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ジーザス・クライスト=スーパースター&バックステージ・ツアー
6月20日、大阪四季劇場へ劇団四季の「ジーザス・クライスト=スーパースター」を観に行ってきました。これは「オペラ座の怪人」や「キャッツ」を作ったアンドリュー・ロイド=ウェバーの作。やはりロイド=ウェバーの曲が有名だから、kagariも随分前から観たいと思ってたんだけど、なかなか行くことができなかったんです。でやっと今回観ることが出来たんですが、実はこれ、日本には「エルサレム・バージョン」と「ジャポネスク・バージョン」の2種類あるんです。今回kagariが観たのは「エルサレム・バージョン」のみ。この演目はロングランはしないから、だいたい2つ合わせて1カ月くらいしかやってない。だから何年後かにまた大阪でやる機会があれば、今度は「ジャポネスク・バージョン」を観に来なくちゃいけません。
さてこの「ジーザス」とは、耳馴れない方のために説明しておくとイエス・キリストのこと。物語はキリストの最後の7日間をキリストとユダを中心にロック・オペラに仕立てた作品。「エルサレム・バージョン」は物語をリアルに演出したもの。対して「ジャポネスク・バージョン」は登場人物が歌舞伎風のメイクをしてたり、背景となる大道具も大八車だったりと日本的にアレンジしたものです。ロック・オペラと言うだけに、まず歌が凄い。ヘヴィ・メタばりの曲で音域も広いし、シャウトしまくり。ユダ役の役者さんはこのかなりの難曲を、いかにも練習しました的ではなくロック歌手ばりに、ってかそれ以上に見事な歌唱力で歌い上げてらっしゃってめちゃカッコいい。で、このユダって人、キリストを裏切ってしまったことで有名ですが、このミュージカルではユダが一番マトモな人に見えてくる。熱狂的で冷めやすい群衆、自分の保身のために裏切るキリストの弟子たち、キリストの孤独と苦悩。休憩無しの1時間40分という短時間の中にそれだけのものが詰め込まれているから、展開がスピーディーで目が離せない。そして壮絶なクライマックスと悲しいけれど、静かで美しい最後。派手な舞台ではないですが、見ごたえのあるものでした。
さて、この公演の後には会員限定のバックステージ・ツアーがあったので参加してきました(・・・逆ですね。バックステージ・ツアーがあるからこの日の公演を選んだので)。おかげでこの日の公演は会員の方ばかりだったようで、バックステージ・ツアーが始まってみると1階席はほぼ満席。2階席にも参加者がいらっしゃるような盛況ぶり。営業さんの挨拶の後、舞台監督さんの説明から始まりました。「ジャポネスク・バージョン」の初演は1973年、海外でショーアップされた公演を観た浅利慶太氏が日本的な演出での公演を思いたったそうですが、初演はあまり成功だったとは言えないものだったそうです。それなら出来る限り本物に近付けてリアルに再現しようとして出来たのが「エルサレム・バージョン」なんだそうです。初演の当時は今のようなワイヤレス・マイクは無かったので、有線のマイクを2本舞台に置き、歌う役者さんがその都度マイクを持ち(台詞はほぼすべて歌になってます)、それ以外の役者さんがマイクのコードを捌いてたんだとか。舞台監督さん曰くはそれがまたライブを見てるみたいでカッコ良かったそう。そう聞くとkagariもちょっと興味があるので、有線マイクで一度見てみたいですね。ちなみにワイヤレスのマイクになったのは1987年と、まだ最近のことなんだそう。そう言えば宝塚も今の新しい大劇場になるまでは衣装の胸にポケットがあって、大きなマイクを入れてましたっけ。ただ、この公演では最後の方でジーザスは服を剥ぎ取られてしまうからマイクを付けていません。マイクを付けると必ず発信器を腰などに付けないといけないんですが、この場合だと発信器が見えちゃうからです(キリストの時代にそんなものありませんから)。だけど声は拾わないと聞こえないので、横でローマ人総督のピラト役の人がマイクを仕込んだ杖を持ってジーザスの声を拾っているのだそうです。