スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<地球防衛企業 ダイ・ガード ルート>
 
 
に、入るまでにまたちょっとした説明を。まあ、やはりおまけですから。
 
舞台は「機動警察パトレイバー」寄りにして「ウルトラ」テイストを加味した現代日本。
<界震>なる特殊な自然現象により出現、発生する脅威<ヘテロダイン>に立ち向かう民間企業・21世紀警備保障の所有する巨大ロボット、その名も「ダイ・ガード」!
ちなみに、運搬移動の手間などを考慮した結果の「三体合体ロボ」である。
それに乗り込むのは赤木俊介、青山圭一郎、桃井いぶき、という三人の若者。
熱血メインに、クールなエンニジア、女性のナビゲーターという組み合わせで、あと二人追加すれば戦隊もののテイストも加わっていたところ。ロボに乗り込むパイロットではないが、同じ広報二課の課員として、仲良しでぶっちょ三人組や頭の薄い昼行灯課長、おきゃんけなげでつかめないOL娘三人に、仕事の出来るお姉さん、まで完備していて申し分ない。十七歳の眼鏡っ子天才科学者に、プロの軍人である渋い戦術アドバイザーまでいたりする。
 
 
「サラリーマンだって、平和を守れるんだ!」というのが困ったときの合い言葉。
 
 
さて。
ここで「ダイ・ガード」を観たことがなく、警備保障業に対して深い知識を所有する方、もしくはごく普通の企業にお勤めの方からは当然の如く「ある疑問」が提出されることでしょう。
「なんで、民間企業が怪獣と戦わないとあかんのか?」と。まったくもってごもっとも。
そんなのは安全保障軍、通称「安保軍」に任せておけばよいのです。そのために戦車だの航空機だのミサイルだのをたくさん持っているのですから。怪獣と戦う兵器をなんで民間が持っているのに、安保軍が持っていないのか、おかしーじゃないか、と。
 
まあ、アニメだし、目を瞑り耳を塞げというなら、ふさぐしつむる、という大人のあなた。
その必要はござんせん、きちいんとした理由があるんでござんすよ。
それは、「ヘテロダイン」というこの怪獣の、「自然災害性」にあるのです。
 
 
<界震>という特異現象から生まれいずる、ヘテロダインには宇宙からの侵略、もしくは人類への憎悪という意志的な行動原理はありません。もちろん、知能もないので話し合いもできません。ひたすらやりすごすか、正面から叩き潰すかの二通りしかないのですが、行動原理がないだけに、出現の周期も不定で、一番初めにヘテロダインが出現して、甚大な犠牲を払うOE兵器で都市ごと消滅させた後、待てども備えれども一向に現れず、なんと次に現れたのが十二年後。天災は忘れた頃にやってくる、という格言通りです。
 
が、その間、対ヘテロダイン兵器として開発されたダイ・ガードは金食い虫の厄介者として、軍から民間に払い下げられてしまいました。そんなわけで、宿敵であるヘテロダインが出現するまでダイ・ガードはあわれ、広報二課において、動く宣伝広告塔として、巨大呼び込み男、遊園地などでサンドイッチマンのような仕事をして過ごしておりました。
まさにロボット小公子、ハウス名作劇場で放映されてもおかしくない。
 
なかなかに苦労ロボなのですよ、このダイ・ガードは・・・・・苦節十二年。
どこかの大学の助手のように人生途中でブチきれてもおかしくはないのですが、彼は耐え抜きました。ヘテロダインは彼にしか倒せないことを知っていたからでしょうか・・・・
 
<ヘテロダイン>は、いわば、怪獣です。さまざまな形質や能力をもち、強い電磁波に引き寄せられる性質をもっています。サイズも巨大で、ビルを薙ぎ倒すくらいのでかさです。これがもう少し小さくて人型くらいなら、厚生省あたりが特殊チームをつくってなんとかしたのでしょうが、まあ、とにかく人間では太刀打ちできません。
そして、その共通する「弱点」として「フラクタルノット」という六角形のプレート状のものがあります。巨大な体躯の中からそれを見つけだし、ぶち抜きさえすればヘテロダインは分解して消失、人類の勝利というわけです。要はそれがヘテロダインの始まりのタネのようなものであり、遺伝子や設計図にあたり、それを基にボディを造り上げているという。エヴァにおける使徒のコアみたいなもんですが、ちょっと違うのは、フラクタルノットが「間違った場所を貫くと、そこから増殖を始める」という点です。
 
