第79回箱根駅伝往路プレイバック

出場チーム
駒沢大・順天堂大・早稲田大・中央大・大東文化大
神奈川大・亜細亜大・帝京大・山梨学院大・東海大
東洋大・法政大・日本大・中央学院大・日本体育大
拓殖大・國學院大・関東学院大・専修大・関東学連選抜


第79回箱根駅伝往路オーダー(2003.1.2)
チーム名 1区 2区 3区 4区 5区
駒沢大学 内田 松下 佐藤 塩川 田中
順天堂大学 村上 中川 長山 和田 難波
早稲田大学 篠浦 森村 杉山 大浦 五十嵐
中央大学 池田 藤原 池上 池永 高橋
大東文化大学 佐々木 村田 田子 野宮 馬場
神奈川大学 下里 原田 吉村 藤本 三宅
亜細亜大学 鈴木良 木村 梁瀬 中村 小池
帝京大学 中尾誠 飛松 小鹿 秋山 中尾勇
山梨学院大学 橋ノ口 モカンバ 高見澤 カリウキ 森本
東海大学 丸山 根立 越川 生井 中井
東洋大学 久保田 三行 田辺 北岡 渡辺
法政大学 有原 長嶺 山口 栗原 岡田
日本大学 勝亦 清水将 岩井 藤井 吉岡
中央学院大学 中東 福山 藤枝 河南 信田
日本体育大学 栗原 山田 四辻 鈴木 森永
拓殖大学 加藤 上村 高田 藤原 松尾
國學院大學 飯干 山岡 橋本 小俣
関東学院大学 北川 尾田 鈴木 瀧田 滝奥
専修大学 彦久保 行友 太田 本多 福島
関東学連選抜 坂斎(国) 重成(明) 佐藤(青) 野崎(創) 鐘ヶ江(筑)


スタート前

 新春二回目の陽がまぶしい、2003年1月2日・午前7時・東京大手町読売新聞社前。激戦前とは思えない太陽の光がさしている。そんな中、各校の思惑が行き交う区間エントリー変更があり、いよいよ臨戦体制となった。毎年ほとんどの学校が1人ないし2人を入れ替える区間エントリーは例年以上に静かな変更にも思える。それだけ各校間の選手・チームの差が無くなっている証拠でもあった。その変更では駒澤は5区に準エース格に成長した田中宏樹を、中央は1区と3区に実力者の池田圭介と池上誠悟を投入し5区には成長著しい2年の高橋憲昭を、前回古豪復活の早稲田はスピードランナーの杉山一介、前回2位の順天堂はエース格の長山丞、近年着実に巻き返してきた大東文化は主将の田子康晴をそれぞれ3区に起用してきた。その一方で前半に主力を投入した山梨学院、名門復活が期待される日本大学は予定通りのエントリーで、調整が万全である事を印象付けた。そして、いよいよ第79回箱根駅伝スタートの時を迎えるのであった。



1区   21.3km 大手町読売新聞社前〜鶴見中継所 
区間記録 渡辺康幸(早稲田大) 1時間01分13秒 70回大会@‘94年


 午前8時、読売新聞社前において1区のランナーが緊張の面持ちの中、関東陸上競技連盟・広瀬豊会長の号砲の下、20チーム・往復216.4キロのスタートが切られた。

 最初に曲がると「区間賞」を獲るといわれるスタートして一番最初のカーブは、中央大学・池田圭介が曲がった。そしてカラフルなユニフォームに身を包んだ20人のランナーが一団となってカーブを曲がる。さすがに20校に増えたのが災いしたか、大東文化大学・佐々木誠がすこしバランスを崩したが大事には至らなかったようだ。直線に入っても一団となって進む。先頭を引っ張るのは中央学院大学・中東亨介、中央大学の池田圭介、そして学連選抜の坂斎亨(国士舘大学)といったあたり。だが、例年にもましてゆっくりと進んでいる印象がある。注目の最初の1キロは3分7秒、遅いといわれた前回大会の3分3秒をさらに下回るスローペースだ。各大学とも慎重すぎるスタートは作戦かそれとも牽制か。

 1キロから2キロに進むにつれて、ようやくじれて学連選抜の坂斎が出てきた。だが、その2キロの通過が6分17秒。依然として超スローペースで進む。本来ならタテ長の集団も、あまりのスローの為かヨコ長となって進む。3キロの通過が9分27秒。やはり超スローペースは変らない。おなじみ増上寺の前を通過する頃には、区間賞候補の國學院大學・秦玲、早稲田大学・篠浦辰徳、大東文化・佐々木あたりが前に出てくるがやはりペースは上がらない。4.7キロの田町を通り過ぎるころ、ようやくペースが上がったか集団がタテ長になりつつある。集団を学連選抜・坂斎が引っ張る形。それでも5キロの通過は15分30秒。また集団が一団となって5キロから6キロの1キロは3分18秒。上がっても上がりきらずという感じで進む。もちろん優勝候補・駒澤大学の内田直将、山梨学院大学の橋ノ口滝一は集団の前方でじっと様子をうかがっている感じ。選手としてもじれったいが、関係者はもっと、見る立場にはさらにじれったい展開となった。

