アジアが好き!
207 Allepy

結婚式でごはんをいただき女学校では不審者にされる

■アレッピーはバックウオターの中心地

クイロンからの定期船は18:30にアレッピーの船着き場に到着した。荷物をもって下船し,リキシャーに連れて行かれたのは街の中心部から少し離れた「Tharayil Home」,シングルで200Rp,部屋は清潔でベッドには蚊帳がつってある。ここはゲストハウスというよりは,家族経営の民宿に近い。食事も2階のテラスで気兼ねなくとることができる。

アレッピーはバックウオターの中心地とガイドブックに紹介されている。しかし,バックウオターを除くとこれといった観光資源がなく,観光客がたくさん集まるような所ではない。船着き場の周辺が一番にぎやかで,中心地から少し離れると田舎になってしまう。個人的には都会よりこのような町が好きだ。

アレッピーの目抜き通り 船着き場 少し離れると田舎のたたずまい

■立派なヒンドゥー寺院を見つける

小さな町にも立派な塔門(ゴープラム)を備えたヒンドゥー寺院がある。大きな寺院では細かい説明ができないので,この寺院を題材に南インドのヒンドゥー寺院の説明をする。切石を積み上げていく南インド(ドラヴィダ様式)のヒンドゥー寺院の原型は8世紀にカンチープラムのパッラヴァ王朝の時代に確立した。その後,14世紀になると巨大な塔門をもつ姿に変わっていった。巨大な塔門は町のどこからでも眺めることができ,かつ荘厳な印象を与え,人々の信仰心を引きつけていったことだろう。

塔門には数え切れないほどのヒンドゥーの神々の像が刻まれ,極彩色に彩色されている。それに加え,寺院の内部に一つもしくは複数の神殿をもち,主神や関連する神々を祭っている。塔門を飾り,陽光のもとで手の届かない所から人々を見下ろす外の神々と,薄暗い神殿の内部に置かれ,人々が触れることのできる神々は,宗教の高みと,現世利益の二面性を解決する手段だったのかもしれない。

塔門(ゴープラム) 寺院入り口の飾り扉 塔門を飾る神々

■ヒンドゥーの寺院で結婚式を見学し,お祝いのごはんをふるまわれる

前出のヒンドゥー寺院ではちょうど結婚披露宴が執り行われていた。中庭に通じる木戸を通って人々が出入りしていたので,自分も中に入ってみた。寺院の周囲を楽隊が鳴り物入りで回っている。インドの結婚式はにぎやかでかつオープンである。

しばらく子どもたちと一緒に事の成り行きを眺めていると,少し年輩の男性がやってきて,自分を新郎・新婦に引き合わせてくれた。2人にお祝いの言葉を述べ写真をとろうとすると,年輩の男性も一緒に入ることになった。それでようやく彼が新郎のお父さんであろうと見当をつけた。彼に案内されお祝いのごはんをごちそうになった。

この会場でインドのタブーを一つ犯してしまった。子どもたちに続いて,来賓の女性のグループの写真を撮ったところ,「皆さんの許しを得てからにしなさい」と注意を受けた。インドの文化や考え方についてある程度理解していると自負していたので,自分のうかつさを恥じた。

新郎・新婦と新郎の父親 にぎやかな楽隊 この写真で注意された

■朝の散歩ですてきな笑顔につられてフィルムを使ってしまった

朝の散歩の途中で大勢の子どもたちが学校に向かっていた。正面からカメラを向けると,そのままこちらに歩いてくるので写真が難しい。一組の写真をとるとたくさん寄ってきて,すてきな笑顔につられてフィルムを使ってしまった。写真に対する拒否反応はほとんどない。

この地域でも子どもたちは制服姿で,男子は白シャツと紺の半ズボン,女子は白シャツと青のスカートである。タミール・ナドゥ州では,小学生でも高学年は足を隠すパンジャビー・ドレスになるので,ケーララ州は,その意味では進んでいるのかもしれない。

彼らと一緒に歩いて行くと学校に着いた。学校の敷地内には入れなかったので,教室の横の窓格子越しに内部を撮らせてもらう。すると,男子生徒が集まってきてちょっとした騒ぎになってしまった。こうやって写真を見ていると女生徒にカチューシャが流行っていることが分かる。

通学風景 教室の内部 男子生徒が集まってくる

■私立の女学校の昼食風景を撮っていて不審者として咎められる

昼食時に町中を歩いていると女学校をあった。中庭では生徒たちが手に食器をもって並んでいる。入り口には守衛がおり中には入れなかったが,面白い素材なので写真に収めるとこっちを向いて笑顔を見せてくれた。生徒たちの制服は白のシャツにオレンジ色のスカートの組み合わせであった。

翌日,同じ時間にもう一度のぞいて見ると,生徒たちの服装が一変していた。生徒たちは色とりどりの私服姿で,昨日と同じように食器を持って列を作っている。制服の日と私服の日があるのか。それとも日によって通ってくる生徒が異なるのであろう。

そのようなことを考えながらシャッターを押していると,先生らしき人がこちらにやってきて「何か用事でもあるのですか」と詰問された。私は「日本人の観光客で写真が趣味なんです」と答えると不審者ではないと分かったのか戻って行った。考えてみれば,日本で校門の横で写真を撮っていれば不審者にされてしまう。おさわがせしました。

第1日目の昼食時 第2日目の昼食時 モデルに志願した子どもたち

■海岸には漁師の,田園地帯には農民の生活がある

アレッピーの海を見るため,リクシャーのお兄さんに海の方に行ってもらった。少し赤みをおびた砂と青い海が南国の太陽のもとにどこまでも続いている。漁師の2人連れが網を持って歩いている。そのうち海岸を浸食から守るため大きな岩を積み上げたところに出た。インドではこのようなところを歩くのに注意が必要だ。岩の間に身を隠してトイレを済ませる人が多いからだ。岩の向こうには漁師の集落がある。家の前では2人の老人が座っている。この浜で生まれ,働き,子どもを育て,この浜で死んでいく。周囲の景色も集落もほとんど変化せず,ただ時間だけが過ぎていく生活がここにある。

アレッピーに戻り,町外れを散策していると,巾20mほどの水路に渡し船があった。ルンギ姿の船頭が竹竿を使って対岸と行き来している。向こう側に渡ると田園地帯と小さな集落が点在していた。ちょうど播種の時期にあたり,農民たちは発芽した種子を袋に詰め,水を張った田んぼに直に蒔いていた。周辺には驚くほどたくさんの白サギが集まり,田んぼの何かをつついている。もしかしてとも考えたが,農民は鳥を追い払うことがないので,白サギは水性昆虫や小動物を探していると思われる。

アレッピーの海岸 発芽した籾を袋に詰める 田んぼで適当に蒔く
通貨価値 1$=120\ 1Rp=2.5\