多いから。今日もダメかな〜?って思ってた んだけど。
上総は今日亘理のとこ行くって言ったから。」

何も言えないでいる密を前に、都筑は進めた。

「だから、今日は上総が俺にくれたチャンスだと思って・・・」


「俺、密に渡したいものがあるんだ。」

そう言うと、都筑は自分のポケットに手を入れ、何かを取り出した。

取り出したそれは、小さな箱だった。

「開けてみてよ密。」

手渡されたそれをおそるそる開けてみた。

カパ。

蓋をあけるとそこには可愛らしい花のついた指輪があった。

「・・・・・」

「今日、11月22日に渡したかったんだ。」

「密、俺と結婚してほしいんだ・・・」

「・・・・・」




短い沈黙だった。

しかし、都筑にはその時間は永遠とも言えるほどの長い時間だった。

「密・・・?」

そして、ようやく気づいた。
密が、泣いていることに。

「ど、どうしたの!?密!!?あ、そんなに嫌だったの!?」

慌てて都筑が密の頬を拭う。
しかし、その手は密のちいさな手で動きを止められた。

「密・・・」

「俺・・・。こんなの・・・こんな風にしてもらったことなんかなかった・・から・ ・・。」

「なんて言っていいのかわかんない・・・。」

「密・・・。」

「なんて言えば・・いいのか・・・」

「密・・・・。ねえ、密。」

「密は俺のこと・・・すき?」

「え?」

「俺は密のこと大好き!!世界中の誰よりも、密の事愛してる。
だから。結婚もしたい。
密は・・・?俺のことすき?指輪、もらって嬉しかった??」

視線が絡み合う。

「う、れしかった・・・。すごく。」

「じゃ、これは悲しくって泣いてるんじゃなくって、嬉しくって泣いてるってこと ?」

「たぶん・・。」

「じゃあ、それじゃ、指輪もらって嬉しかった??」

「う・・ん・・。たぶん・・。」

「じゃさ、密は・・・・。この指輪を・・。」

「誰にはめて欲しい?」

都筑が密の顔を覗きこむ。

「誰に?」




「・・・・・都筑・・・・・・」




キスが、優しくふってくる。
それはまるで永遠の誓いの口付けのよう・・・。




「密、これからも、ずっとずっと、俺の隣にいてよ」

「うん。」

伸びてきた指先と指先が絡み合う。

その薬指には、花のついた可愛らしい指輪がはめられていた。






*************

「ああ、なるほど!そういう事でしたか!」

「そうなんや、俺も上総に言われるまで気づかへんかった!
それにしても、ようわかったな上総!?」

亘理のラボに来た三人は、ワイン、ビール、ジュースを片手に話しこんでいる。

「だってv上総のパパとママがいつも11月の22日は二人っきりでおでかけしてた んだもんvv」

上総はくいっとジュースをひとのみしてから嬉しそうに言った。

「どうして二人だけでお出かけしたの?って聞いたら、パパがね、
”世界中で一番愛してる人と、結婚できて、今まで一緒にいられてありがとうござい ますって
神様に感謝する為にママと二人でお出かけしたんだ。
そしてこれからもずっとずっと一緒にいられますようにって。
ママと一緒にお祈りし てきたんだよ?”って。」

「ほ〜!上総のパパとママは仲良しやったんやな!?」

「でね、上総はなんなの?って聞いたら、パパはね、”世界中で一番大切なもの”
だって言ってくれたの!!
だからね、今日は良い夫婦の日だから、絶対に都筑お兄ちゃんとひーちゃんを二人っ きりに
してあげなきゃって思ったの!あの二人もすごく大切に思いあってるから。
上総のパパとママみたいに幸せになってほしいなって思って!!」

「そやな〜、そうでもせな、あいつらのことやさかい、
なかなか先には進みそうもないからな〜。」

「まったく、手のかかる人達ですねえ。上総さんにまで気をつかわせるなんて・・」

「でも、これで都筑お兄ちゃんとひーちゃんはこれからもずっとず〜っと一緒にいら れるね!!」

三人とも笑っていた。
心から・・・



愛する人と、いつまでも幸せに・・・と。








back