シャープ パソコンテレビX1c


初めて買ったパソコンで、当時はまだフロッピーディスクドライブが高価で、外部記憶装置はデータレコーダー(カセットテープ)しか付いていないモデルだった。
 

(1)主なスペック

・CPU Z80A 4Mhz(ザイログのセカンドソースのもの)
・RAM 64KB   G-RAM 48KB(増設不可)
・グラフィック画面 最大640×200×8色
・テキスト画面 80×25 PCG機能あり
・音源 PSG(当時としては標準的な音源、FM音源ではない)
・入出力インターフェイス セントロニクスパラレル、ジョイスティック(たしかシリアルはオプションだったように思う、当然SCSIとかIDEとかはない)
・キーボードは標準的なアスキー準拠だったと思うが、キータッチは特によいとは思えないものだった。
 

(2)当時のライバル機種とそれらと比べた特徴

・NECのPC-8801mk2(以下「88」)
・富士通のFM-7(以下「FM7」
 

X1の長所

 CPUのクロックは88と同じ4Mhzだが、88は実際にはその半分程度しか出ていなかったので、CPUは高速な方だった。
 メモリは他の機種と同じだが最大の特徴はPCG(プログラマブルキャラクタージェネレータ)にある。現在のパソコンは描画能力が高いためこのようなものは必要ないがZ80Aでは、ビットマップに文字を表示するだけで大きな負担となっていた。そこで、文字表示専用のキャラクター画面というものをグラフィック画面とは別に用意し、文字はもっぱらその画面に表示するようにしていた。これはアスキーコードをキャラクター画面のメモリに書き込めばハードウエアで、その文字を表示するもので、グラフィック画面に表示するよりも高速に表示できた。しかし、あらかじめ用意されたアスキーコード以外の表示や大きさを変えた表示はできないという欠点があった。X1の88にない特徴としてこのキャラクター画面に表示できる文字を自由に定義でき、かつカラー(ドット単位8色、88は文字単位)で表示できる機能があった。これはファミコンなどにあるスプライト機能に似た使い方ができる(8ドット単位でしか動かせないが)ため、ゲームを作るのに大変役に立つ機能だった。画面上で動くキャラクターをPCGで定義すれば、グラフィック画面に表示するより遙かに高速に動かすことができた。また、キャラクター画面とグラフィック画面は重ね合わせることができ、かつどちらの画面を前に表示するかも指定することができた。これにより、サンダーフォースといった背景が高速にスクロールするゲームを作ることができた(88やFM7では遅くてゲームにならなかった)。また、ゼビウスでは背景にPCGを使い(そのため背景のスクロールはカタカタとした滑らかなものではないが)当時のパソコンに移植されたものの中ではもっとも優れたものになっていた。
 X1はグラフィック画面のメモリ配置に特徴があった。I/O空間にグラフィックメモリを配置するというもので、これはZ80が通常のアドレスとは別にI/Oアドレスを持つ特徴を使ったもので、88などがメモリをバンク切り替えという手法でアクセスしていたのと比べ64KBのメモリのどこからでもアクセスできるという利点があるが、通常のアドレスよりI/Oアドレスはアクセスに時間がかかるという欠点があった。
 X1の外部記憶装置としてはオプションでフロッピーディスクドライブが用意されていたが、X1cのように拡張スロットがない機種の場合、まず拡張ボックスをつける必要があるなど、X1turboが出るまではFDDの使用がしにくい機種だった。また、FDDはまだ高価でゲームソフトもカセットテープで売られていた。このカセットテープドライブともいうべきデータレコーダーにX1は特徴があった。まず、速度が速かった。他機種が1200bpsなのに対して、2700bpsを誇っていた。また、オーディオの世界では当たり前の頭出しができた。つまり、2つ以上のプログラムを記録しても他機種では最初から読んでいくなど2つ目のプログラムの先頭へ早送りすることができなかったのに対してそれができた。ゲームソフトの中にはこの機能を駆使して、他機種ではFD版でないとできない大きなソフトをX1ではカセットテープで実現できていた。(ザナドゥ、ゼビウスなど、つまりこれらのソフト以外はオンメモリで動くのが当たり前だった)また、DOS(ディスクオペレーティングシステム)に対してTOS(テープオペレーティングシステム)などといったものまで作られていた。しかし、FDの速度とアクセス速度の速さに敵うはずもなく他機種のソフトが次々にFD版に移行していったのに対してX1はそれが遅れることになる。

