スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<ダイ・ガード ルート2>
 
 

 
「いったい、どうなってんのよ?え?ロジャーさん」
 
お台場に到着した機内でロジャー・スミスに詰め寄る葛城ミサトであるが、どう考えても彼に非はない。
考えていることが自分で望んでないかたち、思ってもみない、夢にもおもわないかたちで叶ってしまったので混乱しとるのである。
仕事とはいえ、ロジャー・スミスこそいい迷惑である。いつまでこの女につきあわないといけないのであろうか・・・・パラダイム・シティでは彼の力を、ビッグ・オーを必要とする大事件が起こってはいないだろうか。
 
(実力的にもルックス的にも、ベックのこちらへの参戦はないと見ていいだろう・・・だが、実力的にシュバルツバルトのビッグ・デュオ、ルックス的にエンジェルのビッグ・フォウがこちらにやってこないとも限らない・・・・)
ちょっと五秒ほどたそがれて、いつも厚い雲に覆われて太陽が姿を見せない記憶喪失の都市、懐かしいパラダイムを思い出し内省的になってしまったロジャー・スミスである。
 
 
「・・・ホームシックなの?ロジャー」R・ドロシーの無遠慮な指摘が痛い。
 
 
「まあ、ここは状況を整理する必要があるようですね・・・」
しかし、プロのネゴシエイターはすぐに気力を奮い立たせて葛城ミサトに向かい合う。
現在、自分たちは微妙な立場にある。これが、単なるトラブルや足止めであったなら対処のしようもあるのだが。すぐさま排除なり撃破するなりして・・・・、まあ、この葛城ミサトという女性の率いるエヴァ部隊も、スーパーロボット部隊に参加しようというだけあって、十分以上に”スーパー行動的”、つまりは力で解決、破壊的であるわけだ。
知性の光(ランタン)を掲げた道案内である自分が迷うわけにはいかない。
 
 
ロジャー・スミスはここまでの状況整理を始めた。
 
 
ロンド・ベルへの合流を果たすべく、彼等がダイ・ガードの参戦を促すべく停泊していたお台場にむけて空路で出発した私たち。その途中、全翼機の不足から地上を走行して現地へ向かうことになったエヴァ初号機がミケーネ帝国の機械獣に襲撃され・・・・・、
 
 
交戦。
ここから先はジャミングにより、未確認のまま、第三新東京市のネルフ本部を経由したロンド・ベルの話になるが、エヴァ初号機は機械獣を数体撃破したものの、遠距離からのライフル狙撃により眼部にダメージを受けて中破、沈黙。移動中であったアーガマから、グレートマジンガーとマジンガーZの二機が降下、ミケーネ帝国の飛行要塞グールを攻撃、これを退散させ、残敵を掃討。完全に鎮圧する。現地でのミケーネ帝国の目的は不明。
 
 
「いや、それはいいんだけど・・・・・・ちょっと引っかかる点がないでもないけど、まあ、それはいいわ」
葛城ミサトが横槍をグサリといれた。
「肝心なのは、ロンド・ベルの連中どもが、パイロットを”2名”!、エヴァを”二体”!!保護したってのたまりくさっていることよ・・・・どゆこと?」
そんなことをロジャー・スミスが知るわけがない。ネゴシエイターはクリエイターではないので、「あなたも知らされていなかった新型エヴァの実験でもしていたんではないですか?」とかいう適当な嘘も夢も口にできない。
 
「こっちにはアスカもレイも渚君もいるってのよ!!弐号機も零号機も四号機もあるし!」
 
「向こうの勘違い・・・・ならば、エヴァ初号機のパイロット、碇シンジ君が訂正するでしょうしね。現状でロンド・ベルがニセの情報を連絡するメリットもない・・・・偽装エヴァを用いてのトロイの木馬にひっかかるほど歴戦のブライト・ノア艦長は甘くないはず・・・・これについては分からない、としかいいようがありません。または、ネルフを経由したことで何か情報が変質した、か・・・・」
最後につけ加えたのは葛城ミサトへの牽制である。この参戦に反対の内部勢力が故意に情報を歪める操作をしたのではないか。と。まあ、内部に敵を作りそうなタイプだし。
こっちは水晶を覗けば何でも分かる魔法使いではないのだ。下調べもしとらんのにそう何でもかんでも分かるものか。
女性は決して嫌いではないロジャー・スミスだが、さすがに葛城ミサトのようなタイプはうんざりである。
これならまだ堕天使、エンジェルの方がましだ。R・ドロシーについては言うまでもない。
 
 
「うぐうっ」
やりこめられると、少しはかわいげをみせて反省する葛城ミサト。確かに、その通りだ。
碇シンジが訂正しないのは、そのように青い髪の少女に言い含められたからであり、
ネルフに伝えられたのは、紫の機体で少年がパイロット、赤い機体で蒼い髪の少女がパイロット・・・・という必要最低限にも届かない戦時中断片情報で、そこから解明して、碇シンジのエヴァ初号機と(なんらかの理由で入れ替わった)綾波レイの弐号機ではないか、ということで葛城ミサトのもとへ照会連絡があっただけなのだ。もともと参戦希望は出していたので、いったんは断ったが、緊急の折であるのでそれを受諾して、ロンド・ベルに迎え入れた、そのままアーガマに乗り込んで国外で一働きしてもらう、と。
 
 
通信はあくまで一方的で、眼帯をはめているがそこそこ元気そうな碇シンジが簡単にひとこと「いってきます」と挨拶する画像が添付されていたのがまわりは悪の敵だらけロンド・ベルのせめての人情か。父親でありネルフ総司令碇ゲンドウは肯いただけで深く詮索しなかった。さすがに男親だけある。無責任というか獅子の教育というか。誘拐ではない証拠に身代金の要求はない。四体の中の二体とは、少々イレギュラーだが、だいたい、ロンド・ベルに参加するために第三新東京市を出発したのだから文句の出ようもない。
あるとすれば・・・
 
 
「・・・レイの画像を出せ」
なかなか次が出ないので、うながす碇ゲンドウ。いつまでもシンジの顔など見てもしかたがない。多少ケガしようが男親はそんなもんである。余計な気を使う必要はない。
「いえ、添付されてきたのはシンジ君ひとりだけです」
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうか」
 
「・・・碇」
碇ゲンドウ専門家である冬月副司令には、碇ゲンドウの凹み具合がよく分かった。
 
これもまた、戦時の断片情報が産み出した悲劇のひとつ。
だが、葛城ミサトに照会してアーガマに乗り込んだチルドレンは碇シンジだけである事実を聞かされて、大いに「安心」するのであった。
 
 
そんな「悲劇」などミサトしらない!。とばかりに混乱、心配しまくりの葛城ミサト。
とりあえず死んではいないのだから。生きていればいつかはあえる。
とはいえ、状況が不明なのは不安でしょうがない。相手は高速で国外に離脱したようでおいそれと追いかけて確認もできない。とりあえず、足どりを辿る手がかりをつかむためにお台場へ着陸する・・・・と、そこでも驚きの新事実が。
 
 
 
なんと、お台場の21世紀警備保障の本社には「ダイ・ガード」がいたのである・・・。