四万十川ウルトラ 60kmの部・2003

1.前夜祭など
 四万十川マラソンに参加するために、岡山から高知県の中村ま で特急を乗り継いで4時間余り。時間的には東京へ行くのと変わ りません。ホテルのある中村には前日の夕方に到着しました。
  走るときにウエストポーチに入れて持っていこうと思い、使い捨 てカメラを買いました。さて、何枚ぐらい撮る余裕があるでしょう か。
商店街で前夜祭がありました。小学生のバンド演奏があったりし て、街の人たちの手作りの歓迎会という感じがよく出ていました。
 ホテルに戻り、夕食をとりながら100kmの部に出る人と話。横浜 から来たというその人は、昨年はサロマ100kmも完走したとのこ と。訊ねてみると、月に200kmは走っていますとのこと、やっぱりな あ。

2.スタートまで
 大会当日は5時に起床して朝食。
 マラソン・ツアーの朝食は100kmの部の人もいますから、午前3 時から食べられるようになっています。ホテルという名前ですがメ ニューは完全に和食で、朝はコーヒー党の私にはやや辛いものが ありました。

 6時半、中村駅前から大会の専用バスに乗って山を一つ越えた 40km先のスタート地点まで送ってもらいます。
 100kmの部の人たちはここも走っているのだなあ、と思うと、のん びりとバスで送ってもらう我が身が申し訳ないような気持ちになり ます。
 1時間余りかかり、四万十川のたもとの鯉のぼり公園に到着。よ く四万十川に沢山の鯉のぼりが渡されている写真を見ますが、こ こがその発祥の地だそうです。
 60kmの部の参加者は300人ほどでした。スポーツ用品のブース でも出ているかと思ったのですが、何もありません。やはり、この 大会のメインは100kmなんだよなあ。

 開会式では近隣の中学生の鳴子を使った踊りのセレモニーがあ りました。またその代表の女子学生の激励の言葉があったのです が、その初々しさに感激。隣の御婦人2人は感動の余りか、ハン カチを目に当てていました。 

3.20kmぐらいまで
 予定通りの10時スタート。鯉のぼり公園から四万十川の対岸に 橋を渡ると、100kmの部の人たちと合流します。
 この人たちはすでに40kmを走ってきたんだなあと思うと、もう尊 敬の念です(ゼッケンの色が違うので、どちらのコースに参加して いるのかが判るのです)。100kmの部は、スタートしてからすでに5 時間が経過しています。

 今回の60kmの制限時間は9時間半です。
 途中で何カ所かの関門もありますが、まず完走はいけるだろうと 思っていました。なにしろ、あの山道をよじ登るようなコースでの乗 鞍60kmを9時間40分で完走しましたから、それに比べれば今回は 少なくても車が走れる道ばかりのコースです。
 問題は、どれだけ楽しく走りきれるか、です。そして可能なら8時 間ぐらいでゴールしたいと思っていました。
 最後まで足を温存するための作戦はただ一つ、すなわち、登り 坂では歩いて良いことにする、なんという老獪な作戦でしょうか (笑)。

 5kmを35分で通過、後半のことを考えると少し早すぎます、もう少 しゆっくりでいいんだが・・・。しかし、このスピードでもどんどん抜 かれます。みんな早いなあ。 
 10kmを1時間11分で通過。そして、間もなくテレビで必ず登場す る沈下橋です。
 ここは橋の向こうまで行って引き返しますが、なんだか皆嬉しそ うな顔で渡っています。橋のたもとにいたスタッフの方に、使い捨 てカメラで写真を撮ってもらいました。

 沈下橋を過ぎて、このあたりから峠にさしかかります。
 ここでは始めからの予定どおり、登り坂では潔く歩きました。坂 を上りきり、下りになったら走ろうかと思っていたのですが、かなり の急坂です。調子に乗ってこれを普通に走ったらあとで膝に来そ うだなと思い、体重を後ろに残したままの小走りで下りました。要 するに、前足の膝をかばったわけですが、これが果たして効果が あったのかなかったのか、判りません。
 15kmが1時間52分、20kmが2時間32分と、歩きが入ったせいで この辺りでは5kmに40分余りがかかっています。でも、まあこんな ものでしょう。 

4.30kmぐらいまで
 22km地点で、これもTVでお馴染みの「カヌーの館」に着きます。
 100kmの部の人たちは予め着替えを預けたりしているところで す。その人たちはすでに62kmを走っているわけで、芝生で靴下を 履き替えたりしています。
 60kmの参加者は何もありませんから、素通りしてもよいのです が、まあ、有名な場所だし、ということで、おにぎりを一つ食べて約 10分休憩しました。

 やがて、小さな峠を越えます。峠の頂上辺りから眺める四万十 川の光景は素晴らしいものでした。緩やかに蛇行した川が、遠く の方まできらきらと光っているのです。
 峠を下り、もう一つの岩間沈下橋にさしかかります。ここは渡りき るだけですが、ここでもスタッフの方に写真を撮ってもらいました。
 このあたりでは、とにかく先が未だ長いのだからと、自分でも 淡々とした気持ちで走っていました。陽は翳ったりして、妙に寒か ったりします。