X1の短所

 ハードウエアでは他機種に負けていないと思うが、シェアでは88に負けていた。これはソフトの少なさに直結している。
 音源が長いことPSGしかなかった。他機種がモデルチェンジに伴いFM音源を搭載してきても、オプションでしかなかった時代が長かった。オプションではゲームソフトで使用してくれないため、ゲームの臨場感に大きな差があった。
 キーボードがFM-7のようにキーを離したことが検出できないということはなかったが、2つ以上のキーを同時に検出できないという欠点があった。これはアクションゲームなどで、弾を打ちながら移動できないということを意味する。この欠点を克服するためにいろいろ工夫をしていたと思うが、他機種と異なりジョイスティックを使うということができたためFM-7ほど致命的な欠点とはならなかったように思う。(ゼビウスにはジョイスティックを同梱したパッケージも売られていた。)
 パソコンテレビという名前はパソコンの画面とテレビの画面を重ね合わせることができるスーパーインポーズ機能を搭載していることから来ていると思うが、これを生かすことができなかった。ただ、X1用のディスプレイはビデオ入力があったのでファミコン専用のテレビとして長く使っていました。
 上位機種としてX1turboが出たが、グラフィック周りの機能アップが少なかったためPC-8801mk2SRに負けることになる(重ね合わせを高速に行う仕組みがSRにはあった、これでPCGのない部分を補っていた)。当時は8ビットパソコンをビジネスに使うということが少なかったこともあると思う(漢字の取り扱いに関しては8ビットパソコンでは1番だと思う、高校の英語の先生がこの機種を買って職員室で使っていた。当時は個人でパソコンを買いそれを仕事に使うことは大変珍しかった、趣味で使うものだった)。
 

PC-8801mk2の長所

 なんといってもシェア1位で、ソフトウエアが豊富にあることであろう。
 最初のPC-8801はハードウエアでは多くの欠点があったが、モデルチェンジの度にそれを克服し、シェアを奪われずにすんだ。また、その新しく付け加えられた機能を使ったゲームソフト(テグザーなど)が登場するなどしてきた。
 これは長所ではないかもしれないが、FDDを内蔵できたこともあり、他機種より早くFDに移行しFD版でないと実現できないゲームソフトを多く出すことができた。当時画面を描くためにはラインを引いた後、ペイントするという方法が採られていた(そのため1枚描くのにえらく時間がかかっていた、基本的にオンメモリで処理するにはそうするしかなかった)。それに対しFDがあれば、あらかじめ描いておいた画面を圧縮してFDに格納しておき、それを表示するという方法が採れるようになった。今では当たり前のことだが、カチャン、カチャンとFDDから音がすると画面に綺麗なグラフィックが現れる様に当時は驚いたものだった。

PC-8801mk2の短所

 スピードが遅かった。ハードウエアもそうだが、搭載されていたBASICもあまり出来が良くなかったように思う。当時のベンチマークテストはBASICのコマンドのスピードを計るものだったため、ベンチマークテストの結果は良くなかった。
 その他ハードウエアの欠点はいろいろあるが、ユーザーが多いことはそれを補ってあまりあるものがあった。それがシェア1位を維持できた理由だと思う。
 
 

FM-7の長所

 CPUがモトローラの6809という、ザイログのZ80より優れたものを2つ搭載していることがあげられる。1つはグラフィックの描画用に搭載されていたが、当初この2つを同時に動かすなど上手く使いこなすことができなかったため、欠点のように見られていた。
 OS-9というマルチタスクOSを動かすことができた。当時私にとってはマルチタスクというものに憧れていたため、これができるというだけですごいと思っていた。

FM-7の短所

 キーボードがよくない。キータッチもそうだが、キーを離したことが検出できないというのはアクションゲーム等を作るのには致命的な欠点だった。
 当時としてはキャラクター画面を持っていなかったというのもBASIC等では使いにくい仕様だった。
 モデルチェンジでFM-77,FM-77AV等なかなか優れたものを出してきたが、X1turboZなどと同様すでに16ビットパソコンの時代に移行しようとしており時既に遅しの感があった。