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エヴァ「ああ、良く来た…座ってくれ」
茶々丸「どうぞ、座布団です」
さよ 「あっ、はい、ありがとうございます」
エヴァ「で、用っていうのは、体のことか?」
さよ「はい」
 私は座布団に座り、エヴァさんを真っ直ぐ見て言う。
さよ 「すみません、あの話はなかったことにしてください」
エヴァ「…ほう?体が欲しいのではなかったのか?」
さよ 「体は、欲しいです。とても…でも」
 一瞬目をそらしてしまった。けれどもう一回目線を合わせる。
さよ 「…写真は心ですから」
エヴァ「?」
さよ 「どんなに私に似ていても、私が乗り移ったとしてもきっと…それは私じゃないと思うんです。
  ごめんなさい…上手く言えなくて…」
エヴァ「…」
 エヴァさんは黙ったまま何の反応も示さなかった。…怒っている?
さよ 「あ、ごめんなさい、せっかくの好意を…」
エヴァ「ふふ…いいんだ。相坂…だが本当にそれでいいのか?他に肉体を手に入れるすべはないんだぞ?」
さよ 「…はい!」
エヴァ「そうか…そんなに強い意志があるならば、一つ方法がある」
さよ 「え?…でも今、ないって…」
エヴァ「ふふ、『肉体を手に入れる』方法は確かにない。
    だが、『肉体を実体化させる』方法なら、ある」
さよ 「ほ、本当ですか!?」
エヴァ「だがそれは本当に意思の強い、忍耐強い者にしか出来ないことだ…やれるか?」
 考えるまでもなかった。
さよ 「やります!」


 次は明日の朝方に…
>>802-803

エヴァ「そう、意識を指先に集中させるんだ…
    今までの価値観は捨てろ、自分に出来ない事は無いと思うんだ」
 あれから一時間が一日になる別荘の中で、私はエヴァさんの指導の元、実体化の訓練をしていた。
 茶々丸さんが私の体をセンサーで感知したら
 知らせてくれるらしいけれど、まだ一度も茶々丸さんは反応しなかった。
 実体化の訓練は、何も難しい事はしない。だから本当に難しい。
エヴァ「集中するんだ…もっと強く、もっと鋭く」
 『私の体は存在している』そう念じる事によって体が実体化するのだとエヴァさんは言う。
 自分は病気だと思っている人が本当に病気になってしまうようなものだと。
さよ 「はぁっ…はぁっ…」
エヴァ「…頑張れ」
さよ 「はぁっ…はぁっ…はい…!」
 けれど、結局私はその日、爪の先すらも実体化させることはできなかった。

朝倉 「はぁ…さよちゃん何処行ったのかな…あれから帰ってこないし…
    今日の授業にも出てこないしホントどうしたんだろ…」
茶々丸「失礼します、朝倉さん」
朝倉 「茶々丸さん?どうぞどうぞ、座ってー」
茶々丸「いえ、お構いなく…相坂さんから伝言を頼まれただけですので」
朝倉 「さ、さよちゃんから!?さよちゃんはどこにいるの!?」
茶々丸「それは…すみません、本人から口止めされているので…」
朝倉 「そ、そう…」
茶々丸「ではお伝えします。
   『朝倉さん、ご心配かけてすみません。当分の間留守にします』…とのことです」
朝倉 「当分…?」
茶々丸「それでは私はこれで…」
朝倉 「あ、うん…」
 エヴァさんと茶々丸さんはあまり授業をさぼるわけにもいかないので、
 二人がいない時には私はずっと精神力をつけるトレーニングをしていた。
 そして二人が帰って来たら再び実体化の訓練を始めた。そんな生活が始まってどれくらいになるだろう…
さよ 「はぁ…はぁ…なんで…できないの…」
 学校にも行かず、ずっと訓練しているのに全然出来そうな雰囲気もない…泣きたくなる…
エヴァ「…疲れただろう、ここの時間で20日ほどぶっ通しでやってるんだ…少し休め」
さよ 「ふぅ…はぁ…でも…」
エヴァ「そんなフラフラではろくに集中も出来ないだろ?いいから休め」
さよ 「はぁ…はぁ…は、はい…」
 床に倒れこんだ瞬間、意識が暗転した。
エヴァ「寝たか…無理もないな…」

 それから日が過ぎても、全く進展はなかった。エヴァさんも茶々丸さんも初日と全く変わらない
 様子で訓練してくれているのが唯一の救いだった。
さよ 「はぁっ…ううっ…」
エヴァ「ふむ…アプローチの仕方を変えてみるか…相坂、実体を持ったらまず何をしたい?」
さよ 「はぁっ…そ、そうですね…その…朝倉さんと……」
エヴァ「ああいや、言わなくてもいいぞ。その事を強く念じながらやってみろ」
さよ 「…はいっ!」
 朝倉さん…朝倉さん…私は朝倉さんと…手を繋ぎたい…!
        …ピ…
エヴァ「!! 茶々丸っ!今のは!?」
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