ドルフィン航法
 ハングの巡航速度はおおむね45km/h程度でそのときに最良の滑空性能で飛ぶことができる。最良滑空速度と最小沈下速度が少々違うので(最小沈下速度は40km/hよりやや低速でこのとき最もゆっくり降下していく)、サーマルの条件次第で最良滑空速度で飛べばいいか最小沈下速度のほうがいいかが決まる。
 これがドルフィン航法の主な理論である。
サーマルがあれば最小沈下、なければ最良滑空、、と分けて飛ぶのもわずらわしいのでできるだけ上げて、サーマルのありそうなところを飛ぶというのが一般的だろうか。
直線上に配置
ハンググライダーのソアリング術
ピラミッドのサーマルポイント
 サーマルはいつ発生するのだろうか?どこで発生するのだろうか?作り出すことはできないだろうか?、、、フライヤーは常に迷っている。
 先の図で尾根が集まっている地点A,D,Eで特に風向きに対し風が集まりやすい地点A,Dでサーマルを待つというのは1つのパターンだろう。風、日射からサーマルを予測するのだ。
 それとピラミッド地形というのは気が集まりやすいという地点で要注意だ。集まるのはサーマルだけではない。危険な渦、竜巻のようなタービュランスも集まる。風下にサーマルを追ってセンタリングをかけるとノーズからアッパーを喰らい、翼端から引き落としをされて尻をまくって退散ということにもなるからだ。
 またピラミッドの頂点でまだ弱いサーマルがあったとき、このあたりの気流をかき乱すことでサーマルを作ることができる。
 サーマルは集まってくるのではない。エネルギーが発生し成長するものなのだ。だからハングの翼端後流でくるくる何回もかき回せばそのエネルギーだけでも今以上に上昇させられるのだ。
裏風飛行
 尾根の東にサーマルが出て、パラもハングも東側で飛んでいる。尾根の西には雲もなく、サーマルもない。
 ところが本流の風は西で、尾根には西風が当たっている。ということは西にはリッジの風があって飛べるところなのだ。
 しかも東にあるサーマルのかたまり、これが山より高い障害物になっていて、西風を押し上げる。リッジはサーマルの上にもあるのだ。
 東側で雲低につけたハングはそれ以上上げることができないが、西を飛んでいるハングは雲低より高いリッジに乗って上空へ這い上がることができる。
 西富士でよく目にする光景だ。
吹き降ろす風と回り込む風
 尾根に風が当たるとき、地形によって吹き降ろす風になったり、回り込む風になったりする。
 図は西富士の羊毛から毛無の地形だ。
 よくあるパターンでは下流の地表から1400mくらいまでは南風が吹き、稜線より上では西または南西が吹いている。

 山に風が当たったとき吹き降ろしがあるか回り込みがあるか、いろいろの表情がある。
青の三角
付近は吹き降ろしになって危険なところだ。西富士テイクオフ付近にもあってN村選手がパラシュートも開かずに落とされたというマムシ谷がある。

毛無のアゴ1500m地点から羊毛の鞍部1100mを越えようとする選手に出くわすのは回りこんだサーマルである。いつ落とされるかヒヤヒヤしているうちに、意外とすんなり通れてしまうが、ダメだと思うと反射板を回るにはアゲンストが強くて越えられないという方程式だ。

 この回り込みは山に当たる本流が強くて、山の陰に低圧部ができるために、周囲から風が入ってきて自然、上昇しているというものなのだ。場合によってはこの低圧部に本流がなだれこむことがあって、これは別の尾根などがブロックするために生じる現象なのだ。

 本流が10m/s以上吹いているようなときに、割とおだやかな回り込みサーマルを楽しむなんて芸当をリモコングライダーあたりがやってくれる。
 強風中を飛ぶとフォローでないと高速が出せないが、フォローで高速を出すとリモコンが届く範囲をすぐに超えてしまって音信不通になってしまうから、この回り込みサーマルの中でぶんぶん飛ばしてやると、200km/hを越えるデータがGPSに記録できるそうである。