温暖化で国が沈んでしまう(読売新聞01年12月3日) | |
太平洋のハワイとオーストラリアの間に浮かぶ島「ツバル」が、せりあがる海面との戦いに破れ、国を放棄することを決めた。しかし、12,000人の島民をオーストラリアもニュージーランドもまだ受け入れてくれない。 地球の海面は20世紀の間に20〜30センチも上昇した。今世紀中にあと1メートルも上昇するらしい。理由の多くは、化石燃料の燃焼による大気中の二酸化炭素濃度の上昇にあり、これが気候変動をもたらし、氷河の溶解と海洋の温水域を拡大した。熱帯と亜熱帯での海面温度の上昇は、大きなエネルギーを大気中に放散し、暴風雨をもたらす。不幸はこの島だけに限らない。 1987年にモルデイブの大統領は、国連総会で、モルデイブを構成する1,196の小島のほとんどは海面2メートルそこそこで、海面が1メートルせりあがっただけで、人口31万人のこの国は絶滅に瀕すると演説した。 今世紀末には、この国は消滅する計算になる。 バングラデッシュは地球で最も人口過密な国のひとつで、人口1億3千万だが、海面が1メートル上昇すれば、この国の水田地帯の半分が冠水する、と世界銀行が発表した。 海面が1メートル上昇すれば、上海の3分の1以上が水につかる。 被害は貧乏な国だけに限らない。海面が1メートル上昇すれば、海岸は世界的に1,500メートル後退することになるらしい。 京都議定書で「ならず者国家」と呼ばれたアメリカでも、1万エーカー(4,047ヘクタール…1ヘクタールは100・×100・)の土地を失う。 ニューヨーク・マンハッタンの低地部と首都ワシントンの緑地帯の「キャピトル・モール」は、50年に一度の規模の暴風雨による高波で海水をかぶることになる。 私は、01年8月の原稿でアメリカの温暖化に対する無節操さ(を許す日本政府)を批判したことがあるが、広いアメリカにとって、少々の土地が水没したって大したことはないのだろうか、また、50年に一度の高波などは、ケセラセラなのかどうか。 しかし、そうも言っていられないほど、事が深刻であることに、いかに勝手なアメリカでももうそろそろ気がついてほしいものだ。 ツバルの高官は、語った。 「京都議定書の批准を拒否することによって、アメリカは、ツバルの未来の世代から、われわれの祖先が何千年間も暮らしてきた場所に住む自由を、事実上奪ってしまった!」 <ツバル国の参考データ> ○ツバル(Tuvalu)は、パプア・ニューギニアの東3,000kmニュージランドの北3,000kmに位置する南太平洋上の諸島群からなる国で、1978年にイギリスから独立した島国です。 ○国の名前の由来 TU=立ちあがる+VALU=8 8つの島が協力して国を作っていこうという、建国事の意志を名前にしています。実際には9つの島がありますが、建国当時9番目の島(NIULAKITA)が無人島だったので「8つの島」となっています。 国旗には9つの島が☆印でデザインされています。 ○首都:フナフチ島 |