月光浴



「ふぁ〜疲れた。もう手を動かす気力もない…」

ユーリは羽ペンを持ったまま机に突っ伏した。

「お疲れ様です、陛下」
「陛下って言うなよ。名付け親!!」
「すいません。ユーリ。癖が抜けきれないんです」
「早く抜けきって普通に話そうぜぇい」
「そうは言っても…俺とユーリは『主』と『臣下』だから」
「え〜」

ユーリはふと窓の外に目を向けた。
外は満月だった。

「綺麗だなぁ…」
「そうですね」

コンラッドは外の満月をユーリにつられて外を見、急にポンと手を打った。

「ユーリ、外に休憩しにいきませんか?」
「へ?」
「月光浴しましょう」



「うわぁ!満天の星空だよ!!」
「月の光を浴びてリラックスしてください」
「サンシャイン!!みたいな?」

ユーリは精一杯両手を月に向かって伸ばす。

「それは日光でしょ。こっちは月光だから…ムーンシャインかな」
「コンラッド…それ『月明かり』だよ」

ユーリはふとその場に座り込んだ。

「ユーリ、お尻が土で汚れますよ」
「いいよ。そのぐらい。払えば落ちるから。にしても…月って綺麗だな」
「ええ」
「なんつーかこう…引き寄せられるっていうか。月にも魔力があるのかな?」
「さぁ、そこまでは考えたことないですが。もし月に魔力があるならそこから元気を貰ってください」
「どうやって??」
「こうして月光浴をしながらですよ」

コンラッドもユーリの横に座り込んだ。

「あ、もしかしたらさ。コンラッドも月光浴したら魔力を持てるかもよ?」
「う〜ん。別に俺はこのままでいいんですが…」
「え〜持ってみたいって思ったことないのかよ?」
「生まれたときからないですからね。それに魔力なんかがなくても十分陛下を守れますから。ご安心を」
「べ、べつにそこは心配してないよ!」

ユーリはチラッとコンラッドの顔を見た。


——あの唇に触れたい。


そんなことが頭の中に急に浮かんだ。

(わっ!今何考えてたんだ俺?!)

ユーリは顔を夜目にもわかるぐらい赤くなった。

「陛下?」

コンラッドがユーリの顔を覗き込んだ。そして手をユーリの額に当てる。

「大丈夫ですか?熱は…ないみたいですね」
「ない!ない!あるわけないじゃん」

ユーリは慌ててコンラッドから少し距離を取る。

「なんで離れるんですか?」
「え?いや〜ちょっと暑いなぁと」
「酷いなぁ。そうだ。今、ユーリが考えてたこと当ててあげましょうか」
「へ?!」

また距離を縮められ、逃げられないように後ろに回りこまれる。

「ちょ、ちょと」

後ろからコンラッドの指がユーリの唇をなぞる。

「俺の唇に触れたいと思ったでしょう」
「え、えっと……あ、うん」
「え、当たりなんですか?」
「げ!まさか適当に言ったのかよ!?」
「ええ、まさか一発で当たるなんて思いもしなかったですが…」
「…他にどんなこと考えてたんだよ」
「他ですか?んー秘密です」
「はぁ、そう」

コンラッドの指は用が済んだはずなのにまだユーリの唇に留まっている。
ユーリが何か話そうと口を開けるようするとコンラッドの長い指が口腔に入ってしまう。

「コン…んっん…」

指で口腔を探られる。
そしてそのまま引き寄せられ、長い指は離れていったが今度はコンラッドの唇が重なる。
二、三度啄んでから深く口付けられる。
しばらくして名残を惜しむようにコンラッドの唇が離れていく。

「ごちそう様でした」
「…人を食い物のように言うなよ」
「俺も月の魔力に魅せられたようですね」
「ええ?」
「月を眺めていたら貴方を押し倒したくなりました」

コンラッドはにっこり微笑む。ユーリは開いた口が塞がらない。

「貴方から先に求めてもらって良かった。俺からでは歯止めが利きませんから」
「あのな…そんなこと怖いことをサラリと言うな」
「なぜです?今の俺は飢えた獅子ですから」
「それを言うなら狼だろっ。ったく、よくもそんな恥ずかしいこと平気で言えるよなー。どこかで練習してたりして」
「嫉妬ですか?」
「ええ!…いや…ちが…」
「ユーリ」

コンラッドは立ち上がり、手を貸してユーリを立たせる。

「嫉妬はたくさんして下さい。そうすれば俺は貴方に愛されているのだと実感できますから」
「はぁ?な、なにいってるんだよ。月のせいで可笑しくなったのか?」
「そうかもしれませんね。月光浴は俺には毒かもしれません」

——貴方と月は俺にとっては甘美なる毒。


終わり


あとがき
テストもまだ終わってないって時に書いちゃいました;;ドイツ語やばーい;;
月光浴というより毒って内容に;;ま、いっか(コラ)


2006/7/18 蒼月輝人

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