ひみつ

Written by あんじ、かづら、琴姫、つばさぶ、みかん、SHIMA


 今日は日の曜日(晴れ)
 女王候補アンジェリークは、暖かな陽気に誘われるまま庭園に足を運んだ。
『ん〜、、もうすっかり春らしくなってきたのね。ふふふ』
 ふと足元に目線を落とすと、花のつぼみが開きかけていた。
『まぁ、可愛いお花♪』
 アンジェリークはその場にしゃがみ込んで花のつぼみを眺めながら ほんわりと微笑んでいた。

。。。。。。。
 ゼフェルはその頃私邸から庭園に向かっていた。
「遅くなっちまった!アンジェのヤツ待ちくたびれてっだろーな〜」
 毎週日の曜日はアンジェリークとデートの日だ。それはどちらからともなく決められていた。
 バタバタと走っていたゼフェルは庭園の入り口に少女が座り込んでいるのが目に留まった。
 愛しいアンジェリークが花に見惚れている。そんなアンジェリークはさながら花の妖精・・・。
「アンジェ・・・」
 ゼフェルは声をかけようとした。しかし・・・。

。。。。。。。
 ゼフェルは嬉々としてアンジェリークに声を掛けようとしたが、それより先にアンジェリークに声をかけた者がいた。
「よぉお嬢ちゃん。一人か?」
「オスカー様こんにちは」
 にこっと微笑んで挨拶を返すアンジェリーク。ゼフェルはむっとして二人の間に入った。

。。。。。。。
「なんだよ、おっさん!アンジェに何か用かよ!?」
 ゼフェルは、それはそれは憎らしげにオスカーを睨みながらアンジェを自分の後ろに隠している。
 そんな様を見ながら、オスカーは少し悪戯っぽい笑みをこぼしながら言うのだった。

。。。。。。
「ゼフェル、お前はお嬢ちゃんの「秘密」を知ってるか?」
「?」
 オスカーの思いもよらない言葉にゼフェルは首を傾げる。
「....おっ...オスカー様っ、言っちゃダメです〜っ!」
 アンジェリークはオスカーの言葉を聞いて何か思い出したのか顔を真っ赤にする。
 オスカーは、しめしめと言わんばかりの笑顔でアンジェリークに囁きかけた。
「お嬢ちゃん、ゼフェルに秘密を知られたくないんなら今日は俺とデートしてくれないか....?」
「........はい」
 アンジェリークは泣きそうになりながら静かに頷く。
 ....ゼフェルは...当然烈火のごとく怒り出した。

。。。。。。。
「な・・・アンジェの秘密って何だよ!?」
 ゼフェルはアンジェリークに向かって噛み付くようにたずねたがアンジェリークはふるふると首を振るばかり。ゼフェルと視線を合わせない様に俯いてしまった。
「ふっ・・・お前とは話をしたくないそうだ」
 オスカーは勝ち誇ったように笑うとゼフェルに見せ付けるようにアンジェリークの肩を抱いた。

。。。。。。。
「さぁ、行こうかお嬢ちゃん。」
 ゼフェルの怒りと困惑の眼差しを背に、2人は森の湖へと向かった。
 自分の気持ちを無視して事が進むのだから、当然面白くない。
 秘密・・・??
 俺の知らないアンジェリークなんて存在する筈がない。
 存在させたくない。
 2人の行動は、ゼフェルの独占欲に火をつけた。

。。。。。。。
 こっそり二人の後をつけたゼフェルは森の湖を気づかれないように覗いた。
 アンジェリークとオスカーはゼフェルに背を向けたカッコウ・・・湖に向かって立っている。
 アンジェリークは俯いてるのか栗色の髪が下へ流れている。オスカーはアンジェリークに話し掛けているが声までは聞こえない。
「聞こえねぇな」
 ゼフェルは話を聞こうと一歩足を踏み出した。
 パキパキパキ・・・。
「げっ」
 小枝を思いっきり踏んでしまいゼフェルは蒼くなった。

。。。。。。。
 慌てて逃げようとしたが遅かった。
 音に気付きオスカーとアンジェリークが振り向く。
「ゼフェル様!?どうしてここに!?」
 驚きのあまり叫ぶように問い掛けるアンジェリークの目が少し赤いのを見てゼフェルの怒りがピークに達した。
「オスカー!!テメーアンジェに何したんだよ!!」
 言うが早いか、ゼフェルはオスカーに飛び掛っていった。

。。。。。。。
 ゼフェルはいのししごとくオスカーに突っ込んでいった。しかし、ひらり、とオスカーに交わされてしまった。
 ドッボーン!!!
 ゼフェルは水飛沫を上げながら湖に沈んだ。
「ゼフェル様!」
 アンジェリークが半泣きになりながら湖に向かって叫んだ。すぐにゼフェルが顔を出しほっとする。
「げほっげほっ」
「情けないな」
 オスカーが笑いながら言う。ゼフェルはきっと睨むとアンジェリークに向いた。
「おめーの秘密って何だよ!」
「言えないから秘密じゃないのか?」
「オスカーに聞いてねぇよ!アンジェ!答えろよ!」
「え・・・」

。。。。。。。
「ゼフェルさま、ごめんなさいっ!。」
 一瞬、泣きそうな顔。
 振り絞るようにそれだけ言うと、アンジェリークは駆け出した。
「おい、アンジェリーク!?」
 ゼフェルの声は、森の湖に響き渡る。
 むなしく、響き渡る。
「ったく、どうしろってんだよ……。」
「まだまだ青いな、ゼフェル。」
 逃げ出したアンジェの瞳からは、涙が光っていた。
 それを知るゼフェルは、オスカーの言葉に反論できない。
「……あのよ、アンジェの秘密って、一体なんなんだよ。」
「ふっ、それは、な……。」
「オスカー様、だめぇ!!!」
「お、お嬢ちゃん!?」
 現れたのは、さっき立ち去ったはずのアンジェリーク。
 半泣きで、その場に座り込む。
「ゼフェル様が、風邪をひかないか心配で…。」
 そんなアンジェを見て、ゼフェルは「くしゅん」とひとつくしゃみをした。

。。。。。。。
 アンジェリークはゼフェルが湖からあがるとポケットからハンカチを出した。
「ゼフェル様、これで拭いてください。風邪引いてしまいます」
 ゼフェルは黙って受け取るとグシャグシャと自分の頭を拭いた。ムスッとしたままのゼフェルにアンジェリークは泣きそうな顔になって俯いた。
「わ、私の秘密は・・・今は言えませんけど・・・いつか絶対言います」
「どうしてオスカーにはすぐに言えてオレには今言えねぇんだよ?」
 ゼフェルは目を吊り上げて問い詰めるとアンジェリークの瞳にじわりと涙が滲んだ。それを見て一瞬ひるむがゼフェルはさらに問い詰める。
「オレよりオスカーの方が好きなんだな!」
「そ・・・んな・・・」
「ゼフェル、お嬢ちゃんは俺に話したわけじゃないさ。俺のお嬢ちゃんを想う気持ちがお嬢ちゃんの秘密に気付いたってわけだな」
 オスカーがゼフェルからかばうようにアンジェリークの前に立った。ゼフェルはキッと睨むと口を開いた。
「オ、オレだって・・・オレだってアンジェのこと・・・!」