スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<略してアクシズルート>
 
 

 
 
ネオ・ジオンの小惑星基地アクシズ。
 
 
いまだにジオン公国再興を夢見る炎の女、ハマーン・カーンを事実上の指導者とする、地球圏の味方ではないが、敵とも真正面からはいいかねる、いわゆる第三勢力である。戦場において正義のスーパーロボット軍団と悪党軍団との戦力が互いに削り合い拮抗している時などに、背後などに現れてさくさくっとおいしいところを頂いていくか、ぬるい指揮官など小便ちびるような鉄風雷火の急所狙いをやったりする非常に賢いというか戦力の使いどころをわきまえているというか、闘うにしても交渉するにしても厄介極まる相手である。
 
アクシズとは「軸」の意味であり、地球帰還を願う無重力人スペースノイドたちにとってはいわば「わたがしの棒」のようなものであった。小惑星を改造した偽りの故郷であるだけに、技術開発には余念がない、地球のように自然に生命を循環維持してくれるわけではないだけに、そこに住まうには目的や信念をもたざるを得ず、アクシズではそれは「ひたすらジオン公国再興」であり、住民のエネルギー全てが否応なしにそこに集束されるだけあって、権力闘争や派閥争いでバラバラで足をひっぱりまくる地球勢力などその「速度」「実行力」「貫通力」において比べモノにならない。まさに研ぎ澄まされた槍の穂先のようなもの。
絶対的に資源も人材も足らないところをファンネルやら新型のガンダリウム金属の開発に成功したのも、そういった集束型人工国家の底力というものであろう。
だが、アクシズ・ネオジオンは消耗戦になれば破れる、体力の無さがある。気力がいくらあっても体力がなければ闘い続けることはできない。
 
そういったわけで、少数精鋭の悲しさをよく知っているハマーン・カーンの戦略はどうしても「後から割り込み方式」をとらざるを得ない。戦力温存しておいて、他の連中が共倒れになったころにやってくる、そのためには最終勝者に戦力を統合されてもかなわないので、ちょくちょくと手を出して、共倒れになるように足を引っ張ったりもする。地球圏の疲弊、戦の長期化を望むあたり、正義のスーパーロボット軍団とはこれまた相容れぬのであった。ジオン公国再興というものが最終的に、宇宙にある自分たちののど頸をつかまれぬように地球の連中に思い知らせて「二度と」手出しできないようにしてやる、というものである以上、地球帰還に行動基をおくアクシズは基本的に矛盾があるのだが。べつにどうしても地球に住みたくて戦争しているわけではない、自分たちの首に鎖をつけようなどと考えてほしくないだけなのだが。大地から遠く離れて何を考えてるか分からない連中の動向に不安になってしかたがない人間もいるわけで。地球から動かない定住民族と宇宙を飛び星を渡り歩く移動民族との諍いは同じことの繰り返し。表裏は一体。
 
 
金髪でサングラスのクワトロ大尉が「変身」したりしなかったりするのも、
ハマーン・カーンが途中で「説得(フラグたてて二回)」されて仲間になったりするのも
 
 
同じこと。あらゆる誤解と無理解と偏見を飛び越えて相互理解を可能にするニュータイプの数が増えて、なおかつ、彼らがさらに進化して、その力を持たぬ者たちの間を「翻訳」することができるようになれば・・・・それは夢のシュガータイプ・・・・ちっとは状況は変わってくるかも知れない。
 
 
地球の連中の石頭をかち割ってやる、というのが要するに現状のネオジオンである。
そこから何が流れ出そうと、何が吹き出そうと、知ったことではなかった。
 
 
というわけで、今回のハマーン・カーンはクワトロ大尉やカミーユ・ビダン、ジュドー・アーシタに説得されることもなく、徹底的に敵のままで、頭にくるほどの「第三勢力」 ぶりを発揮する。白いキュベレイはひたすらネオ・ジオンの旗機でありつづける。ヒットポイントも三万ちかくあったりして、なおかつ悪魔のような回避もあり、気力も限界まで。
 
