久しぶりの大島

冬の間、大島に袖を通すことは滅多にない。
生糸の平織りが吸い込んだ冬の冷気が、凍ったかのように肌を刺す。
気温が上昇し、花粉で鼻がむずむずする頃、
大島のひんやり感を心地よく感じだすその瞬間、
私は春の訪れを実感する。



泥大島というと雨の日のお助けきもののイメージが強くなってしまった。
湿気には比較的強いことと、
泥で染めたのだから汚れも目立つまい、といった発想からだ。
数え切れないほどの雨の日を一緒に過ごした後、
私はこの大島を生洗いに出した。
戻ってきた大島を見て、驚いた。
長年の間、雨の日にのみ着ていたこの大島が、いかに汚れていたことか。
やはり、黒いなりにも汚れていたのだ。
畳紙の中に鎮座し、黒光りする美しい大島を見た時、
私は「晴れた時に着るからね」と約束した。



赤みを含んだ黒が艶々と美しい、泥染めの大島。
織り込まれた小さな水玉状の絣が密度違いで三等分。
すべすべとした質感の大島には、
ざっくりとした洛風林の八寸帯を合わせるのが好き。


はっきり言って泥大島は「地味」だ。
だからといって気弱になることもなく、地味ついでに徹底的に色味を排除。




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