さらに磔にされる十字架にもマイクがちゃんと仕込んであるそうです。で、今回観た「エルサレム・バージョン」のセットはエルサレムの荒野を再現した傾斜舞台。舞台前方は4度の傾斜ですが、後方は25度。後方の左右は45度といった急斜面になっています。これは柱を組んで布で覆い、発泡ウレタンを流したものにおがくずを混ぜた茶色の塗料で着色し、さらに赤・黄・オレンジ・茶色・黒の塗料をかけ、最後に張りぼての岩を乗せて作ってあるんだそう。舞台がそんな風に傾斜してるから、ライトの点検もライトを舞台に降ろせないから、照明さんがゴンドラのような物に乗って行っているそう。高所恐怖症のkagariにはとんでもない話ですね。あと、舞台監督さんによると、前回のバックステージ・ツアーで質問が多かったのがユダヤの王ヘロデの館のシーンで、暗転の後に突如として登場する巨大な絨毯。暗転してる時間は短いので、これはどうやって敷いたり撤収してるのかといったもの。今回は特別にその暗転してる間にどんなことが行われているかを、明るい照明の元で実演してくださるとのこと。まず前のシーンの音楽が鳴り止むと、公演ではここで暗転。すると傾斜舞台の一番上から群衆の衣装を着けた舞台スタッフさん4人が絨毯の丸めた物を持って登場。上の方で2人が絨毯の端を押さえ、残る2人が下へと転がして敷いていき、最後に4人で整えたらスタッフさんは素早く上手と下手に別れて退場すると敷くのは完了。めちゃくちゃアナログだけれど、かなり素早い。舞台監督さん曰くは練習の賜物だとか。で、次に撤収。また音楽が鳴り終わると、舞台監督さんの暗転の声。もちろんこの場では暗転しませんが、それをきっかけに舞台前方の下手と上手に別れて先ほどの舞台スタッフさんが再び登場。4人で一斉に絨毯を下から上へと巻き上げ、最後まで巻き取ったら4人で抱えて一気に坂を駆け登って舞台後方から退場するんだけど、坂を登ってる時にコントのお決まりの如く、下手側の人が滑って転んでしまうなんてアクシデントが。もちろん観客大喜び。かなり面白かったです。舞台スタッフさんはなかなか大変なようです。それからこの公演では出演者は鬘を着けてる人が多いので床山さんはいらっしゃるそうですが、メイクは自前。これはかなり凝ったメイクの「キャッツ」なんかでもそう。これはkagariも前に聞いて知ってたけど、驚いたのはその後。「オペラ座の怪人」なんかだと衣装が凝ってるからか衣装さんがいらっしゃったけど、「ジーザス」だと衣装はなんと自己管理なんだそう。だからメンテナンスも自分たちでされるそうです。役者さんも大変なようです。
さてバックステージツアーは客席前方の方から順に舞台裏の見学に行き、その待ち時間の間、舞台監督さんはずっと客席からの質問に答えてくださってました。kagariたちも順番が来て舞台上手袖からの見学。やはり「オペラ座」に比べるとシンプルで置いてある物も舞台セットの岩のスペアだったり、ジーザスに向けて群衆が投げる石などの小道具、先ほどの大きな絨毯、それから磔にされる十字架。この十字架は長さが3メートル、重さは50キロ。これをジーザスはお芝居でフラフラになりながら担いで出て来るのですが、そのフラフラなのは実はリアルなのかも。傾斜舞台の裏側、木組みの柱を見ながら下手袖に移動。こちらには群衆が市場をするシーンで使うたくさんの商品の小道具がきれいに一列に並べられてました。そして最後にジーザスが磔にされる時に使われる手釘。もちろん手に打ち付けられる訳ではなく、クリップ型イヤリングを大きくしたような形。これに血糊を付ければ、それらしく手に打ち付けたように見えるんですね。これでバックステージ・ツアーは終了。やはり舞台裏は見ていて面白いものです。他にはリハーサル見学会なんかもあってこちらも気になってるところ。ただチケットも高いのでそんなにチケット買ってられないのが悩みどころ。でもまた他の演目でバックステージ・ツアーがあれば参加してみたいと思います。
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