 
地球の状況を見極めつつ、現状では戦力を増強、生産、新開発している段階であった。
だいたい、ネオジオンのモビルスーツはかなり優秀で強力なのであるが、その中でも目玉は「新型ビグザム・”金河万丈”」である。無重力下であるから建造が可能であった超巨大二本足要塞モビルスーツである。フォルムこそ、RPGの雑魚キャラっぽいが、そのスケールがすべてを帳消しにし、すべてを納得させ、全てをオッケーにする。名前も凄い。
ヒットポイントも百万くらいありそうである。(てきとーなのではない!まだ完成していないから計測不能なだけなのである)。144分の1スケールのプラモデルにしたとしたら、おもちゃ屋の屋根がつきぬけるであろう。たぶん!それくらい強力なやつであるが、
 
ハマーン・カーン自身は「・・・・絶対に乗ることはないだろう」と言い切る。
 
ハマーンに心酔する薔薇の騎士・マシュマー・セロも「ハマーンの様のため・・・なら・・・です、が・・・」と歯切れが悪くなる。高性能の材質の強化で足を短くできたのはいいのだが、そのせいでデザイン的に「ニコチャン大王」みたいになってしまったのだ。頭頂にも死角がないように大型ギガ粒子砲を装備してあるので余計に。
 
そんなわけで、この決戦兵器に誰が乗るのか、生け贄は誰か、パイロットの間では戦々恐々としている。武装と装甲が絶大なのでべつにニュータイプや強化人間でなくてもいいので余計に。乗りさえすれば外から見えるわけでもなし、英雄になれるのは間違いないのだが。
 
 
逆に、パイロットの間で引く手あまた、しまいにはつかみあいの喧嘩になるほどに人気なのが「武者ガンダムシリーズ」と「新型足つきジオング」である。
 
 
・・・・反則であろう。足つきジオングは正当性ばっちりであろうが、武者は。
 
 
ちなみに”風”、”林”、”火”、”山”の四体が有る。なんでネオジオンが怨み重なるガンダムを?というところであろうが、これは宣伝と客引き、いやさ有能なパイロット引きのためである。「ああ、ガンダムなら乗ってみたいなあ」という隠れエースは広い宇宙には敵味方問わずにかなりいる。
口には出さなくても憧れなのである。
 
だが、途中で裏切られるのもネオジオンとしてはかなわないので、それがないための、侍魂、士魂、忠義に殉じるサムライのための、武者ガンダムである。主君を裏切るとその場で自爆(ハラキリ)するような仕掛けになってるけど、それでもいいやつは乗ってちょうよ、というわけである。それで退くような根性無しは乗る資格はないのである。
いまんところパイロット、つまりはサムライが決まっているのは”林”の武者ガンダム。
名前はフラノ・夾竹桃(きょうちくとう)。ちなみに和風で巫女風の女剣士である。
冗談みたいな名前と出で立ちであるが、「美しい・・・・」マシュマー・セロがえらく気に入って即採用になった。
 
女で、しかも名前も知れてないぽっと出のセロ贔屓、いやさエコ贔屓に「ネオジオンの環境を考えていないぞ!!」と希望者から文句が殺到したが、意外なことにフラノは”林”の武者での勝ち抜き模擬戦を言い出して、「わたくしに指一本でも触れた方に、この機体を明け渡しましょう・・・・よろしいでしょうか、セロ様」なおかつ、この厳しい括りをあっさりクリア。希望者たちはそれなりの腕利きで猛者であるが、”林”を駆ったフラノに触れることもできずに次々と頭だの腕だのをもがれていった・・・・モビルスーツ格闘戦におけるプロフェッショナル・・・・これには私闘で貴重な機体を潰されてたまらんところのお偉いさんの・・・・つまりハマーンのことである・・・・気にいり、直々にお役目を仕ることになった。高速機動戦、射撃戦において絶対の有利を誇るニュータイプに匹敵する気配を消す、つまりは精神の感応を攻性拒否する能力までもっているのであるから絶対採用するしかあるまい。在野に埋もれていたこういった人材を引き寄せるとは・・・まさにガンダム様々、アイデアの勝利である。
 
 
アイデアといえば、ブースターやチョバムアーマーやプロペラトタンク、マグネットコーティング等々、機体に装着させてパワーアップする改造アイテムの新開発にも余念がない。膨大な資金がかかる新型機体をそれほど次々開発生産していくわけにもいかんし、今ある機体はパイロットたちが乗り慣れているわけであり、それらをさらなる有効活用していく方が対資金観点でいえば効果は大きい。おまけにこの手の開発はアクシズ技術陣の十八番なのである。
 
