ヒュール聖王国
The Hagiarchy of Hule

場所:
ブラン大陸[Continent of Brun],〈大砂漠[Great Waste]〉の北西。
面積:
256,000 平方マイル
人口:
1,000,000。ヒュールの住民は文化のモザイクで,それらすべての文化が同化して,ヒュールふうの生き方を作り出しています。ざっと 65% が人間;30% がヒューマノイド(おもにバグベア,ノール,コボルド,オウガ,それにオーク);そして 5% がデミヒューマン(ドワーフ,エルフ,ノーム,それにハーフリング)です。
言語:
ヒュール語(公用),それに加えてたくさんの文化の方言
貨幣:
リラ(gp),クル(sp),ピアスタ(cp)
統治種類:
聖王国(聖人が治めている)
産業:
農業,織物(きれいな服,毛織物など),ガラス製品,貿易,征服
解説:
ヒュールは大きな,人口の多い国で,ブラック・マウンテンズの北西に位置しています。南の国境は,スラゴヴィッチ[Slagovich]のすぐ北のあたりでわずかに海岸線にかかっているため,この国は海洋貿易を行っています。ヒュールの土地の大部分は,低く,ゆるやかにうねる丘陵地で,いちめん農場と牧草地に覆われています。その住人はほとんどがケイオティックです——彼らが従う哲学は,支配者である聖人が説いたものです。ヒュールの国境の内側で暮らしているヒューマノイドの各種族は,名目上は自治を行っているのですが,最高位の聖人であるマスター・オブ・ヒュールとは同盟を結んだほうが,有利で都合がよいということもわかっています。

ヒュールの聖人が説いているのは異常な哲学で,嘘や詐欺に関するものです。国民はいろいろなイモータルを尊敬していますが,主流はボズドガン神[Immortal Bozdogan](〈詐欺師の王〉ロキ[Loki, Prince of Deceit])です。ヒュールにおいては,嘘をつくことが聖なる行為です。なかでもとりわけ聖なる行為とされるのは,新たな信者をボズドガン流に改宗させたり,さらには〈大いなるヒュール〉を発展させたり,外国人や異教徒,「間違った考えを持つもの」を没落させるような行為です。

名所:
ヒュール西部にその半分ほどが含まれているのが,ダーク・ウッド——巨大な樫の森です。そのほとんどはいまでも原始林です。森の中にあるトロス湖[Lake Tros]はとても広く(4,500平方マイル),一見底無しの淡水湖です。グレイトレルムはマスター・オブ・ヒュールが治める首都(巨大な寺院の複合体)で,トロス湖沿岸に位置します。
歴史:
ヒュールの歴史はその多くが謎に包まれていいます。聖人の説くところによれば,ヒュールを創設したのはボズドガン神に従う人間たちだったといいます。ボズドガンは信者たちに,自らのさだめ——ヒュールの哲学と繁栄を世界中に広める——に従うために知っておくべきことを,すべて教えました。ヒュールの国境はゆっくりと広がっていきました。聖人(とそれを手伝うヒュールの戦士たち)の助力によって,隣接する文化圏がヒュールに加わり,ヒュールの生き方に吸収されていったためです。北の蛮族だけがそれに抵抗しました。

何世紀にもわたって,ヒュールの人々は繁栄し,その国境をあらゆる方向へ広げていきましたが,北は例外でした。BC 1270 年,大規模なゴブリンの群がウォガー[Wogar]に率いられてヒュールに進撃してきました。彼らは土地を荒らし,たくさんの人々を虐殺し,生き残った者は奴隷にされました。しかし,恐怖の支配は若き聖人ホーサダス[Hosadus]のおかげで終わりを告げました。彼は群の指導者に,群れが探し求めている聖なる青いナイフがあるのは東方,ブラック・マウンテンのむこう——さらには〈大砂漠〉よりも遠いところにあると納得させたのです。ウォガーと群のほとんどは,意外な真実を聞いて奮い立ち,移動をはじめました。残った者はヒュールにとどまり,ホーサダスに仕えました。

これ以後の数世紀の間に,ゴブリン以外のヒューマノイドもヒュールに住み着きました。ときどき,ヒュールの人間と非人間との間で衝突が起こり,互いを攻撃することもありましたが,ふだんは平和なものでした——ただし北方は例外でした。北では蛮族の群があいかわらず断続的な脅威となっていたのです。

AC 600 ごろ,北方の蛮族たちが団結して強大な軍隊をつくりあげ,ヒュールは危うく侵略されそうになりました。街がつぎつぎと陥落していくなか,ボズドガンはホーサダスを生まれ変わらせたことを明かしました。伝説の英雄は,戦争と策略,偽りを組み合わせて,蛮族の群れをヒュールから追い払いました。彼は,街ほどの大きさの要塞化された寺院を創建し,そこを首都としました。ホーサダスが帰還したのち,ヒュールは蛮族の攻撃で失った土地をなんとかすべて取り戻し,ゆっくりとその国境を北以外のあらゆる方向へと延ばしつづけました。

つい最近,〈ヒュールの支配者[The Master of Hule]〉(ホーサダスその人であると信じる者もいます)が手先を〈大砂漠〉の反対側に送り込み,東方の土地を征服しようとしました。彼は AC 1005 にシンドの支配権を得,ここを拠点として,ヒューマノイド,イェニチェリ(ヒュールの騎兵隊),それに〈砂漠の遊牧民[Desert Nomad]〉がダロキンに攻め込みました。ダロキン,カラメイコス,それにファイブ・シャイアの軍隊は,AC 1006 になんとか〈砂漠の遊牧民〉を撃退しましたが,〈支配者〉の軍隊はシンドを占拠しつづけています。

植物相と動物相:
ヒュールの開けた土地には,人間やデミヒューマン,ヒューマノイドからなる一風変わった集団が住んでいて,人間のほうがわずかながら数が多いようです。また,この国の国境の内側には広い未開の地域もあります。ブラック・マウンテンズの山麓の丘もその一部です。ヒュールでは,ブラン大陸産のクリーチャーのうちほとんどの種類が見つかります。
参考文献:
X5,Temple of Death;The Voyage of the Princess Ark,Part 20,DRAGON Magazine #173

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