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食を考えさせられた症例です。入れ歯を通して、食、食べること、食事、指導、生活などいろいろ考えさせられました。


症例1--歯周病で残り少ない歯を保存しながら、入れ歯を長く使っていく---肝性脳症患者例


下顎右側犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯残存で上顎は総入れ歯の患者さん

とにかく残存歯を抜きたくないとのことです。つまり歯周病に罹患した歯を残して歯を極力保存しながら入れ歯を使用したいということです。

そのためにRF金属床を下の入れ歯に選択した。それで12年近くもったが、やや緩くなり始めました。

時々来院して入れ歯がいたいとのこと、また涎が多く出て困っている、味がしないとのことです。

それで都立病院に紹介状を書いて、味覚障害の検査を依頼しました。患者さんは、肝臓が悪いそうなので、 行ったことのある都立病院に肝臓内科に受診していて、そこに都合よく口腔外科があるので、紹介状は、その都立病院に書きました。

亜鉛不足という診断が、都立病院から届きました。それで食事療法をとることにしました。涎は、通院のせいか、顕著にみられなかったそうです。

食事療法は、患者さんサイドに任せてしまうのですから、あまり把握できないままでいました。

2年後肝硬変で静脈瘤の手術をするという連絡をもらいました。

3年ぐらいたち、ゆるくなったという入れ歯をリライニングしました。その最後のとき来院されたとき 、言葉がはっきりしないこと、ロレツがまわらないこと、歩き方がおかしく、手に震えがきていたので、都立病院の先生に診療中電話して、 先生と連絡をとらせたところ、都立病院の先生が、肝性脳症の疑いがあるので、すぐに近くの内科医に受診させてくださいといわれたので、 患者さんにそのことを告げました。

アンモニア値があがり脳の状態がよくなくなりつつあるのだが、まだ初期の段階だとおもう。そのように電話で話されました。

それで近くの内科医に受診させて、血液検査で肝性脳症だとの診断をうけたそうです。

食事制限をうけたので、リライニングしたばかりなのですが、しばらく経ってから、何度かリライニングしましたが、最後の受診前よりも 歯の動揺度も落ち着いたようで、まだ入れ歯として機能しそうです。

肝性脳症という病名のために、患者さんもしっかり食事療法をしたせいか、事なきを得ました。

肝性脳症というのでなく、これが歯周病という病名であれば、患者さんもここまで食事療法を徹底してやれたかなという 気持ちもしますが、治ってよかった。

その食事療法とは、どのようなものであったか、について記します。

食べられる物ーーー主食ーーーご飯、めん、パン

食べられない物ーーー主菜ーーー肉類、魚介類、卵類、大豆、大豆製品

食べられる物ーーー副菜ーーー淡色野菜、緑黄色野菜、イモ、カボチャ、海藻、キノコ、コンニャク、漬物、果物

食べられない物ーーー副菜ーーー牛乳、乳製品

食べられる物ーーー調味料ーーー砂糖、酢、香辛料

食べられない物ーーー調味料ーーー油脂、塩、しょうゆ、味噌

食べられない物ーーー嗜好品ーーー和菓子

大きくわけると以上になります。また便秘に注意した生活をおくることになったそうです。


ほとんど食べられるものが、ないという感じがします。食するものがほとんどない。これは大変だ。しかし病状がこれ以上進まない様にするため、食事療法と内科医による投薬療法に決めたという患者さんのため、 歯茎がやせた場合に入れ歯を何とか安定させる努力をするのが、私の役割になりました。

自宅通院が可能でしたが、最初のころは、毎日内科医に通院は、家族が大変だったらしいです。

食事を作るのも家族にとって負担になったと思います。家族はお肉を食べているのに、自分はお肉なしの食事ですから、辛いと思います。

そのせいか、右頬のあたりが、ぼやっとした痛みがあると最初のころ通院中に何度か電話がかかってきました。


肝臓病でみられる、臨床検査値

・GOT  (正常値  8〜38IU/L) 肝細胞組織の障害

・GPT  (正常値  4〜43IU/L) 肝細胞組織の障害

・γ-GTP (正常値 12〜48IU/L) アルコール・薬物により上昇

・TBL 総ビルビリン (正常値 0.2〜1.2mg/dl) 皮膚・眼球が黄色に 黄疸

・ALP アルカリフォスファターゼ (正常値  100〜300 IU/L) 肝炎の検査

・LDH 血清乳酸脱水素酵素 (正常値 180〜450IU/L) 肝機能障害

・TP 総たんぱく (正常値 6.5〜8.5 g/dl) 肝硬変・悪性腫瘍

・ALB アルブミン (正常値 3.8〜5.3)g/dl) 肝硬変

・A/G比 アルブミン/グロブリン比 (正常値 1.1〜2.3) 肝機能障害で低下

・ZTT 硫酸亜鉛混濁試験 (正常値 2.0〜14.0ku) 慢性肝炎・肝硬変で低下

・TTT チモール混濁反応 (正常値  0〜5.0Ku ) 急性肝炎

・CHE 血清コリンエステラーゼ (正常値 0.8〜1.1△pH ) 肝硬変・肝がんで低下

・血中アンモニア (正常値 30〜80μg/dl) 肝機能の低下


肝臓疾患に影響するもの

・遺伝影響度    中程度ある。

・食生活影響度   高程度にある 飲酒が強く影響する。

・ストレス影響度  少しある


肝臓の解毒力が低下して血液中のアンモニアが増え、脳に影響が出る「肝性脳症」ですから、血中アンモニア値を下げるため、投薬、点滴などを行う。 それと患者さんによる食事療法を行ったそうです。アンモニアは腸内で発生するので、便秘しないことが注意点です。

壊された肝細胞が多く、残された肝細胞では、体が必要としている仕事が十分にできなくなった状態 なので黄疸、腹水、肝性脳症、食道静脈瘤などの症状が出て、合併症となります。


経過

肝臓専門医の指示のもと投薬が行われたらしいが、初日に採血した。

第1回採血の血中アンモニアは150

第2回採血の血中アンモニアは240

第3回採血の血中アンモニアは190

お盆休み中にもかかわらず、わざわざ特別に採血してもらったらしい。これで最初から10日ぐらい経過した。

第4回採血の血中アンモニアは190

第5回採血の血中アンモニアは150

第6回採血の血中アンモニアは150

第7回採血の血中アンモニアは120、先生の顔が明るくなったとのこと!1月ぐらい経過した。

第8回採血の血中アンモニアは120これで最初から30日ほど経過したらしい。

第9回採血の血中アンモニアは120

第10回採血の血中アンモニアは93このあと、肝臓病専門医のいる病院受診することに決まった。 秋に入り9月中旬のころだったそうです。

昔のカルテをもとに書いていますが、数字があやふやなところがある。今読みなおすといい加減なカルテだと思いますが、その時は必至に書いていたのでしょう。 患者さんからの電話連絡の内容を書き留めた程度のカルテです。


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9/12/07