スーパーロボット七つ目大戦β
 
 
<継続々・それは安寧、それは切望ルート>
 
 

 
 
バベルの塔襲撃、というヨミせぬ、じゃない、予期せぬ事態によって主戦力たるデモンベインとエヴァ四号機を欠いてしまった、悪党にぶんどられた新兵器をさらに奪い返して持ち主にお返しして恩を着せようという・・・・・・葛城ミサト発案の<第一話作戦>であるが・・・・
 
 
新兵器強奪の目的を果たして意気揚々と気分良く帰りかけたあしゅら男爵に、問答無用で襲いかかって先手をとったのはいいが、さすがに向こうもマジンガー相手に長く戦ってきた古強者だけあってそう簡単にはやらしてくれない。奇襲に驚き、新兵器をおいて逃げ帰ってくれればいいな、などと都合のいいことを葛城ミサトは腹の底の底の方で考えていたようだが、世の中それほど甘くない。こちらの目的をすぐさま見抜いて応戦しつつ持ち逃げモードに。こうなると、ラーゼフォンで空をとっていてもヒリュウ改、デモンベインを欠いたままでは完全な足止めにはほど遠い。空を見上げてオタオタしてくれればさらにエヴァが切り込めたものの・・・・あしゅら一党のその陣形も乱れない。おまけに機械獣というのはけっして弱くない。むしろ、非常にしぶとい部類に入る。それがスタコラ逃げを打つとなると新兵器の奪還という目的上、かなり面倒なことになる。こっちを足止めに数体の機械獣が立ちはだかり、新兵器の入ったコンテナから遠ざけてくる。
 
 
「(男)ぬはは。これもひとつの悪の哲学よ」
「(女)新兵器はもらっていくぞ。ほほほほ」
 
 
高笑いのあしゅら男爵。だいたい、相手の戦力は読めた。こちらの逃げ切りで決まりだ。
あまり見たことのない新顔が多いが、マジンガーと同じで鈍重なのが多い。ちょこまかとしたモビルスーツならこうした場合、厄介だが、この連中相手ならば逃げ切れる。
 
 
「(男)・・・しかも、こやつら、どうも・・・」
「(女)指揮が乱れているのか、新米が多いのか、連携がぎこちないのう」
 
 
こうした場合にいつもいつも邪魔しくさってきたロンド・ベルならこうもいかない。集中攻撃だの遠距離砲撃だのもっとずるがしこく立ち回り、こっちが歯がみするような速度で撃破したりするのだが、こいつらはそれに比べると、ひどくのんびりだ。ライバルをほめるわけではないが、・・・・・・まあ、ライバルというのはいると憎いが、いなくなるとさびしいものだ・・・・・・ロンド・ベルと比べると数段落ちる。戦力が同数であっても数倍の戦果を叩き出すだろう。それに、どういうわけか連中は機体の修理をしない。修理機体がいないのか、機械獣に突かれて耐久がやばくなっているのがいるのだが、治しにこない。まあ、こっちにとってはありがたい話だが。というかバカめ。逃げられると思って焦っているのか・・・・・まてよ・・・・・・・・・
 
 
「(男)これならば、いっそ・・・・・・」
「(女)後の禍根を断っておくという手もある・・・・」
 
 
悪人らしく欲深でもあるあしゅら男爵。逃げる、と見せかけて、連中が追いすがって疲弊したところを一気に振り返って壊滅させてやるのも・・・一興だ。先ほど、警護部隊の隊長機をやったように。
 
 
そして
 
 
「うわーーーー!!」
機械獣の攻撃がダメージが蓄積したアラドの乗る九十九式をとうとう貫く!修理機体である美嶋怜香のミーゼフォンが空にある神名綾人のラーゼフォンから離れないから、当然そういうことにもなるわけである。ラーゼフォンもグールの対空砲撃を受けまくり、それをうまくよけられないラーゼフォンも相当にダメージっており、「綾人ちゃん!大丈夫!?」それを連続修理する美島怜香としても離れられないわけであり、かといってここでラーゼフォンを退かせれば一気に上をとられてしまう。しょうがないといえばしょうがないところだが・・・・
 
