星の不思議

 

星の不思議

 

 
1. 星の等級はどうしてきめるのか
 
  星の等級を決めたのはギリシャ人のヒッパルコスという人です。紀元前120年ころに、約1,000個の星の一夜明るさを観測して星の表を作ったのですが、その時、もっとも明るく見える星十数個を一等星、人眼でかろうじて見える星を6等星として、そのあいだを2,3,4,5と分けたのです。これは後に紀元2世紀のころ、プトレマイオスによって「アルマゲスト」というぎりしゃ天文学の集大成ともいえる本に収められ、今日使われている等級のもとになりました。

 現在私たちが使っている等級は、19世紀になって基準がしっかりと決められたものです。等級は、五等級だけ違うと明るさが丁度100倍違うように決められています。つまり、一等星は六等星のちょうど100倍明るいと約束されています。

 太陽はマイナス26.9等星、満月約マイナス12.5等、惑星のなかでもっとも明るくなる金星がいちばん明るく見えるときはマイナス4.3等、シリウスはマイナス1.6等星です。

 

2. 星の色はなにをあらわしているのか
 
  星には、青白く見えるものから黄色やだいだい色、そして赤みを帯びて見える星まで、いろいろな色のものが見られます。よく見ると微妙な違いがある星の色は、じつは表面の温度を反映しているものなのです。

  天文学者たちは、星の色を詳しく観測したり、星の光を分析したりして、星の表面の温度を測っています。こうして測られた星の表面温度は、低いもので2,000度くらい、高いものは数万度くらいです。2,000度から3,000度という星では、放つ光は目に見えない赤外線になっています。また、一万度以上という熱い星では反対に、放たれる光の大部分は紫外線であって、やはり私たちの目には見えません。アンタレスやペテルギウスは赤く光っており、約、3,000度の温度です。太陽は6,000度で薄黄色に輝いています。シリウス、ベガは白くひかり、約10,000度です。レグルスやスビカは15,000度から20,000度の温度です。

  ただし、火星が赤く光るのは、表面の温度とは関係なく、惑星の表面が酸化鉄を多く含んでいるからです。

 

3. 星の寿命は
 
  老いた星の中心部で燃料の水素がなくなると、中心部はつぶれて熱くなり、燃えかすは次々に新たな燃料となって熱を放ちます。しかしついには、中心部では全く原子エネルギーが放たれなくなります。それまでに星は大きさや明るさを複雑に変えますが、いずれにしてもこれが星の一生の終わりです。太陽の寿命はおよそ100億年で、約50億年以前に生まれた太陽は今、中年の星です。これから数十億年たって寿命が終わりに近づくと、未来の太陽は地球の軌道より大きく膨れ、現在の数千倍も明るくなります。しかしやがて中心部で原子力が放たれなくなると、地球くらいの大きさしかなくて、現在の数百分の位置の明るさしかない暗い星(白色
わい星)につぶれるのです。太陽よりずっと重い星、例えば十倍以上も重い星は、暗く小さな白色わい星に静かにつぶれて一生を終わるのではなく、超新星の大爆発をするものもあります。

 

4. 白色わい星とはどんなものか
 
  大きさが角砂糖程度でありながら、その重量が100キログラムにもなる高密度の恒星があります。その密度はプラチナの8,000倍にもなります。1915年にクラークは、シリウスの伴星のスペクトルを観測し、この星が太陽よりも明るく、表面温度は一万度という高温で、シリウスと同じ温度だということが分かりました。当初、これほどまで密度の高いものは存在するはずがないと思われていましたが、イギリスのラザフォードは、高密度の物質が存在できることを証明しました。原子は、その質量の大半占める原子核とそまわりを回るほとんど質量のない電子とから構成されていますが、もし電子が払いのけられるような状況になれば、原子核どうしが接近し、地球上では見られないほどの超高密度の物質が作られるというものでした。

 ところで、この白色わい星は恒星が進化する筋道の最終段階の姿ではないかと考えられています。

 