 やっと30km、これで半分です。
 時間は3時間55分。単純に倍にすると、完走タイムは8時間を切 りますが、まずは無理な話です。あっさりと予定を8時間半に下方 修正。無理をしないのが私の美点です(笑)。 

5.42kmまでは
 30kmを過ぎて、痛くはないのですが次第に足が重くなってきまし た。未だフル・マラソンの距離にならないのかよ、と、気分的にも若 干だれてきました。
 せっかく60kmの大会に来ているのですから、フル・マラソン以上 の距離を走らなくては意味がありません。ということで、とにかく 42kmまでは、そこまでたどり着いたら、いざとなれば後は歩いても いいからな、と自分を叱咤激励します。

 この大会では約20km毎におにぎりがおいてあります。あとは約 5km毎にバナナ、それに何故か缶詰の蜜柑があります。意外と缶 詰の汁が甘くて美味しかったですね。それに梅干しと塩が置いて ありましたが、私はいただきませんでした。
 いつものフル・マラソンの大会ではウエストポーチにエネルギー・ ゼリーを入れるのですが、今回はエイドの食料をあてにして、マー ブル・チョコレートと飴だけで走りました。
 カロリー補給はおにぎりとバナナで大丈夫でした。水分について は、水が2〜3km毎、スポーツドリンクが約5km毎と、まったく問題 はありませんでした。

 42kmを5時間37分で通過。さあ、いつものフルよりも1時間ゆっく り走ったことになりますが、これでどれだけ足が温存できているか です。
 時間をかけた割には足が重いような気がして、ちょっと予想より は後半は辛くなるかなと不安がよぎります。 
 
6.50kmあたり
 一番辛かったのは42kmを過ぎてから50kmにかけてでしょうか。 45kmのエイドでおにぎりを一つ食べます。
 45kmで5時間59分、50kmで6時間44分と、このあたりでは5kmに 45分かかっています。さすがにペースが落ちてきています。
 ところが、50kmを過ぎると、あと10kmしか残っていないという気 になって、少し元気が戻ってきました。乗鞍高原での60km走のと きは12kmのコース5周だったのですが、その最後の周回の時を思 い出していました。初めてフル・マラソン以上の距離を走り、最後 の周回をしているときは、なんだか名残惜しいような気持ちでし た。その時のことを思い出すと、ここまで来ればもうあとは走りき れると、気持ちが楽になりました。
 やはり、一度だけにせよ60kmの距離を走りきっているという思い 出は、精神的にはかなりの助けになりました。

 自動販売機があったので、ポケットに入れておいた小銭を取り 出して熱い缶コーヒーを飲みます。甘い飲み物が美味しく感じら れ、血糖も少し上がって元気が戻るような気がします。 
 
7.ゴールまで
 このあたりになると歩いている人が増え、走っていても遅い人が 多くなりました。
 私は足を温存していたせいか、なかなか良いんじゃないのという 感じで走ることが出来て、かなりの人を抜き始めました(でも、 100kmを走ってきた人を抜いてもぜんぜん威張れませんが・・・)。
 55kmが7時間24分と先刻よりはペースが戻って、この5kmは39 分で走っています。

 最後の山道にさしかかります。
 時間的にもこのあたりで急に暗くなってきて、足元の確認もおぼ つかなくなってきました。するとスタッフの方が発光スティックを渡 してくれました。また、山道の数百メートルおきに自家発電をまわ してライトをつけてくれています。
 大きな自分の影が前に伸び、すーっと後ろへ移動していきます。 スタッフの方々の支援に、本当に頭が下がりました。

 とっぷりと日の暮れた山道を駆け下り、のこり4kmぐらいからは 街並みに近づきます。
 応援の人たちが道のあちらこちらで明かりを持って声を掛けた り、拍手してくれます。特に小中学生ぐらいの子供たちが熱心に 声を掛けてくれます。
 私も可能な限り「ありがとう!」と叫んで手を振りながら走りまし た。
 ゴールが近づいてきているという実感で、ますます元気が出てき ます。 何人もの子供たちと次々とハイ・タッチをしながら走りまし た。

 まだこんなに走れるんだというぐらいの元気さで、自分でもびっく りするほどです。
 そして、ついにたどり着きました。中村高校のグランドには煌々と 照明がされ、大型スクリーンでゴールする走者を映しています。
 ゴール! 最後の5kmも39分で走り、時計は8時間3分でした。 

8.蛇足
 さて、と、走り終わって考えます、この足で100kmを走ることは可 能だろうか、と。
 誰かが言っていたように、走り終わって3日も経つと足の痛みも なくなり、辛かったことは忘れてしまっています。
 う〜む、牛糞の匂いがしているというサロマ100kmマラソンじゃな くて、海がきれいという宮古島100kmかな・・・。 



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