 
「アラド君!!」
叫ぶ指揮官・葛城ミサト。
なんか今までの存在の薄さを一気にくつがえすほどの目立ちぶりであるが、こういう目立ちは本人も望んではいないだろう。ゼオラちゃんとかいう相方をまだ見つけていないのにこんなところでやられるなんて何事だ・・・・・やっぱりモビルスーツ装甲薄すぎる。
「装甲薄いぞ!!なにやってんの!!」とかいいたいところだ。
残りのヒットポイントは180・・・・・・もう戦えない。向こうが逃げるの優先でトドメまで刺しに戻らないのが幸いした。
 
「すいませーーーーん!!やられましたーーー!」
「あとで回収させるから、そこで休んでて・・・機体の爆発の心配はないわね!?」
「・・・たぶん、大丈夫だと思います。すいません!!」
 
 
「あっ・・・・・!誰かやられたんですか・・・・っ」
ラーゼフォンの傍らで音障壁を張りながら神名綾人を守りつつ修理するミーゼフォン、美嶋怜香がそれに気をとられた瞬間のこと。意識が空から地に零れた。それは、集中。リズムが、乱れた。修理機体を操る者として、いかにもお嬢さんしている美嶋怜香であるがそれなりの責任感があり、チームワークを乱してしまった、誰かを失ってしまったというという恐怖と自責の念が、ミーゼフォンの音を乱した。それはラーゼフォンにも容易に、音叉のように、響き伝わり・・・・・
 
 
「うわーーーーーー!!」
「きゃーーーーーーー!!」
 
 
間の悪いことにグールの砲撃がちょうどクリティカルヒットであり、それが命中、絶叫カップルとして墜ちるラーとミーのゼフォン二体。
 
 
「綾人君!!怜香ちゃん!!」
叫ぶ指揮官・葛城ミサトふたたび。うわー、なんじゃこりゃ。デモンベインと四号機の主軸の二機がいないとこんなに弱いのかあたしらは。アスカとレイのエヴァ二体もヒリュウ改がないと電力問題があるから・・・思わず負けが続いてきた新設球団の監督のような顔になりかける、のをなんとかがまん。がまんする。がまんできる。
 
 
「(男)うはははははは!なにをやっとるんだ、あやつらは」
「(女)なんとも歯ごたえのない。マジンガーZのしぶとさが懐かしいくら・・・」
 
 
さっきから笑ってばかりのあしゅらだが、それが重い衝撃によってぴたりと止まる。
 
 
ずん
 
 
グール内部を透明の象の群れが駆け抜けていったように、重い揺れがあしゅら男爵の顔面を再びヤカン兵士のヘルメットにダイブさせる。ぶー。せっかく止まっていた鼻血が。
しかしのんびり怒っているヒマなど当然ない。血走った目でモニタカメラを見てみれば、グールの後部に、ミラーマンとジャイアントロボを足して二で割ったような重装甲ロボが乗っかっている。いつの間にかあんなところに現れた鉄巨人は、そして、巨大な腕を振り上げて・・・・・・
 
 
「ここでしくじっては交渉がまったくの無駄になってしまう・・・それは避けたいところだね。ゆえに、こうして派手な表舞台を踏んだりもする・・・・ビッグオー、ショウタァーイム!!」
ここに、影の、大人の、真の、主役機があることをお忘れなく、とばかりにロジャー・スミスの繰り出す重量級の鉄拳・サドン・インパクト!!
 
 
ずどどどおおおん!!!
 
