人為起源の物質のなかで、最近注目を集めているのが、その成分が生物に蓄積されることにより、生体のホルモン異常を引き起こす危険性のある物質、いわゆる「環境ホルモン」です。環境ホルモンという物質は水銀などの有害物質に比べて、人間に対する直接的な毒性がはっきり認められないこともあって、その危険性が明らかになるまで時間がかかります。しかし、生態系への影響は甚大になる可能性があります。
環境ホルモンといわれる物質は、水銀などの有害物質などにくらべ、人間に対する直接的な毒性がはっきり認められないこともあって、その危険性が明らかになるまで時間がかかります。にもかかわらず、生態系への影響は甚大になる可能性をはらんでいるのです。今後もっとも深刻な海洋汚染の一つとしてとらえられるべきでしょう。また、ダイオキシン、PCB、コプラナーPCBなどの物質は、「環境ホルモン」の働きを持つことが明らかになっています。最近、南極のペンギンからもDDTが検出されました。
海洋に投棄される人工物のなかで目を引くものに、プラスチックがあります。人間の生活には発砲スチロールを始め、実にさまざまなプラスチックが用いられており、海岸で見かける海洋漂着ゴミの中でも特に多いものです。
プラスチックそのものの毒性はほとんど報告されていませんが、やっかいなのは、プラスチックが、分解されずに反永久的に残る物質であるという点です。実際、海鳥やウミガメなどの海洋生物が、それらを飲み込んで障害を起こしてしまったり、漂着ゴミに絡み付かれるという深刻なケースも報告されています。
日本近海にイボニシという海産巻貝の一種がいます。このイボニシは1960年から1990年まで使用されていた有機スズ化合物が原因で、雌にインポセックス個体という産卵異常が現れています。雌に雄のような生殖器が形成され、正常な交尾ができない状態になってしまいます。この有機スズ化合物の汚染は1970年代にはすでに問題視されていたにも関わらず、1990年に禁止されるまで使われ続けました。
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