5. 天の北極とは
 
  わたくし達地球の表面には北極や南極、赤道がありますが、天球にも同じようなものを考えることが出来ます。地球の北極の真上が天の北極で、南極の真上が天の南極、そして赤道の真上をずっとつなげたものが天の赤道です。つまり、地球の表面を、天球という巨大な球の内側にうつしたと考えればよいわけです。天の北極にある星が北極星(実は角度で約1度ずれています)です。

 

6. 知っておきたい星の名前
 
  シリウスとかアンタレス、あるいは、デネブとか、七夕の星、アルタイルとベガというように、とくに明るい星であるとか目立つ星などで、昔からそれぞれ名前をつけられているものが全天で数十個あります。

  例えば冬の日没後に東の空に上がってくるシリウスが、明け方の東の空に太陽に先駆けて、上がるようになると、夏の暑さがやってくる季節です。昔の人は、シリウスの明るさが太陽のそれと一緒になって、夏の暑さの原因になると考えたのかも知れません。シリウスという名前は、焼き焦がすという意味のギリシャ語「セイリオス」に由来するものです。夏に、この星が太陽とともに明け方の空に現れる頃は、ナイル川の水かさが増す季節でした。古代エジプトでは、この星を「ソチス」と呼んで、ソチスが東の空に上がる夏至のころを年の初めにしていました。一方、中国では、「天狼」と呼んで、災いの星としていました。

  さそり座の一等星アンタレスは、「アレス(火星)に対抗するもの」という意味のギリシャ語です。アンタレスの赤っぽい色が火星に似ているうえ、どちらも黄道のちかくにあるため、時には両方がちかづいて、その赤み競い合ったからです。

  七夕の星アルタイルは、「飛び上がる鷲」、そしてベガは「落ちる鷲」という、どちらもアラビア語です。牽牛と織女というのは、勿論中国の伝説に由来したものです。はくちょう座のα星デネブが「尾」、β星のアルビレオが「くちばし」というように、アラビア語の名前が多いのは、ギリシャの天文学が滅びたあと、1,000年にも渡ってアラビアがそれが受け継がれていたからでしょう。

  おうし座のアルデバランは、「後に従うもの」という意味です、あの昴と言われたプレアデス星団に続いて現れるのでこのような呼ばれています。昴とはもともと「すまる」で、これは昔の貴族が首にかけた飾り玉のことです。

 

7. 恒星の構造はどうなっているのか
 
  星はみな星間に漂うガス雲の中で生まれ、進化し、恒星になります。星間ガスが自身の重力で収縮し熱せられると、そこに原始星が誕生します。その原始星はさらに収縮し、中心部の温度が1500万゜Kに達すると、星の原子炉が点火し原始星は星になります。水素を燃料としながらヘリウムの灰をのこして光り輝くのがこの時期の星で、主系列星と呼ばれています。

  ヘリウムは水素より重いので水素が燃えるにつれて星の中心に集積していきます。その課程で中心部には、ヘリウムより重い原子が発生してきます。これが白色ワイ星へと変化していく課程です。

 

8. 恒星の等速運動って何
 
  18世紀のはじめころまでは、恒星は天球上に固定されていて相互の位置を変えるものではないと思われていました。しかし、グリニッジ天文台の第二代台長のハレーは、古代の観測による星の位置と彼の時代の観測とを比較して、アークトゥルス、アルデバラン、シリウスといった恒星は、周囲の恒星に比べてかなり移動している事実を発見しました。恒星は空間内で互いにいろいろいな方向に動いているものであって、その相対速度は毎秒20㎞ほどですが、これは、絶対速度に換算すると毎秒300㎞以上になります。

  恒星の固有運動は大きさも方向も様々ですが、多数の恒星を総合してみると、一つの方向に向かう傾向が見られます。これは太陽系がこれとは反対の方向へ運動していること、すなわち恒星としての太陽が空間的な運動をしていると言うことになります。この運動は、毎秒19.5㎞で、ヘラクレス座の方向に動いていることが確認されています。

 

9. 超新星とはなにか
 
  星が変化していく形はその星の質量により変わってきます。太陽質量の3倍程度の星は、ヘリウムが燃え尽きると、それ以上燃やす力はなく白色わい星として一生を終えますが、3〜8倍の星になりますと、だいたい1億年くらいの間にヘリウムの燃えかすの炭素が中心にたまっていき、炭素に火がつくと、後にはなにも残さず、宇宙に散ってしまいます。これが超新星爆発です。

