ピチモ物語 第7話

『りえ と ゆうころ の観覧車』





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■りえ

学校をサボって、ひとりぽつんと公園のベンチに座るりえ。

りえ 「はぁ・・・。りえ、いまのままじゃぁ、いけないんかぁ?」

溜め息の後、悲しそうにつぶやく。

そして、昨日の出来事を思い出すのだった。

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放課後の教室。りえが割ってしまった花瓶を、黙々と片付けるゆう。

「りえもお手伝いするんやにぃ〜♪」の申し出にも、ゆう「いいから」。

その後ややあって、ゆうは少々怒ったように、りえに話しかける。

ゆう 「もー。りえったら、どうして普通に出来ないの?」

りえ 「にぃ!?」

ゆう 「突然変なコトと言ったりして、おかしいよ」

りえ 「・・・」

ゆう 「そりゃ、あたしは、りえのことよく知ってるから———」

りえ 「ぅん」

ゆう 「別に変だと思わないけど」

りえ 「・・・」

ゆう 「ほかのピチモたちは、ハッキリ言って、りえのこと変だと思ってるよ」

りえ 「にぃ。。。」

ゆう 「せっかくピチモになったんだから。なんで普通してらんないの?」

りえ 「・・・ご、ごめんやにぃ」

ゆう 「いつまでも、あたしがそばに居ると思わないでよ」

ひろ 「りえキモスw りえギザキモスwwwwwwwwwwwwwwwwwww」






■ゆう

ついに、ゆうはピチモを辞めることを決意した。自分の夢を叶えるために。

しかし、同時にこの決断が、りえを傷つけることになるのも分かっていた。

そのため、なかなか切り出せずにいたゆう。

そして、ようやく今日。ゆうは思い切ってりえに打ち明けた。

ところが、これを聞いたりえの反応は、意外なものだった。

りえは、ゆうが思っていた程、コドモではなかったのだ。

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ゆう 「でも心配しないで。ピチモやめても、あたしたちは変わらないよ」

りえ 「・・・言ってくれればよかったのにぃ」

ゆう 「えっ!?」

りえ 「ピチレモンはヤダって。やっぱりラブベリーに出たいって」

ゆう 「・・・」

りえ 「迷ってるとか悩んでるとか、ゆうころそういうの全然———」

ゆう 「・・・」

りえ 「全然りえに言ってくれないんやにぃ。。。」

ゆう 「・・・」

りえ 「ひとりで考えて、ひとりで決めて。ひとりで・・・全部ひとりで」

ゆう 「それは・・・」

りえ 「りえわぁ、ゆうころの相談相手にもなれないんかぁ?」

ゆう 「・・・」

りえ 「ゆうころ、ひどいやにぃ。あんまりやにぃ。。。」

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こうして、ふたりはケンカしたまま、お別れの日を迎えることになった。





■旅立ちの駅

出発の日。ゆうは、ひとりで電車を待っている。

ピチモとして過ごした日々を懐かしみながら。

そして、間もなく電車が来る。と、その時。

りえ 「ゆーーーーころぉぉぉぉ〜!!!」

ふと、ゆうは自分の名を呼ばれたような気がした。

ゆう 「んっ!?」

すると、もう一度。こんどは、よりハッキリ。

りえ 「ゆーころぉーーーーー」

大声で叫びながら、一心不乱にホームを走ってくる、小柄な女の子。

ゆう 「りえ!」

りえが見送りに来たのだった。

ゆう 「りえ」

りえ 「ゆーころぉ〜」

ゆう 「ど・・どうして」

りえ 「あのね、ゆうころに最後にお願いがあるんやにぃ〜」

ゆう 「いいよ。なぁに」

りえ 「こんど、港の埋立地に大きな観覧車が出来るんやにぃ」

ゆう 「うん」

りえ 「ゆうころが、帰ってきたとき。その・・・りえとぉ。。。りえとぉ、

    いっしょに、乗ってほしんやにぃ♪」

これを聞いたゆうは、にっこり微笑んだ。

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———りえ、予感がするんやにぃ。
 
    もし、・・・もしその観覧車にいっしょ乗れたら・・・・・・

    いっしょ乗って、ゆうころとふたり思いっきり笑ったら・・・・

    と〜っても幸せな気持ちになれるんじゃないか、って




〜おしまい〜



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