。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
*金閣寺大書院障壁画展* *
墨滴らすごと夏霧の杉襖
見ゆるもの見えざるものの明急ぐ
大いなる鵜の嘴の曲りかな
目の会へば我も鵜の目でありにけり
十の鵜の虚空ひとつへ我ありぬ
石ひとつ黙す鵜の図の襖かな
篝火や迎ふ意の鵜の羽ひろぐ
金色の火の成す白夜白襖
在るがままありて温さの古木かな
花満ちて工夫の腕のやうな枝
花人のお黒き幹へ寄する声
庭よりの風庭へ出づ桜かな
黒白を言はず薄墨桜かな
幹ばかり見る人横に散る桜
ひと枝にいのちの始終花曇
佇めば振り向けば花吹雪かな
散るにさへ集ふうき世の桜かな
古るといふ不思議や虚の花明り
春暁や女の素顔見すまじく
涅槃西風日の輪優しくなりにけり
花月夜死者が宴の刻ならむ
夜桜や女のよはひ匂ふほど
春愁や石にも親のあるといふ
竹の子やちょっと斜のうはのそら
竹の子の皮の蟹股天への歩
竹の子や矢印ひとつ足して伸ぶ
長閑さはとほくに竹の葉のゆるる
帰る鳥い行き憚る玉座かな
梅匂ふ善意の人の地の平和
至宝不琢磨と読めて涼しき墨書かな 。 。 。 。 。 。