分かり易く云うと、急所を一撃で貫かないと死なないどころか、相手はゾンビのごとく増えてしまうということです。ちくちくダメージを与えるような蓄積戦法は無意味。ヘタに通常兵器では攻撃できない、適当な距離で対面してヘテロダインのフラクタル位置を探り、正確に撃ち抜く突進パワーが必要になってくる・・・
弱点位置が特定できて相手を抑えつけることができれば、杭打ち機のようなもんでもヘテロダインは倒せる、というか、戦車や航空機よりはそっちのほうがよほど向いている・・・・という案配で、今時の巨大ロボであるダイ・ガードが対ヘテロダイン兵器として必殺仕事人の役割を持つのは当然の成り行きというわけなのです。
 
その為のオプション武器として、ダイ・ガードには他のロボットにはあまり見られない独特な形状のパイル打ち出し兵器「ノット・バスター」と、これにフライホイールを追加して威力を増加させた新型「ノット・パニッシャー」が装備されます。腕に装備して、敵に向かって突き出す!!・・・・・だけ!というシンプルイズマイベストフレンズな武器ですが、これがヘテロダインには効果絶大。まず必殺。ミサイルやビームなどは効かない相手なのですから、正解です。さすがに民間企業。無駄な金を使いません。
 
 
とにかく、「ヘテロダイン」を倒すには「ダイ・ガード」が一番。
何事も、専門家、プロに任せた方がうまくいきます。お金さえあれば。
 
 
・・・・・以上、ちょっとタルタル風味でしたが、この説明も伏線なので侮らぬように。
そういえば声優さんのことも一つ。この会社の経理部門の責任者の声は「くじら」さん。
あのオバちゃんダミ声で金銭のことを云われるとやたらなリアリティが・・・・・
 
オープニングとエンディングの歌もけっこう好きです。ビデオなどで借りて見る場合、舞台が舞台で、設定が設定なので、1,2話だけだと、心の揚力を得られないかも。
ある程度話数を見ると、ぐぐーと盛り上がってくるんですが。よけーなお世話ですがまあ、念のため。
 
 
では、本編です。
 
 

 
 
「それにしても、ロンド・ベルはなんでお台場なんぞに寄ったの?単なる補給・・・じゃないんでしょ」
エヴァを運ぶ巨大ブースター付き全翼機の操縦後部席で葛城ミサトは隣のロジャー・スミスに尋ねた。よく仕事の出来ることで、交渉人は極秘のはずのロンド・ベルの停泊地まで突き止めていた。そこをエヴァ三体とビッグオーとでアポもなくいきなり押し掛けようというのだから驚いたロンド・ベルに敵襲と間違えられるかもしれないが、まあ、そのときはそのときだった。臨機応変なロンド・ベルは捕虜にして洗脳したわけでもないのによく戦場で仲間を見つけてくる。なし崩し的に味方になる、なってしまう、なってやる、というのも選択肢のひとつではある。・・・・ちなみに、エヴァの数が足りないのは、ビッグオー用に全翼機を譲ったためで、電力を気にしなくともよいエヴァ初号機が、「走って」ついてくることになった。これを碇シンジ以外に命じたなら単なるイジメである。
 
しかし、相手はロンド・ベル。またいつ何時浮上してどこぞへ飛んでいってしまうか分かったもんではない。とにかく急いで現地に駆けつけねばならない。渡りさえつけてしまえば、あっちから収容してもらえばいいのだし。それにしても、第二東京お台場あたりで良かった。これが巨大ロボットを製造して整備して改造するナントカ基地とかが行き先であればこんなアポなし参入もちょっと考えて二の足踏んだところだった。
 
 
「<ヘテロダイン>という巨大生物をご存じですか。いや、正確に生物なのか分かりませんが、あのロンド・ベルが仕留め損なった、生きた災害・・・・」
 
「怪獣でいいっしょ。なんかこのごろ、あっちこっちでポコポコ出現してるみたいね・・・・でも・・・ロンド・ベルが戦ってたのは初耳ね・・・・負けたの?」
 
「ドロシー、例の資料を。・・・・この通り、ヘテロダインには”特殊な弱点”がありましてね。それを知らずに戦えばそうなるでしょう。良くも悪くも単純な力押しに慣れていますからね、彼等は」
 
