到花日数

秋剪定と到花日数

私なりの剪定日算出法

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バラ展直前になると、「出せる花があるんだろうか?」と不安になります。特に、バラ展を運営する立場になると「花が集まるかどうか」で気をもみ、会員さん宅に偵察に行ったりして数読みするんではないでしょうか? (私はそうです。)

さぬきばら会の秋のバラ展は、11月初めの連休に開催されます。9月初旬に、亀水バラ園の秋剪定講習会で会員同士情報交換し、「今年の秋展は11月×日だから、9月○日を中心として剪定しましょう」みたいなこと決めます。しかし、会員さんがみんなその通りに切ってしまうと、気候によっては「花が全然ない!」という事態も招きかねません。

バラは剪定から開花まで芽が曝された温度の積算(その日の平均気温の総和)で開花が決まるそうです。一般的に1000℃と言われています。概ね、この剪定日は各品種の到花「日数」で決められます。

しかーし、「日数」ってアバウト。例えば、秋剪定後40日で咲く品種があったとします。この40日という日数はあくまで目安で、その年の天候が標準的じゃなかったらアウトですし、照準を10月20日前後にするか、11月3日にするかでも変わってきます。開花は積算温度で決まるので、極端な話、涼しい秋に40日で咲く品種は、暑い夏の場合なら40日では既に散っているでしょう。

2006年、私は日数で剪定日を決めました。結果的に撃沈でした。(=10月下旬の異常高温で、一気に開花した) 
メルヘンケニギン1株7本のステムしか残らず、花を選ぶなんでいう状態ではなく・・・。

で、2007年は考えました。積算温度で算出します。この年の目標日は11月3日です。
2006年に40日で咲いた(9月15日剪定、10月25日開花)からといって、ならば2007年は単純に9日遅らせて9月24日に剪定すればいいほど単純なものでもないです。9月15日〜10月25日(40日)の積算温度と、9月24日〜11月3日(同じく40日)の積算温度は全然違うからです。

<データ整理>
最初の作業は過去のデータ整理です。品種ごとの剪定日、開花中心日だけは記録していたので、それから得られる到花日数を積算温度に置き換えます。
この作業で大活躍するのは、エクセルと気象庁のHPです。

気象庁のHPにいくと、下の方の「気象統計情報」というところに「過去の気象データ検索」というのがあります。まずはここをクリック。

次の画面で、都道府県名と、観測地点を選びます。私の場合、香川県内でも「高松」の観測点の気温が近いです。

さらに、データが欲しい年、月をクリックし、「データの種類」のところで「200×年○月の日ごとの値を表示」を選びます。

すると、このような画面が表示されます。
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この、気温の部分の「平均」の値を、剪定日から開花中心日までエクセルで足し算します。それを、「その品種が要求する開花までの積算温度」と考えます。
この平均気温は最高気温と最低気温の平均ではありません。毎正時の気温の和を24で割ったものです。

極端な例ですが、1日24回の正時のうち、23回が10℃、1回が30℃の日があったとします。ここで意味する平均気温は(10℃ × 23 + 30℃ × 1) ÷ 24=10.8℃です。最高気温と最低気温の平均ではありません。

過去のデータを総合すると、ほとんどの品種で年毎に到花日数は違っても、積算温度はほぼ一定でした。1つの目安として有効みたいです。


<剪定後→バラ展までの気温の推移を予想する>
最も重要な作業です。この仮定を元に剪定日を決めるので、もし外すと即死します。
剪定前1週間ぐらいの気温の変化、気象庁の長期予報、気象庁以外の民間の予報、占い、あみだくじその他を最大限活用し、数日悩んで決めます。(ちなみに妻の場合、人生の岐路に立つとあみだくじが登場します。私との結婚もあみだくじで決めたそうですが、今のところ選択は全て正しいそうで、絶大な信頼を持っています。)

2007年の場合、ラニーニャ現象で猛暑。気象庁の長期予報では、気温が平年より高い確率は9月が50%以上、10月が40%、11月が平年並みでした。この期間晴れの日が多いとの予報だったので、日照不足による開花の遅れは考えないこととしました。

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剪定直前の気温の推移(黄色)はかなり平年値より高いので、10月末に平年値まで下がると仮定して毎日0.27℃ずつ下げていったものが青線の「予想」です。その仮定に従って、積算温度を計算したものが次の表にあります。
見たら分かりますが「9月は高く、10月はやや高く、11月に平年並みになる」という気象庁の予報を反映させてます。









<品種毎の剪定日を決める>
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いよいよ、品種毎の剪定日を決めます。左の表の紫の部分には、前項で予測した平均気温の推移を元に、ターゲットである11月3日から逆算した積算温度を入れています。
例えば、メルヘンケニギンは、2006年に954℃でいい花が採れているので、仮定に基づき同じくらいの積算温度の日を探すと、9月18日(966℃)が最も確率が高そうな剪定日(剪定中心日)となります。
(ついでに紫のすぐ右に'06年、'05年、平年値の積算温度を入れていますが、近年の高温傾向がよく分かります。)


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別途、こんな表も用意します。一番上にバラ展までの残り日数と、予測に基づく積算温度なんかを入れておくと、分かりやすいと思います。
この表はラミネート処理して庭のあちこちに置いておくと便利です。(今日、どの品種をどんな方式で剪定/ピンチするのかが一目瞭然)