 そして、今までなら各チームとも監督・コーチが指示を出す八ッ山橋にさしかかろうかとする7キロ過ぎ、國學院・秦がいよいよペースを上げ6キロから7キロを2分59秒とペースを上げる。八ッ山橋の登りに差し掛かった頃、東洋大学・久保田満、専修大学・彦久保文章あたりが遅れ気味になるが、やはりすぐ集団に取り付く。この八ッ山橋で今まで通りであれば指示が出ていた。だが、運営管理車の導入により各大学の監督・コーチがいない八ッ山橋を通りすぎてもほとんど集団は一団のままレースは進んでいく。

 10キロの通過は31分2秒。相変わらずの超スローペース、ヨコ長の展開は進む。先頭を引っ張るのは中央・池田、早稲田・篠浦、法政大学・有原忠義といったところだが、それでも1キロ3分10秒前後の超スローペースは変らない。ここまで来ると誰も出ないというよりは出られないという感じすらする。1年生の順天堂大学・村上康則、東海大学・丸山敬三、帝京大学・中尾誠宏、専修・彦久保あたりは安心している様子もある。12キロに差し掛かった頃、亜細亜大学・鈴木良則が前に出て仕掛け、ペースが上がる。だが、このペースアップにいち早く反応したのは駒澤・内田、山梨学院・橋ノ口で、しっかりとついていく。優勝候補の呼び声が高いだけあり、このあたりのしたたかさはさすがの一言に尽きる。だが、やはりというべきかペースは上がりきらず集団のままレースは進む。

 15キロの通過は46分22秒。相変わらずのスローな展開は変らない。この15キロは給水と同時に各大学の控え選手が監督からの支持を伝える。動きがあるかと思われたが、さほどペースが上がっている印象は無い。その給水地点では20人の大集団であることが災いしたか、学連選抜・坂斎が転倒するアクシデント。集団から遅れるが、スローな展開の為すぐに集団に取り付く。まったく集団が一団のまま、1区最大のポイント六郷橋に20人の選手が差し掛かる。

 六郷橋の登りにさしかかり、転倒して一時後ろに下がっていた学連選抜・坂斎が前に出てきた。登りながら1キロ3分のペースに上がり、いよいよというべきか本命・駒澤の内田がスパート。六郷橋の下りに差し掛かった頃、ついに集団がばらける。関東学院大学・北川昌史が一番最初に遅れだすと、順天堂・村上、早稲田・篠浦、帝京・中尾 が次々と遅れていく。先頭では駒澤・内田が仕掛け、山梨学院・橋ノ口がつくが、内田はもう一度スパート。やはり駒澤が用意した1区のスペシャリストだけあり、その差をぐんぐん広げる鮮やかなスパートには、力のある橋ノ口といえどついていくのは容易ではない。その差はみるみる広がり、橋ノ口は神奈川大学・下里和義、亜細亜・鈴木良、大東文化・佐々木の集団に吸収され、さらに位置を下げる。その一方で先頭の駒澤・内田は後方集団を70メートル以上引き離しにかかる。2位集団は神奈川の下里が仕掛け、単独2位に上がる格好で最後の1キロにさしかかる。

 鶴見中継所ではエース・松下龍治が待つ内田のペースは依然として衰えない。藤色の襷を外し最後のラストスパート。見事先頭で襷をリレーする。内田、堂々の区間賞だった。そして10秒遅れて2位では安定ぶりを発揮した神奈川・下里、3位では最後で巻き返して山梨学院・橋ノ口がリレー、その後もぞくぞくとリレーする。4位は亜細亜・鈴木良、5位ではエース・黒田将由の穴を見事に埋めた法政・有原、さらには東洋・久保田、拓殖大学・加藤健一郎、中央・池田、大東文化・佐々木、見せ場を作った学連選抜・坂斎とリレー。日本大学・勝亦利彦、東海・丸山とリレーした後、少し間があいて専修・彦久保、日本体育大学・栗原親也がリレー。そして中央学院・中東、早稲田・篠浦、帝京・中尾誠は予想よりやや遅れた位置でリレー。「ラスト!ラスト!」の声が響く。ここまではほとんど差が無い。先頭から50秒遅れ、「お疲れ!お疲れ!」の掛け声を受けて順天堂・村上から中川拓郎にリレー、最後は関東学院が北川からスーパーエースの尾田にリレー。スタート1区の激闘は僅か1分1秒というタイム差。尾田、中川というあたりにとってはゴボウ抜きが期待できる。

 先頭と最後までほとんど差が無いという展開で、エース区間2区へと舞台は移った。

1区成績
総合順位大学名トップ差選手名区間タイム
駒大   —  内田 1:04:36
神大  0:12  下里  1:04:48
山学大  0:15  橋ノ口  1:04:51
亜大  0:15  鈴木良 1:04:51
法大  0:16  有原 1:04:52
東洋大 0:17  久保田 1:04:53
選抜  —  坂斎 1:04:53
拓大 0:18  加藤 1:04:54
中大 0:18  池田  1:04:54
大東大  0:19  佐々木  1:04:55
日大  0:20  勝亦  1:04:56
東海大 0:23  丸山  1:04:59
専大 0:23  彦久保 1:04:59
國學大 0:25  秦  1:05:01
日体大 0:34  栗原  1:05:10
中学大  0:39  中東  1:05:15
早大 0:40  篠浦  1:05:16
帝京大 0:42  中尾誠  1:05:18
順大 0:50  村上 1:05:26
関学大 1:01  北川  1:05:37