≪バタン≫

会議室のドアが開いた。

すでに、”次期エースの話し合い”は終わっており、それぞれのピチモは、仲良しどうしで固まって、わいわい雑談していた最中。

そんな話し声が止み、一瞬の静寂が訪れた。

みんなの視線が集まる中、ドアを開けて入ってきたのは、もちろん友美である。





友美の姿を見て、朱莉が声をかける。

山田 「あっ、ゆうみん。どこ行ってたん?」

優花も、これに続けて。

宮本 「突然出てっちゃったから、心配してたんだよ」

しかしこれに、友美は直接答えずに。

志田 「えっと、みなさん。ちょっとそのまま動かないでいてくれますか?」

やや緊張をはらんだ声に、一同、ただならぬ様子を感じ取る。

やがて、ナナが、ぽかんと口を開けた。

それは、友美が手にしている物が、どう見ても猟銃にしか見えないからだ。ときどきニュースで聞く、野生のクマが街中に現れたときに猟師の人が使う、あの長い鉄砲である。

しかも両手には、おそらくは手術用であろう、透明なビニールの手袋までしている。





ナナ、つぶやくように。

清野 「ゆ・・・ゆうみん?」

その顔は、これからいったい何が起こるのかといった不安で、くもっている。

対して友美は、後ろ手にドアを閉め、そのまま鍵を掛けると、無言で水平に猟銃を構えた。





江野沢 「ゆうみん、何それ? キャハハ☆」

一方、愛美は、銃を向けられながらも、全く緊張感のない声で尋ねる。

オモチャか、なんかのゲームだと思っているようだ。

志田 「うん、まな。ちょっと待っててね」

そう言うと、友美はまず、ナナに狙いを定める。

この中で、最も運動神経が良いのは、中学時代に高跳びの代表選手であり、将来的にはアクション女優を目指すナナである。

反抗されると、やっかいな者から消していくのが常道なのだ。





自分に銃口が向けられ、固まるナナ。

友美は、なんの躊躇もなく、すぐに引き金を引く。

≪パーン≫

狭い会議室、耳をつんざく轟音がとどろいた。

体中の一面に、あられのような散弾を受けたナナが、血煙を上げて後ろに吹っ飛んだ。

続いて、無言のまま、愛美に向けても発砲する。

友美 「まな、おまたせ」

≪パーン≫

やや狙いが右に偏ったため、170を超える長身の愛美が、体を半回転させつつ、向こう向きに崩れ落ちた。





志田 「さて、次は・・・」

火薬の匂いと、生臭い血の匂いが混ざり合った会議室。

ここで、ようやく悲鳴が上がる。

一同 「キャー」

そこここから叫び声があがり、耳を押さえる者もいれば、しゃがみこむ者もいる。

一様に、なにがおこったか分からず、泣き声と、わめき声とで、その会議室はパニック状態となった。


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