BASIC DUNGEONS & DRAGONS®

デザイン Gary Gygax and Dave Arneson
編集 Eric Holmes
TSR 製品番号 2001
発売日 1979 年 12 月

はじめに

版について

宝の山の上で羽根を広げ,首をもたげるドラゴン。そしてプレート・メールに身を包みドラゴンに矢を射掛けんとする戦士と,片手に松明を掲げてもう片方の手に持ったワンドの力を使おうとしてる魔法使い。全体的に青い色調でまとめられ,ただ“DUNGEONS & DRAGONS”と白い文字で書かれている——それが Dungeons & Dragons 第 2 版の表紙…なのでしょうか?

というのも,初期のころの D&D は,製品の名称表記が資料ごとに異なっていたりするため,どれが第何版に当たるのか断言できないのです。この“BASIC DUNGEONS & DRAGONS”に関しても,表紙には“DUNGEONS & DRAGONS”としか書いてありませんし,1 ページ目には“3rd EDITION, DECEMBER 1979”とあり,さらにその上には“© 1974, 1977, 1978 TACTICAL STUDIES RULES”とあるのです。おまけに裏表紙には“BASIC DUNGEONS & DRAGONS”とあるため,なにがなんだかさっぱりわかりません。ですが,とにもかくにも第 3 版ではなく,さりとて初版でもないため,これを第 2 版と称して話を進めたいと思います。

製品内容

第 2 版の D&D は 2 種類あったようです。1 つは,箱にいろいろな商品が入った“BASIC DUNGEONS & DRAGONS, COMPLETE BASIC GAME SET”で,もう 1 つはルールブックのみ単体販売の“BASIC DUNGEONS & DRAGONS, Basic Game Book”です。COMPLETE BASIC GAME SET には Basic Game Book に加えて,多面体ダイス Polyhedra Dice Set,それに入門モジュールの In Search of Unknown が入っていました。

概要

位置づけ

1974 年に作られた D&D は,以来数多くのプレイヤーに遊ばれ,さまざまなルールの変更や拡張が行われてきました。それらを一ヶ所に集める必要があると感じた TSR は 1977-79 年にかけて Advanced Dungeons & Dragons を発売したわけですが,その後 AD&D の低レベルキャラクター用の部分だけを抜き出して入門者向けのルールとしてまとめたのがこの BASIC DUNGEONS & DRAGONS ということになります。つまりこのルールを「卒業」したあとは,AD&D に移行することになっていたのです。ですから,この当時は D&D と AD&D は同じものであったと言えます。

ルール概説

AD&D への導入用に作られたというだけあり,D&D 独自の路線を歩みはじめた第 3 版以降とはずいぶん様子の違うルールです。その相違点を簡単に挙げておきます。

キャラクター

主要能力値(prime reuqisite)による経験値への修正値が異なります。プラス修正は,能力値が 13-14 だと 5%,15-18 だと 10%,マイナス修正は 7-8 だと 10%,3-6 だと 20% です。また能力値による判定への修正についても,《筋力》《知力》《知恵》は判定に何の影響も与えません。《体質》は 15-16 だとヒット・ダイスに +1,17 だと +2,18 だと +3,3-6 だと -1 です。《敏捷性》は 13 以上だと飛び道具の攻撃に +1,8 以下だと -1 です。

能力値の調整法も若干異なります。減らす能力の種類によって,主要能力値を上昇させるために必要な値が違うのです。たとえば僧侶は,《筋力》を 3 点減らして《知恵》を 1 点上げることができますが,《知力》なら 2 点減らすだけで《知恵》を 1 点上げられるのです。

ファイターはこの版では「ファイティング・マン」という名前です。僧侶のアライメントはグッドかイーヴィルでなくてはいけません。盗賊はレベル 3 で未知の言語を読めるようになります。アライメントがグッドの盗賊はいません。ドワーフが成長するのに必要な経験点はファイティング・マンと同じです。AD&D で使えるようになる各種クラスの簡単な説明も載っています。

アライメントは,ローフルとケイオティックにはそれぞれグッドとイーヴィルが存在し,合計 5 種類のようです。

装備

モーニング・スター,コンポジット・ボウ,ヘルメットなど,現在の D&D では見られない品が用意されています。荷重による移動速度の変化については,鎧の有無と金貨 300 枚ごとに移動速度の段階が決まるようになっています。

魔法

魔法のシステムは現在の AD&D に近いものでした。呪文の中には触媒を必要とするものもありますし,魔法使いが呪文を呪文書に書き移せる確率が魔法使いのレベルや《知力》によって違っていたりします。魔法使い呪文には現在の D&D には存在しない〈ダンシング・ライト〉〈エンラージメント〉〈オーディブル・グラマー〉といった呪文が含まれます。

戦闘

なんと,武器の種類によって 1 ラウンドあたりの攻撃回数が違います。先制権を得るのは《敏捷性》が高いほうです。パリィのルールがあります。射撃武器よりも魔法の攻撃が先です。正直,第 3 版とここまで違うとは思いませんでした。

モンスター

出現数と士気,経験点のデータはありません。セービング・スローはモンスターの種類に合わせて適宜判断するようになっています。ドラゴンの種類はホワイト,ブラック,レッド,ブラスの 4 つです。

その他

ルールブックの最後には,DM をするにあたってのアドバイス,リプレイ,サンプル・ダンジョンなどが 7 ページにわたって掲載されています。ちなみに編集者である Eric Holmesは,南カリフォルニア大学医学部神経科の助教授でした。ファンタジー小説も書いていたそうです。


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