 

10. 天の川はどのようになっているのか
 
  われわれの太陽系は、外からみると渦巻き状の銀河系のなかに存在しますが、この銀河系が平たい円盤の形をしています。ですから、これを銀河系の内側の太陽系からみると、その円盤の面が一筋の帯のように見えるわけです。これが天の川の正体ですが、1922、年にJCカプタインが提唱した銀河系は扁平なレンズ形で直径約4万光年、中心部の厚さが約8千光年で、約400億の星を含み、ハーシェルが提唱した銀河と比べると随分大きくなりました。現在では、銀河の大きさは、直径約10万光年、中心部の厚さ約1.5万光年で約2000億の恒星を含み、太陽は中心から3万光年も離れた円盤部に位置しています。

 

11. 星の誕生はどうしておこるのか
 
  星は星間ガスの収縮に世って形成されます。星間ガスの収縮の条件として考えられているのは、1)自分の重力で収縮できる大きな質量の星間雲、2)星間雲どうしの衝突、3)電離面による圧縮、4)恒星風、双極分子流などによる圧縮、5)超新星の残骸による圧縮、6)銀河系の渦状腕による圧縮などがあげられています。

  星間雲の収縮により幾つかに分裂した一つの分子雲は、重力によって、やがて回転が生じ、遠心力などで扁平になっていきます。また、分子雲の中心ほど密度が高くなり、さらに収縮が進んで原子星が誕生します。回転するガス円盤の中心に原始星が形成されると、円盤と垂直な双方向に物質の流れが生じ、やがて、星の形成期で最も激しい流れとして発達していきます。こうして、星が誕生します。オリオン座の大星雲がいまこの状態にあり次々と星々を誕生させていることが観測されています。

 

12. 何万光年の彼方の星は今どうなっているのか
 
  いま、私たちが見ている星のひかりは、何万光年も遠くにある星の光です。ということは、その光が輝きだして、私たちの目に触れるのにそれだけの旅をしてきた過去の光と言うことができます。ですから、いまどうなっているかということは、さらに、それだけの年数が経った後でなければ分からないと言うことになります。ただ、夜空にある星の中には、星の一生のうちの様々な状態のものが無数に存在します。若くても超新星爆発を起こすもの、また、白色ワイ星となっているもの、赤色巨星もありますし、いろいろな形の星が監察されています。したがって、何万光年の彼方にある星がやがてどうなるかは、分かりませんがいずれ、星の一生のうちのいずれかの運命を辿るものと思われます。

 

13. 暗黒星雲とはどんなものか
 
  星雲の中の比較的広範囲に広がった散光星雲の写真のなかに、所々に、暗い部分がくっきりと見えることがあります。これは、手前にある水素分子や星間塵の濃いところが、バックに広がっている明るい星雲の光を遮るためにできたもので、これを暗黒星雲とよんでいます。水素分子より個体の星間塵の方が、この作用を強く起こします。有名な暗黒星雲は、オリオン座にある「馬の首星雲」です。IC434という散光星雲をバックにして、丁度、馬の首のような形をしたシルエットを見ることができます。また、ヘビつかい座の銀河のなかにあるS字状暗黒星雲や、射手座のM30を三つに区切っている暗黒星雲が有名です。

  暗黒星雲は、肉眼ではなかなかみえるものではありませんが、天の川のなかにある黒い部分の幾つかは暗黒星雲であるといわれています。

 

14. 星間物質とはなにか
 
  星と星との間にはいろいろな希薄な物質があって、星の光を遮ったり、自ら光を出してしています。これらをまとめて星間物質といいます。星間物質は大きく分けて気体と気体粒子になりますが、主役は気体で星間ガスといい、その大部分は中性の水素原子です。星間ガスはHI領域ともいい、大きさは10光年ぐらいの塊になっています。そのなかのところでころに水素分子の雲、分子雲があります。これが暗黒星雲と呼ばれているものです。

  そのほか、ひかりを出す気体にはガス状星雲と超新星の残骸があり、ガス状星雲はさらに散光星雲と惑星状星雲に別れます。

 

 

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