3月21日


    ホテルのレストランで朝食をとってから、荷物をまとめてチェックアウトした。今日はローズガーデンに行こうということになり荷物をフロントに預けて出かけることにした。ローズガーデンまでは緑色のボロボロの私営バス40番にのり、南ターミナルから長距離バスで行くことにした。しかし南ターミナルからローズガーデンまでのバスを探しても、バスはいっこうに見つからなくてターミナルの係の人に聞いてみたら、バスなんかないからタクシーで行った方がいいよ、と言われ「おかしいな、ここは何処なんだろ?」と思いながらもタクシーに乗ることにした。

   走り出して15分くらいしたら、知らないはずの場所なのになんか見覚えのある通りに出て、さらに混乱してきた。「あれ民主記念塔がある。ここはカオサンの近くでは?」と思いタクシーを止めて降りてみると、やはりここはカオサン近くの通りであった。せっかく最後の日を楽しもうとしたのにこんな痛い失敗をするとは・・。タクシーから降りた僕は膝からガクっと崩れさってしまった。彼女の前で失態を露呈してしまった僕は、しばらく事態を受け止められないほど呆然としてしまって、近くにあった椅子に座ってどうしようとひたすら悩んでいた。

    とりあえず、座り込んでいても仕方ないので、カオサン裏のいつも行く屋台にいって御飯を食べることにした。この辺で面白いとこと言えばシーウィー(解剖博物館)かな?と思い、とりあえず船乗場に行くことにした。2年ぶりに行くシーウィーはきれいになっていて、展示物はきちんとショーケースに並べられていた。しかし面白いとはいっても、「あはは、見てこれ、おっかしー」と呑気に笑えるものでなく、並べられているものは切り刻まれた体や、奇形児のホルマリン漬け、事故死した死体の生写真など、どれも容赦ないほどグロテスクなものばかりで2人ともへこんでシーウィーを後にすることになった。

    シーウィーからひとつ先の船乗場まで歩くことにした。しかしあまりの暑さに僕はまたまた太陽にやられてしまった。気分が悪くなり、途中で座り込んでしまった。大丈夫?と彼女に心配されてしまう始末。あぁ、情けない。結局、行き場と体力を失った僕達はルンピニー公園に行くことにした。バスに揺られ1時間、静かな公園に到着。公園の中央にある池のベンチに腰掛けて1時間ほど昼寝をすることにした。充電を完了した僕達は公園内をプラプラ歩き、公園の北側を抜けて歩いてサヤームに行くことにした。歩いていくと結構な距離があった。

    サヤームにある大丸に冷やかしに行ったり、ワールドトレードセンターに行ってお土産を買ったりした。そして今回はじめて、新しくバンコックにお目見えしたスカイトレインに乗ることが出来た。一駅だけであっという間だったが、渋滞知らずで冷房も効いている実に快適な車内だった。お腹も空いてきたのでサヤームセンター前にあるコカ(タイスキレストラン)に行き、晩御飯を食べることにした。汗をかきながらだったけど、めちゃめちゃおいしかった。タイスキはサイコーなので皆さんもタイにいかれたら是非とも食べてみてください。

    お腹もいっぱいになって「さぁーホテルに帰ろうか」と思ったんだけど、自分達の服が汗臭いのに気が付いた。飛行機に乗るのにこの格好はまずいとおもい、着替えたかったんだけど「後は帰るだけだから」と変えの服も洗濯してなかったので、仕方なく服を買おうかということになった。しかし、手元にお金もそんなに残ってなくて、選んでは見たものの結局買わずにホテルに戻ることにした。

    ホテルに荷物をとりに帰り、ホワランポーンに向かった。しかしこんな平和な駅で飛んだハプニングに出会ってしまった。僕達が乗ろうとしていた列車の発車時刻は10時なのであったが、10時になっても僕達の乗る列車はおろか、どのホームに列車が全く入ってこなかったのだ。ここはタイだし遅れることはあまり気にしてなかったのだが、徐々にホームには人が溢れ出してきた。10時20分ようやく列車が入線してきた。ホワランポーンからドンムワンまでは1時間。僕達の乗る飛行機が午前1時半だから、空港には11時半には着きたかった。列車に乗り込み発車を待つのだが、列車は10時50分を過ぎても全く動き出す様子を見せなかった。最初は大丈夫だと余裕で構えていたのだが、だんだん不安になってきた。そんなときに追い打ちをかけるかのように突如、駅で暴動が発生したのである。大声で人が叫んでいたので、泥棒かなと思ってたら事態はもっと重大だったらしく銃を抜いた警官が出てきて、駅は一気に緊迫した空気が走った。「あぁ、誰か死ぬのか?」と本当に思った。彼女も「怖いよ」と言い出し、いつ動き出すか分からない列車を降りて、緊張に包まれた駅から逃げ出すことにした。

    駅前に止まっていたタクシーに乗り込み、「空港までとにかく急いでくれ!」と運ちゃん言った。この時、時刻は既に11時5分。どうなるのか?と思っていたが、タクシーの運ちゃんは本当に忠実だった。というか、ただのスピード狂だった。高速に乗ったとたん一気に140キロまでスピードを上げてくれた。「いやそんなに急がなくてもいいから・・」といっても向こうは知らん振りして、160キロまでスピードを上げてくれた。パトカーまで追い抜きやがった。怖かった。「これならいっそ暴動に巻き込まれた方が良かった」と思うほど、もうそれはそれは怖い物だった。そして空港には11時半ジャストに到着した。所要時間25分。これは恐らく史上初の空前絶後の大記録だと思う。

    大韓航空のカウンターに行っても、まだ僕達の乗る便のチェックインは始まっていなかった。とりあえず、バーガーキングに行ってテキトーに時間を潰した。で、トイレに行ってサンダルから靴に履き替え、Tシャツを着替えて、歯を磨き、顔を洗いさっぱりして、再びカウンターに行きチェックインをした。出国審査を済ませ、duty freeに行きドリアン羊羹というヤバソウな代物をお土産代わりに買うことにした。彼女はフルーツショップに売ってたココナツジュースをまたまた嬉しそうな顔して飲んでいた。本当にココナツが気に入ったようである。

    1時半、飛行機は一路ソウルに向かってテイクオフ。機内では結構寝ることが出来た。寝ぼけていたところをキャビンクルーに起こされ、「朝食でごじゃいまーす。」と言われ、オムレツを選んだのだがそれがキョウレツ(レツ繋がり)に不味かった。8時45分ソウル着。10時20分、大阪に向けテイクオフ。3月22日、12時過ぎ、無事関西国際空港に到着。「さて、降りようか」と頭上のハットケースを開けると、ドリアンのモワンとした匂いが機内に立ち込めた。「俺じゃないよ、俺じゃ」とあくまで他人のせいにして機内を離れた。皆さんに大迷惑をおかけしたことを今、お詫びしたい。空港には僕のオカンが迎えに来てくれていて、3人で仲良く家まで帰りました。久しぶりに吸った日本の空気はなんだか無機質な感じがしました。おうちに帰るまでが旅行とは言っても、一旦空港を離れるともうここは日本なんだぁ。と寂しさを感じました。

                        終わり