 
何かロジャー・スミスもたまっていたのだろうか、と思わせる、強烈に重たい一撃。グールに大ダメージを与えて撃沈寸前。この一撃が乱戦の始まり。まさに殺陣師のいない時代劇状態。「(男女)お、おぼえておれ・・・・・・機械獣ども、なんとしても新兵器をこいつらに渡さずに逃げ切るのだ!!」そう言い残して自分は小型飛行機でさっさとこの場を離れるあしゅら男爵。渡すくらいなら破壊してしまえ、と言わないのがせこいところであるが、葛城ミサト達には助かった。そのいい加減な指示のおかげで機械獣の足並みが崩れた。
 
 
アラドの九十九式と神名綾人のラーゼフォンと美嶋怜香のミーゼフォンが即座には追撃不可能。残りの機体で逃げる機械獣を追い、新兵器を取り返さねばならない。
だが、アンビリカルケーブルのないエヴァ零号機と弐号機はそろそろバッテリーを取り替えねばならない。戦闘能力のない21世紀警備保障の輸送機・アホウドリまで戻るとなると・・・・・残りのビッグオー、ダイ・ガード、それから・・・・・鉄人28号
これらで追わねばならないわけだが。
 
 
 
実のところ、鉄人28号はここまでの戦闘で、”戦っていない”。
 
 
伏兵役、として戦闘域より少し距離をおいたところでドクターウエスト、エルザの駆る魔導バイク・ハンティングホラーサイドカー仕様にて金田正太翁は、待機、ということに
 
 
「して」
 
 
という惣流アスカを代表としてパイロットの面々から強い意見があったため、そういうことになったわけだが。新兵器が入ったコンテナを運んでいる機械獣がモロにそっち方面に進路をとって移動中。あえて逃げぬ限り、真正面からぶつかることになる。
 
 
「我が輩の予感どおり・・・・・・・・本日の輝き!、本日の栄光!!、本日の成功!!、つまりは今日のお手柄!!、最後の主役は我が輩達のモノ!ついにきたのである!しかも新たなるシステム・・・”博士システム”までひっさげて!!その栄誉ある第一号が我が輩であるのは当然として!お約束的に歓喜と期待に満ちた笑顔など浮かべたりもするっ!まさに伏した龍が飛び立つ日!雛であった鳳が舞い飛ぶ時!」
 
 
通信機から聞こえるドクターウエストの雄叫びに、不安以上に頭が痛くなってくる一同。
 
完全に作戦目的など頭から失せて失せきっているのだろう・・・これを御せるのは、今この現場にいないデモベの二人と・・・・「それは楽しみですな。博士が一体何を作られるのか。少年のころを思い出し、年寄りの胸も高鳴りますわい」意外なことに金田正太翁だった。この奇矯な人物を慣れていない老人はさぞ嫌うだろうと思われたが、年寄りの懐はこの騒音天才科学者もいれてしまえるようで、「ふふふ。乞うご期待なのである、ご老人」素直に評価、期待されてまさしく少年のように瞳を輝かすドクターウエスト。
 
 
あんたら・・・・・・・
 
聞こえてくるあまりに場違いな会話に皆でそろって無言のつっこみ。
機械獣さえそっちにいかなければ、ほうっておくところだが・・・・
 
 
見た目こそ硬そうだが、材質的にモビルスーツよりも装甲が紙である鉄人・・・
機械獣の攻撃がかすりでもすれば、腹が破けたダルマのような有様になるだろう。
 
「あああっっ!!もうっっ!!なんでよりによって!!」
エヴァ弐号機で惣流アスカなどじだんだ踏むのだが、間に合わない。
「逃げろって!逃げろ!じいさんたち、敵がまとめて来てるんだって!逃げろって!!」
ダイ・ガードで苦戦中の赤木俊介も叫ぶが、もちろんそれは指揮官の仕事であり。
葛城ミサトや城田氏達がそれを言わないのは・・・・・
 
 
「金田正太郎翁のレベルが・・・・・99だっていったら、アスカ達は信じるかしら?」
「・・・その目で見ないと信じようもないでしょうな・・・・」
 
ロボットの操縦元祖の、嘘のような数字を知っているからだ。
 
 
「新システム搭載も、ほんとのことロボ」
他の人間に理解されることの少ない自分の造り手が任務そっちのけで騒いでも、あえて今日はつっこまないエルザであった。ちなみに、ちょっとカメラ視線のお年頃である。