自分が何を求めているのか分からなくなる。
自我を失う。
言葉がぽろぽろと零れ落ちる。






不安はいつものこと。
ぐらぐらと崩れる自信はもとからないもの。
言葉が溢れ出してこぼれて形を亡くす
それもたいしたことじゃない。






不安に埋もれてあるく。
いきているということ
ためいきをついたさきに
歩みをとめて自分をふりむく。






私を構成するもの。
想い。
そんなものはもとからないと、
あきらめれば区切りがつく。
ゆっくりと積み上げる。
繰り返す。
経験や慣れ。
私がつくられる。





自明性は欠如している。
すべてが疑問の中にある。
繰り返す問いかけに、
答えようともがくなかに、
形を確かめる。
あがいた手の先に、
自分の世界を構築する。
ひっかいたかけらが、
積み重なって世界を作る。






私はない。
私は私。
私の要素はとうにきえている。
そんなものはもとからない。
私が生きる意味もない。
生きてきたという事実も疑わしく、
これから先は見えない。






あるべきみちはない。
あるべきかたちもない。
あるくべきみちも、
すすむべきかたちも、
そんなものはない。
いらない。
わたしは。










ただ私はゆっくりとあるき、
そこには道があり、
かたちもある。
あるくべきみちはいらない。
つくるべきかたちもいらない。
みちもあり、かたちもある。
そのほかにいるものはない。







言葉が溢れおち、
私のなかで暴れる。
出口をさがす。
それがわかる。
指先が動く。
キーが思考する。
私の思考はすべてここにあり、
私の人格は言葉のなかにある。





歩みをすすめる。
脚が動く。
わたしはどこにいるのかと、
わたしはなにが欲しいのかと、
といかける言葉はことば。
みずからに問いかける、
それが言葉をもってなされる。
私は言葉のなかにある。





私の世界を積み上げる言葉が、
私の中からあふれ出る。
言葉にならない不確かな不安が、
確かな重みを持ってのしかかる。
私がつかめない私が、
私の枷になる。
私をこわす。
それもまあ、いつものこと。






失うもの、
失われたもの、
失うこと、
失えばいい。
のこるもの、
いらないもの、
たしかなもの、
あやふやなもの、
どこか。







私の言葉。




言葉の私。





つらつらとおもむくままに指にまかせれば、
一日中キーを叩くだろう指先。
ペンを走らせるだろう手。
言葉を紡がずにいられないアタマと、
ときにはすべてを拒否する神経。
しゃべりだすかしましい唇。
苦笑する眼。
私の要素。
そんな不確かな。







曖昧、ということばに甘える。
不安定を許す自分がいとおしい。
そんなふざけた想いを、
想いすら確かにならず、
笑う自分も見えはしない。







誰に聞かせるともなくことばをつぶやく。
私に話しかける。
私の思考はことばによってしかなされない。
それをしってる。






意識がつたってこぼれおちる。
呼ばれて振り向く。
笑う。
肩を叩く。
声をかける。
私を取り戻す。
ことば。