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こもあ生物学

日記帳28

性と生殖周期

発生生物学 第6回

2004年11月1日 (月) 性と生殖 2

   脳における性分化

  出生後に去勢したラットに卵巣を移植した実験での卵巣の変化
   去勢日    移植回収卵巣数 移植20日後(60日齢)
                   排卵あり 卵胞だけ
1(出生当日) 12 8(66%) 4
2 9 7(78%) 2
3 15 10(67%) 5
4 11 2(18%) 9
5 16 0 16
8 7 0 7
21 14 0 14
[上記の表はうまく編集できないので、講義のときに配布する]

 1)雄マウスを早期に去勢すると、アンドリジェンが脳に作用せず、周期性をもった脳になる。黄体も卵胞ももった卵巣が回収される。上記の表の排卵ありのものは、その卵巣である
 2)雄性脳では排卵がないので卵胞だけである。雌性脳では周期性があって排卵があるので、黄体があって排卵があったことが分かる卵巣が回収された
 3)黄体相が欠ける動物だというのに、どうして黄体ができるのかについては、説明がない
 4)私の想像では、排卵点を確認したものと思う

 原始生殖細胞(始原生殖細胞)の由来
 1)カエルの場合、植物極の表層に生殖質と呼ばれる細胞質があり、これを受けついだ細胞が原始生殖細胞となる
 2)受精によって無限に生き続ける性細胞は、発生段階のどこかの段階で体細胞とは区別されるはずである
 3)それを示したものが図4.1である(新家畜繁殖学21ページの図4.1のこと。以下同様)
 4)哺乳類では生殖質の存在は明らかでない
 5)すべての性細胞は、原始生殖細胞に由来する生殖細胞系列によって作られ、いったん体細胞に分化した細胞からの性細胞の新生はないと考えられている。この考えを幹細胞説という。図4.1の幹細胞説とは違うようだ
 6)原始生殖細胞はPAS陽性である

2004年10月30日 (土) 性と生殖 1

 生殖機能は周期現象として現れる
 1)生殖とは動物種の各個体の子・孫(系統)が次世代からまた次世代へと連続して継代されていくことである
 2)[われわれの扱う動物は]生殖活動は人の管理下に行われる
 3)人の管理下での生殖を繁殖(breeding)という。[われわれは]家畜繁殖学を扱う。人医の分野では生殖学という
 4)生殖を機能面から見れば、生殖器官すなわち生殖腺(性腺)と副生殖器(副性器)の機能の現れである
 5)さらに生殖器官を支配する「しくみ」があり、この生殖器官を支配する「しくみ」を含めて生殖機能系と呼ぶ
 6)生殖機能系は、生殖器官を支配する「しくみ」の影響によって、主として雌性側で周期現象として現れる
 7)周期現象はいくつかに分類できる

 生殖活動の周期
 1)生殖活動の周期は次の四つに分けられる
  1.ライフサイクル、2.完全生殖性周期、3.不完全生殖性周期、4.季節繁殖周期
 2)ライフサイクル
  個体は、前性成熟期、性成熟、生殖停止という一生にわたる変化を示す。この一生にわたる変化を生殖におけるライフサイクルという
 3)完全生殖周期
  哺乳類の雌に妊娠が成立したときに見られる生殖活動の周期をいう。卵胞発育、発情、交尾、排卵、分娩、泌乳の各相がくりかえされる
 4)不完全生殖周期
  妊娠の成立しない場合に見られる生殖周期で、完全生殖周期の後半が欠けたかたちで周期が回帰する。性周期ともいう。これは後述するようにさらにいくつかに分けられる
 5)季節繁殖周期
  中高緯度地帯に住む動物で、特定の季節に繁殖活動が見られる動物の示す周期のことである。ウマ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ハムスターなどに見られる

 不完全生殖周期
 1)交尾がない場合
  1.完全性周期
   ウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、イヌ、キツネ、アザラシ、オットセイ、サル、ヒトなどに見られる。完全性周期から妊娠、泌乳の相が欠けた周期をくりかえす。卵胞の発育に2〜12日、黄体期が12〜16日あり、周期は12〜28日となる。イヌ、キツネは黄体期が60日ある
  2.不完全性周期
   ラット、マウス、ハムスターなどに見られる。黄体期も欠ける。性周期は4日
  3.交尾排卵動物(卵胞性性周期)
   ネコ、ウサギ、フェレット、ラクダなどに見られる。排卵も欠ける
 2)不妊交尾刺激を受けた場合
  1.の動物には変化がない
  2.の動物は黄体相が出現する
  3.の動物には、排卵と黄体相が導入される。2.と3.の動物に導入された黄体相のことを偽妊娠という
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 性決定遺伝子
 1)1970年代になって、雄を決定づける遺伝子がY染色体の特定の場所に存在することが明らかになった
 2)1985年ころから遺伝子工学を駆使した研究が行われるようになった
 3)1990年、イギリスのP. N. グッドフェリー博士のグループがSRY(Sex Determing Region on Y Chromosome)の遺伝子をつきとめ、そのDNA塩基配列を決定した
 4)マウスやヒトのSRY遺伝子をもったトランスジェニックマウスが作られた  5)染色体の核型がXXであるのに精巣をもったマウスがいた。SRYが雄を決定する遺伝子であることが証明された
 6)しかしこのトランスジェニックマウスの精巣では精子がつくられていなかった
 7)SRYは胚が雄に分化し精巣をつくるのに必須であることは分かった
 8)精子をつくり真の雄になるには別の遺伝子が必要らしい