<状況>
酸性雨は大気汚染問題として深刻な国内的環境問題であるとともに、硫黄酸化物や窒素酸化物などの原因物質が排出源から数千キロも離れた地域に運ばれる越境汚染などから、その解決のためには国際的な協力が不可欠である重大な地球環境問題の一つとなっています。

 

<具体的な被害>

酸性雨による被害は、ヨーロッパや北米など先進工業国周辺で深刻な状況が報告されています。また、中国などでも大きな影響がみられるようになってきています。酸性雨によって、森林の衰退、湖沼や河川等の酸性化とそれによる生態系への影響、歴史的な遺跡や建造物などへの影響などが報告されています。

 

死の湖

湖に魚が住めなくなる!!
酸性雨の被害をうけた湖の中には、1匹の魚も住んでいない「死の湖」がたくさんあります。たとえば、スウェ−デンでは8万5000の湖沼のうち、2万1500の湖沼が酸性雨の被害をうけていて、そのうちの4500の湖沼では、すでに魚が姿を消してしまいました。 また、ノルウェーでは、ある南部の地方の80%の湖沼が危機的な状況にあり、カナダでは4000もの湖が、死に絶えたと報告されています。

 

木や土をダメにする酸性雨

酸性雨を浴びた森の木は、木のてっぺんや、枝の先の方から葉が落ちていって、枯れていきます。木だけでなく、土もやられます。土がダメになると、そこに生えている植物は、気象の変化や、病気にたえる力が弱くなります。
最近の報告によると、イギリスでは全国の森林のうち67%が酸性雨の被害をうけています。また旧西ドイツでは52%、オランダ(降ってくる硫黄酸化物の内80%が外国産)では55%が被害をうけています。
カナダのケベック州では、シロップを採るカエデの木の90%が枯れたとか、中国の西南地方では、モミやマツの木が大量 に枯れたなどという報告が、次々にはいっています。

 

建造物の溶解

石が溶ける!?
ギリシアでは、酸性雨の影響でパルテノン大神殿などにある大理石で作られた神や人の顔が段々溶けて、のっぺらぼうになりつつあります。その他にもドイツでは、1248年から、約630年の歳月をかけて作られたケルン大聖堂が、大気汚染のために、かつての白い荘厳な姿を失って、真っ黒に汚れてしまっています。また、ポーランドのクラクフでは、大聖堂の屋根が腐食しています。 また、世界でもっとも美しい建造物の一つと言われるインドのタージマハルも、酸性雨を浴びて、大理石の色が変わってきています。

 

酸性のスモッグ

スモッグの雲
かつては多くの都市の空をみるからに汚れたスモッグがすっぽりと覆いかぶさっていました。その後、様々な規制が行われたので、今では一目でそれと分かるようなひどいスモッグは減りました。
しかし、硫黄酸化物のような目に見えない有毒ガスが、空気中の水分とくっつくと、見た目には汚れていなくても危険なスモッグとなることがあります。
また、自動車の排気ガスも、スモッグを引き起こします。排気ガスに含まれる窒素酸化物や炭化水素に太陽光線があたると、光化学スモッグと呼ばれるスモッグが発生します。光化学スモッグにはオゾンや肺や目を刺激する硝酸ぺルオキシアセチルという化学物質などが含まれていて、有毒です。

 

人間への影響

酸性スモッグや、大気粉塵を吸い込むとこきゅうが苦しくなります。オゾンも目やのどを刺激し、せきや呼吸困難を引き起こします。
また、大気粉塵には、発ガン性物質が含まれています。ディーゼル車は吐き出す、黒い煤のような排気ガスの中には、発ガン性物質が含まれていることが知られています。 酸性雨は土の中のアルミニウムを水道水に溶かし混ぜこむ流れがあります、老人のぼけ症状の中には、アルミニウムが原因だろうといわれていることあり、人体への影響が心配です。

 

日本における酸性雨

環境庁では、昭和58年度から酸性雨の実態調査や土壌、森林への影響調査を実施しています。これまでのところ、うちの国では、酸性雨によるはっきりとした影響は認められていませんが、酸性雨による長期的な影響は不明な点も多いので、継続的な調査が必要です。

現在の全国の 雨の平均、phは、5,54となっています。しかし、関東でもpH3の酢なみの雨が降ります。