【風船にかける情熱】

風船が好きである。
この間街角で風船をもらった。

風船好きな私は、わくわくしながら(←いくつだよ!?)家に帰って風船を取り出すと、風船に空気を入れ始めた。

実を言うと、私は風船に空気を入れると言うのがすごく下手だ。
マラソンがそう遅くはないことを考えると、肺活量が無いわけではない。
それなのに風船に空気を入れようとしてもなかなか入らないのだ。

リコーダーを吹くときにいつも誰も真似できないような「ぷ〜」とか「ブヒ〜」とか変な音を出していたことを考えると、空気の出し方がおかしいのかもしれない(←どんな人だよ!)

そういえば音楽の時間に、目の前に立っている人が持つティッシュに息を吹きかけるという息の出し方の訓練をやったとき、
「(ティッシュからだいぶ離れた)私の顔に生暖かい息がすごい勢いでかかってくるんだけど・・」
といわれたものだ。

とりあえず、息を一点集中させるのが下手だ。

風船をびよんびよんと伸ばして、一回目空気を入れる・・
が、入らない。
二回目、さっきより少しは伸びた風船に空気を入れる・・
が、もちろん入らない。
いつもしなびたなすびくらいの大きさにはなるのだが、それ以上の大きさにぷわっと膨らんでくれない。
悔しい気分で何度も空気を入れる。
・・・・・(省略)・・・・

七回目空気を入れる。
頭がくらくらして胸が苦しい。そういえばさっきペデイキュアを塗ったせいで部屋がシンナー臭い。
シンナー臭い部屋を密室にして、酸欠の女が一人。
——捕まるぞ?

八回目で全精力を振り絞ると、ようやく風船がぷわっと膨らんでくれた!
狂喜乱舞!
しかし、本当に大変なのはここからである。

この風船を口しばるという行為が何よりも難しい。
風船を大きくしすぎると、縛る部分が少なくなるので、空気を適度に抜く。
しかし抜きすぎるとしなびた桃になってしまうので風船特有の軽やかさがでない。がんばってメロン程度の大きさは確保したいものだ。
その空気の均衡が、いやはやなんとも難しいのだ(←空気入れ職人?)

空気の入り具合を決めたら、口をくるくるとねじりあげ、縛ると言う行為に入る。
伸ばして縛ろうとするが、おそるべしゴムの固まり風船!
その弾性で、縛ろうと引っ張り挙げた口はすぐに元に戻ろうと私の手を煩わせる。縛られるんだ!おとなしく!びよ〜ん・・ぐにぐに・・クルン。
引っ張る私、戻ろうとする口。
私と風船の口は、父と家出娘のような関係で相反しあい、憎しみと愛情で結ばれる(←あんたアヤシイよ・・!)

そうして、そうして!ようやく縛り上げて、風船が私の目の前に現れてくれるのだ!
苦労をかけて手塩にかけた風船ほどかわいいものは・・あんまりない(←あんまりかいっ)

私はその後、部屋の中で一時間ほど風船で遊んでいた(←暇なのか?)。

風船で遊ぶと言うのは飽きない。
というか、私はみんながくだらないと思うことを飽きもせずいくらでもやっていることが出来る。
例えば風船一つ私に与えたこの場合、私は一人で風船を如何に落とさず上にぽぉんと上げ続けていられるか、ということを延々とやっていた。もっともポピュラーな遊び方だけどこれが一番楽しい。

風船の軽さが手に優しいところがいい。この世にこんな軽いものがあるんだぜぇ〜と、嬉しい気持ちになる。
風船が今にも落ちそうになるというスリルが楽しい。
風船が地面に落ちそうになると、私はベッドから転がり落ちてしたたか頭を打ちつけてそれでもその足の先に風船が当たるように蹴り上げて、風船の生命を守りつづける。
椅子の上に風船が不時着しそうで、間に合わなさそうなときはその椅子を蹴っ飛ばして風船を守る。
椅子は倒れてその椅子に私の足が挟まっても、なお私はキラキラ輝く目で「いたいよ〜・・アハハ・・アハハ・・」と言いながら風船を追い続ける(←アホだ!こいつはアホだ!)

頭に瘤が出来ることより、足に痣が出来ることより、風船のほうが大事だ!(←何が私をそうさせるだろう・・?)

そんな風船好きの私の話でした。

2001、6、10