「フラクタルノット・・・・ふうん・・・(・こんなもんまで揃えてるわけ、いやー味方でよかったよかった。これならエヴァの参戦待遇も赤マル期待していいわね)」
 
 
「まあ、その時は間一髪というところで現れたダイ・ガードが一触即発の間に割って入り、ノットパニッシャーなる対ヘテロダイン専用兵器で消滅させています」
 
 
「・・・・なんちゅーか、熱血ねえ。あのロンド・ベルを前にして。並の度胸じゃないわよ。数々の悪を倒してきたスーパーロボット軍団の獲物を目の前でかっさらうなんて・・・・・あ、分かった。パイロットは世界で一番不幸なクリスマスをおくったりする、ブルームーン探偵社でブレイクしたりしたあの俳優でしょう?」
 
「・・・・資料によると、21世紀警備保障の広報二課に所属する、つまりはサラリーマンのようですね。二十代の若者ですよ。俳優でもなければ軍人でさえない・・・しかし、その手際にロンド・ベルは大いに惚れ込んだようです。これからも予想される対ヘテロダインの切り札として、ロンド・ベルに参加するように要請したようです、ね」
 
「ふーむ、ヘテロダインは強力な電磁波に寄ってくる性質を持つ・・・・か。コンバトラーVだのボルテスVだの超電磁な主力を使って戦闘してたら背後から扱いづらいヘテロダインに追撃される・・・・・まあ、ヘタをすると部隊総崩れ、かも。今年は悪党の出来も良かったし、ヘテロダインが大量発生する年なのかもしんないし、怖がるのも無理ないか。
 
で、ネルフの、エヴァの参戦は断ったくせに、一民間企業の、ダイ・ガードには、頭を下げて仲間になってくれ、とお願いするワケか・・・・・ふうん・・・・・」
 
面白かろうはずもない葛城ミサト。絶対に面白くない。全然面白くない。まあ、確かに使徒は力押しでもけっこう倒せたりするけど・・・そりゃないんじゃないの。
民間の力を求めるくせに、特務機関の力を退けるその図式が気にくわないわけではないが。
 
でもまあ、そこまで分かれば考えようによっては、エヴァの参戦待遇もかなりアップできるかもしれない・・・・・なんせ乗り物ロボと違ってエヴァはパイロットと神経シンクロする人造人間。細かい作業の精度は・・・・パイロットによるけど・・・比べものにならないほど高い。日向君的に表現すると、スタープラチナ並に高い。渚君の四号機かレイの零号機なら一撃で急所を貫くなどたやすいこと。
となると、武装はレイピア、針状のものがよいわけか・・・・・ヘテロダイン退治はダイ・ガードの独壇場にはならないわけですよ。ふふふ。そのへんをアピールすれば・・・・
ポジティブというか、超しぶとい思考の葛城ミサトである。
 
 
「ロジャー」
R・ドロシーが無表情に声をかける。アンドロイドだけあって、一切のニュアンスを欠いたその声はなんの連絡であるのかまったく察しがつかない。
 
「なんだね、ドロシー?」
それは雇い主のロジャー・スミスも同様であるらしい。他人には分からなくともこういう場合、普通、二人は心が繋がっていたりするものだが。果たして、良い連絡なのか悪い報告なのか。
 
・・・・・まさか!二人のやな予感は的中する。
 
「ロンド・ベルが緊急発進したわ。ミノフスキー粒子を大量に散布しながら高速で。なにか事件が起きたみたいね。行き先はノーマンも分からなかったわ」
 
「ええっ?!」それではお台場にいく理由はなくなってしまう。なんせ相手は神出鬼没のロンド・ベル。しかも、独立性が高いだけに行動パターンがひどく読みにくい。「とにかく敵をやっつける」くらいの思いつきで行動しとるんじゃないか、というくらいに大極的な戦略一貫性がないし。相手の罠にはまることはあっても罠にかけることはめったにない、というところからもそれが分かる。
 
「民間企業を相手にしては、参戦交渉も手間取ると思ったのですが・・・・予想外の速さでまとまりましたね」
人ごとのように云いながらも内心、驚いているロジャー・スミス。21世紀警備保障の大河内社長がトップの権限で判断したのか。それにしても速い・・・・・戦時の準備が整っている軍隊ならばともかく、以前から用意周到に乗り込む準備をしていたかのような。
ウーム・・・・
 