最近、開発に成功したヒット製品は、「ギガブースター」である。鈍重な大型機体でもこれさえつけておけば、かなり高速に移動できてしまう。メガブースターよりも速い。
ブリッツクリーク。戦闘は機動力である。とりわけ、後から乗り込み方式をとるネオジオンにとっては重要な要素である。あとはどうしてもスーパーロボットや悪党軍団のロボットに比べると装甲が薄いモビルスーツの死命を分ける強靱なアーマーの大量生産などが計画されていた。こつこつ、じわじわと。力をためつつ、虎視眈々と機会をうかがう。
 
 
静かに、静かに、静かに
 
 
悪は静かに。略して、アクシズ。
 
 
いまのところ、この小惑星基地には手を出す勢力はいなかった。宇宙からの侵略者系の悪もの軍団はこんなものを素通りして地球に行ってしまうし、地球の勢力には重力の呪縛を振り切ってまでそんな余力はない。周辺宙域での戦闘訓練こそ行われていたが、四六時中厳戒なモビルスーツを出してまでの警備体制がとられていたわけではない。
 
 
そこに・・・・・一機。たった一機の未確認の機体が突如、やってきてアクシズの研究区画めがけてまっしぐらに突っ込んできても迎撃しきれなかったことにハマーン・カーンをはじめとしたネオジオン首脳部は戦慄した。油断していたわけではないが、完全に寝首を掻かれた格好になった。このタイミングで居住区画モウサを狙われたら、防ぎようがない
・・・・折の悪いときに、モウサにはその時ネオ・ジオンの象徴たるミネバ・ザビがいた。
 
 
象徴がなくなれば、この星の王国は遠からず瓦解する・・・・・
 
 
モビルスーツではない、レーダーにもひっかからないありえない未知のテクノロジーによって製造されているらしいその赤い機体は何が目的なのか、研究区画の倉庫エリアに高速で進入してくると・・・・
 
 
「あるもの」を奪うと、早々に立ち去ろうとした。装甲シャッターの二、三枚は破られたが、周辺をことさらに破壊するわけでもなく、人死にもなく、それはいっそあっけないほどの被害であった。が。
 
 
「断じて生かして帰すな!」
ハマーン・カーンの烈火の号令のもと、アクシズからワラワラワラとモビルスーツがこれでもかと湧いてきて去ろうとする謎の赤い機体を撃墜せんと追跡にかかる。
 
 
空間を転移してきたとしか思えない唐突な接近をしてきたわりには、逃走にそれを用いない・・・・エネルギー切れなのだろうか、移動速度も遅くはないが、宇宙での高速戦を得意とするモビルアーマーにしてみればすぐにおいつける速さだった。
静かに力をためこんではいたが、これといった敵対行動を(今の所は)していない自分たちに対する、これは宣戦布告であり挑戦であろう。どこの所属の者か知らないが、ここで宇宙の藻屑になってもらう。そうしないとハマーン様にこっちが殺されるから。
 
 
そこから、謎の赤い機体とアクシズのモビルスーツ軍団との熾烈な追跡戦が始まった。
ハマーン・カーンがどれくらいトサカにきていたか・・・・これが陽動の可能性もある、それが大であるのを百も承知でありながら、マシュマー・セロ、グレミー・トト、ラカン・ダカラン、ロザミア・バダムといった名にしおう強者を使わせたことでも分かる。
確かに、今の状況のハマーンなら単機のキュベレイでロンド・ベルを全滅させかねない。
 
 
自分たちの聖域であるアクシズを侵された・・・・・これは面子の問題であり、それゆえ、手加減も情け容赦もなくなる。技術陣はなんとか捕獲して解体して研究して新たなモビルスーツの開発に生かしたかったが、とても口に出せるものではない。
 
 
この炎の女摂政の迫力の前に、謎の赤い機体は逃げ切れたかどうか・・・・・・
 
 
「これさえあれば、問題は解決ですの・・・・・・・つかまるわけには、いきませんの」
謎の赤い機体のパイロットはこんなことを言って、めくらましがわりにマップ兵器「ヨミジ」を喰らわせた。
 
 
宇宙に咲く光の花。闇の中の曼珠沙華。
 
 
「はやく・・・・シンジさんの、喜ぶ顔がみたいですの」
ぽっと、頬をそめながら。アルフィミィが。
 
 
同時に、謎の赤い機体、ベルゼイン・リヒカイトの片足が、マップ兵器を回避したマシュマー・セロのザクⅢにぶった切られた。