●2000年12月19日

「新しい歴史教科書をつくる会」による静岡県議会請願の強行採決に抗議する!
                             
                             抗 議 文
 静岡県議会様

 本日12月19日、静岡県議会は本会議において、「新しい歴史教科書をつくる会」県支部(以下「つ
くる会」が提出した「静岡県における小中学校教科書採択制度の改善についての請願」を、多くの反
対意見や慎重審議を求める県民の声を無視し強行採決した。
 歴史を正視しアジア諸国民衆との真の友好関係を築こうとする私たちは、満腔の怒りをもってこれ
に抗議するものである。
 この間、私たちが指摘してきたように、今回採決された「請願」には、次の二つの重大な問題が含
まれていた。
 一つは、教科書採択に関することがらである。
 「請願」は、「採択すべき教科書を事前にしぼり込むことがないように」とし、採択にあたって、学校
や現場教員の「調査書」提出という方法を排除し、教育委員会による採択を行うよう求めている。
 しかし、教科書の採択にあたっては、日々、生徒児童と接しながら授業に取り組んでいる現場の教
員たちが関与するのは当然のことであり、そのため政府文部省も「教科書採択にあたっては将来的
に学校単位の採択とし、そのためにも、教員がもっと教科書の共同研究ができるようにすること」等
を内容とする方針を閣議決定している(97年2月)、また本県の教育委員会も「現在の教科書採択
制度は公正に行われており問題はない」(00年12月15日「朝日新聞」と言明しているところであっ
た。しかるに、本請願の採決は、現場教師の影響を断つことによって教育行政権力が思うままに教
科書採択を行うことに道を開くものであり、今後「つくる会」は、行政権力にとり入って自分たちの「教
科書」を採択させようと働きかけることは明らかである。
 二つ目は、より本質的な問題である本請願の狙いと実態である。
 「つくる会」は周知の通り、歴史を正視しようとする動きに罵倒をあびせ、「現行」の教科書ですら
「自虐的」と非難し、わが国の犯したアジアへの侵略戦争の犯罪事実を隠し歪めることに汲々として
きた。この団体が編集した「中学校歴史教科書」(扶桑社)には、「韓国併合は合法的だった」「戦争
に善悪はつけられない」「大東亜戦争はアジアの人々に夢と勇気を育んだ」「核兵器廃絶は絶対の
正義か」等々の記述があり、この間、韓国や中国をはじめアジア諸国から轟轟たる非難が寄せられ
ていることは周知の事実であった。この「教科書」が現在、文部省に提出され検定を受けているので
あるが、その史実のあまりの不正確さと偏向ぶりのため、学校現場ではおそらくほとんど見向きもさ
れないであろうことに危機感を持った「つくる会」は、今回、自民党の議員を使って本請願と同様の
動きを全国の府県議会におこなってきているのである。したがって、本請願が「つくる会編集・新しい
教科書」の全国キャンペーンの一環として行われていることは明々白々であった。

 しかしながら、静岡県議会は、こうした私たちの真実の訴えを無視し、本会議でこれを採決した。
 それは、「つくる会編集・新しい教科書」の採択へ向け手を貸したことであり、次代を担う青少年に
不正確な史実と偏向に満ちた歴史観を植え付ける「教科書」採択に道をひらくことにもつながった。
 また同時に、本県が韓国、中国などと結んでいる幾多の友好関係に表される国際化の時代潮流
に逆行するものでもあり、到底容認できるものではない。
 われわれは、ここに強い抗議の意志を表明するものである。

                                2000年12月19日
                                平和と人権のための市民行動(代表・池田一)
                                映画「侵略」上映委員会(代表・森正孝)
                                静岡靖国問題連絡協議会(代表代行・中川弘)
                                NO!AWACSの会(世話人・竹内康人)