「どうすんの、ロジャーさん」
読み違えを責めているわけではないが、口調が恨みがましくなる葛城ミサト。
赤木リツコ博士ならてきとーにあしらうとこだが、なんせ雇い主である。
 
「まずは予定通り、お台場に降りましょう。情報の再収集が必要ですし」
ロンド・ベルがどこに行ったのか分からないと追いようもない。・・・・・これが、いっぺん断られているのでなければ、普通に通信でどうしかしようもあるのだが・・・・
できれば仲間にしたくないようなのだ。なんとか直接、機体をもって押し込むしかない。
一番いいのは、苦戦しているところを通りがかって、タイミング良く助太刀することだが、そう簡単に世の中うまくできていない・・・・。
 
そこまで考えて、ロジャー・スミスはふと、「あること」に気づいた。
 
葛城ミサトがあまりにあっさりと決めて、仲間であるパイロットもあまり抵抗なくそれを受けて入れていたので、あまり気を配らなかったのだが。
 
 
「ところで・・・・ビッグオーを運んで頂く代わりに、陸上を走ることになった、あの紫の、角の生えた機体・・・・初号機でしたか・・・・あの子は大丈夫なんでしょうね?」
 
「ああ、シンジ君の初号機ですか。大丈夫ですよ」
言い切る割には、子供のパイロットの中で、あの少年が一番頼りない感じなのだが。
単に走る、とはいえ街中や道路を陥没させるわけにもいかないので、被害の少なさそうなところを選んで駆けているのだが、確かに重量級のビッグオーに比べれば速いが、それでもはるかに後方においてけぼり状態だった。資料によれば、彼のエヴァ初号機がいわゆる<主人公機>であるはずだったが・・・・・この扱いは・・・・・資料に誤りが?
 
「他の子達がナビゲートしてますから、途中で逃げ出すとか、迷うとか泣くとか、そういうことはないと思いますよ」
惣流アスカが叱咤し、綾波レイが冷静に現在位置と進行方向を指示し、渚カヲルが励ます。
精神コマンドに効果範囲距離はないので、いくら離れていても大丈夫。まさに友情。
 
「い、いや、そういうことではなく、あの機体は目立ちますから途中で敵に発見されたら」
心配する方向があまりにも違いすぎるだろ!とつっこみたかったが、相手は雇い主。
じっと我慢のロジャー・スミス。これを聞いても涼しい顔のR・ドロシーが羨ましい。
交渉に入る前に、児童相談所に寄った方がいいかもしれない・・・・
 
「そうなったら、ぴんちに陥っているところをロンド・ベルが風のように現れて助けてくれるかもしれませんね。考えてなかったけど、それはそれで、仲間になるいいチャンスかも」
 
さすがに、葛城ミサトも真面目にこんなことを考えたわけではないし、望んだわけでもない。あくまで冗談だ。これというのもロンド・ベルが悪いのだ。人の話を聞く前に逃げるなんざ、最低だ。(究極的主観的思考・・・・・それでも、観測者がいなければ事象は存在できない)
 
 
だが。
 
 
まさか、その通りになってしまうとは・・・・・・・ゲームのシナリオじゃあるまいし、
夢にも思わなかった。
 
 

 
 
地上を単機でミサトたちを追走する碇シンジとエヴァ初号機。その足音と異形の存在感はすぐさま悪のミケーネ軍団に目をつけられて襲撃される。だが、そこはエヴァ初号機「はやく追いつかなくちゃおこられるんだけど」と孤軍奮闘でゆく道を塞ぐ邪魔者をたたきのめす。
そこを通りがかったロンド・ベルはその様子にぞっこんラブのふぉーりんラブ!!
すっかり気にいって、碇シンジをアーガマに収容してしまう。残り物には福がある、たなからボタ餅的にロンド・ベルの戦列に加わって、当初の予定をはたしてしまった碇シンジ。
 
すぐさま、自分たちも合流を狙う葛城ミサトだが、お台場にて思わぬ足止めを食らい、しかもアーガマは緊急の案件で一気に国外に出てしまう!。碇シンジを乗せたまま。
 
戦場で引き裂かれるチルドレン。変わり者が多いアーガマの中には「碇シンジがいい」という物好きもいた。LASやLRSを超えた、異文化恋愛の始まりか?
なんせ、おまけですから!
 
 
次回、「スーパーロボット七つ目大戦α」・・・・
 
 
「君の名は ルート」または「ダイ・ガード ルート2」