過去のデータに基づき、品種ごとの剪定中心日(黄色)を決めます。鉢植えやソフトピンチは少し早く咲いてしまうので、剪定中心日より遅くしたりしますが、データの蓄積があって自信がある場合は、その日を真ん中にして前後に分散させます。また、「木が若い」とか「ピンチのタイミングがずれた」などの諸要因も考慮して、剪定中心日から前後どちらにどのくらいずらすかも考えます。

その他考慮すべきファクターとして
・鉢植えは地植えより早く咲く。
・郊外は高松市内と比べて1,2日早く切った方がいい。
・切る位置によっても芽の動きが違う。(シュート節間の上部・・・早い、下部・・・遅いか芽が動かない)
・予備剪定なしにいきなりシュートを半分以下にすると、ショックで芽の動きが遅れる時がある。
・マダムビオレ等は芽の動きが悪いので、剪定部位の葉(動かしたい芽に付いている葉)を最初からむしっておいた方がいいみたい。データの質を上げるためにも、全ての品種で剪定部位の葉をむしっておくのもいいかも。
・ソフトピンチは普通の剪定と比べて芽の動きが早いので、2日遅らせる。
・同じ品種でも日の当たり具合や水加減でかなり変わってくる。

などがあるので、庭の事情にあわせて熟慮します。

<剪定する>
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いよいよ剪定です。仕事持ちは作業にかけられる時間が限られるので、夜でも出来る下準備に時間をかけ、作業は機械的に短時間で済ませます。どこで切るか悩ましい株は、いざ切る段になって悩むと時間がかかってしょうがないので、8月末ぐらいからしっかり悩み、予定剪定位置にマーク(花屋の値札ラベル)しておきます。

2007年は剪定位置を特に悩まない株でも、全枝にラベルをつけ、剪定日、開花日、花の質(○△×くらいで可)を油性ペンで書き込みました。左の写真は2008年1月撮影ですが、ラベルは無事ぶら下がっているので、集計は春の本剪定前までの暇になった時で全然かまいません。






<ただ待つ・・・のではなくて写真を撮っておく>
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剪定後、バラ展までしばらくの間は薬害が怖いので消毒もあまり出来ず、「見てるだけ」の日々が続きます。が、こまめに写真を撮っておくと、後で振り返って参考になるときがあります。デジカメは日付が記録されるし、何枚撮ってもタダなので、便利です。


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ステムを1本立てたか2本立てたかなど、いちいち覚えていないので、いろんな場所のいろんな時期の写真を撮っておきます。

もし良い花が得られた場合、何で咲いたのかを分析しておかないと、来年以降につながらないと思って撮りまくります。
全株全ステムを「記憶」することは私には不可能なので、「記録」で対応します。




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つぼみが確認できたときも記念撮影です。品種によって開花までの日数が異なるので、バラ展に合うかどうかの目安となります。


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枝直し(の練習)なんかもしたりします。

このくらいの時期が最もワクワクするかも。(花を見たら一喜一憂? 一喜三憂? 株によっては憂のみ?)









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顎が割れたタイミングでも写真撮っておきます。これまた品種によって顎割れから開花までの日数が異なるので、来年以降のバラ展直前の精神安定&本命選定に役立つでしょう。

<結果分析&反省する>
2007年の秋はこんな結果でした。

まずは気温予想ですが、概ね予想通りに推移して、剪定日からの積算温度は「予想」を使っても「実際の平均気温」を使ってもほぼ同じでした。気象庁に感謝です。
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<前年以前のデータを持っていた品種>
 的中・・・大多数
 ハズレ・・・ダイアナ・プリンセスオブウェールズ

<データがなかった新入り品種>
 的中・・・ジェミニ、コロラマなど多数(bara-oyaji様の連載のおかげ)
 かすった・・・シージャック、オジアーナ、白秋、マダムヒデ
 ハズレ・・・ローラ
 大ハズレ・・・手児奈、ノービー

・以前から持っていた品種に関しては、積算温度を'06と'07で比較するとほぼ50℃以内の差でおさまり、その結果として的中率が高かったのは概ね満足でした。
・データがあったダイアナをハズレさせた理由は分析中です。

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上表は例として3品種のデータですが、じっくり見ていて気づいたのは、

・メルヘンの場合、2006年は44日954℃、2007年は44日956℃でした。結果的に日数でも温度でもどっちでも良く、再現性が取れたという結果でした。

・「秋剪定は1日遅れると開花が数日遅れる」と言われますが、メルヘン、ロージーのような(耐寒性という意味で)標準的な品種の場合、剪定1日遅れにつき開花1〜2日遅れでした。当然、積算温度も最初に切った株と最後に切った株では徐々に増えていくものの、それほど差がありません。

・しかし、注目すべきはジェミニで、4株を4日に分けて分散剪定し、ピッタリ命中しているにもかかわらず、開花中心日は16日、積算温度は161℃も差がありました。
この品種、耐寒性が低いと言われていますが、気温が低くなると極端に成長スピードが落ちることを示している結果だと思います。このような品種は、11月初旬に照準を合わせるか、10月下旬に照準を合わせるかによって、日数も積算温度も特に使い分けて考えなければならない品種かも知れません。

ということで、「日数で合わせやすい品種」と、「照準日の時期と積算温度を考えないと合わせにくい品種」があるんじゃないかと感じます。'08年に再現性が取れるか楽しみです。