スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<ZZZ(トリプルゼータ)引き取り〜金色の印鑑ルート>
 
 

 
 
新兵器ZZZ(トリプルゼータ)を受領するために、クワトロ大尉率いる”印鑑チーム”・・・・・が乗っているシャトルが月のアナハイムに向かっている。
 
アナハイムというのは、アナハイム・エレクトロニクス。いろんなガンダムを造っているところで、兵器商であり、あまりキャラクタ的に富野的人物がいなかったのであろう、あまり戦の前面にでてくることはないが、戦車の砲塔造りで政治家なんぞ問題にしない法皇なみのどえらい影響力を誇ったクルップ社のようなもんである。ニュータイプというパイロット、人間の進化の力が生かされるのは哀しいかな、やはり新型機体があってこそ。
そして、大量の戦果を挙げて社名を轟かすには、またアナハイムの方でもニュータイプの存在を必要としていた。いくら大金を積まれても、パイロットがニュータイプでないのなら「最新型のくせにザクに負けたじゃねえか金返せ!!」ということになるのがオチ。
それでも、最新型、しかも「Z(ゼータ)」の名を冠したとなれば、それなりの値がつく。
それがロンド・ベルのところに回ってきたのは・・・、擁するニュータイプの質量経験はもちろんのこと、だが、このクワトロ大尉の「財テク」能力によるところが大であった。
クワトロ大尉・・・・聞き慣れるまではかなり奇異に感じる名前のこの人物、碇シンジやアルフィミィが「桑畑にいるトトロ」を連想した、剣鉄也をして「(味方のときはともかく)敵にまわすと恐ろしい」といわしめた、ロンド・ベルが何をおいても味方に引き込んだサングラス、金髪、赤の軍服ノースリーブ、衿立て、の正体はシャア・アブナブル。
アムロ・レイの永遠のライバルであり、元ジオン軍、未来のネオジオン総帥である。
パイロットとしての腕前は「連邦の白い悪魔」ことアムロ・レイとほぼ互角。
だが、決定的に勝っている部分がある。これが、この金勘定・財テク能力である。
美形で凄腕パイロットで金勘定に長けているなどというのはまさに神に逆らっているような感じだが、そのあたりがロンド・ベルが彼を必要とし、周囲の階級なんぞくそくらえのロンド・ベル熱血パイロットたちが一目も二目も置く秘密であった。
もちろん、表だってそんなことは宣伝されないわけだが、ロンド・ベル歴が長いマジンガー一家などはちゃあんと知っているのである。
ちなみに、アムロ・レイにはその才能が壊滅的にない。技術があって機体能力を見抜けても代金支払能力がなければ機体は貰えないわけで、クワトロ大尉がこの印鑑チームを率いているわけなのだが・・・・
 
 
 
エルピー・プル、プルツー、フォウ・ムラサメ、ファ・ユィリィ、リィナ・アーシタ、エル・ビアンノ、ルー・ルカ、セシリー・フェアチャイルド・・・・、
シャトル内部では異様に少女率が高かった。
 
「あの・・・・クワトロ大尉」
引率のクワトロ大尉を除いて、野郎はシャトルを操縦するヒイロ・ユイと自分だけであるところのイーノ・アッバーブは居心地悪げに問うた。後部席では少女達の明るいざわめき。
ロンド・ベル内で誰と誰がくっついてるか、または今後くっつくか、などという話は。
やはり注目は、新顔である碇シンジとアルフィミィ・・・「癒し+脱力系カップルよねえ」だったりするのだが・・・・・
 
・・・・なんというか、場違いというか。なんで自分が連れてこられたのか、今ひとつよく分からない。熱血パイロット連中に比べればそうだろうが、事務処理秘書役としてならもう少し適当な・・・それこそ女性を同行させればよいものを、と思うのだ。ヒイロはそれはモロに護衛役というか完璧完全にそれというか、同性として傍にいて気が紛れるようなお気楽な奴ではないし。イーノ・アッバーブ、といったってどこ出身だかすぐに応えられる人はいないだろうし。あ、ちなみにシャングリラ出身で、ジュドーたちの仲間です。
もちろん、第一線にたてるような戦闘能力はないし、他のパイロットを押し退けてでもどうしても戦いたいってわけでもないから、専用機もないし、まあ、いいんだけど。
月まであと少しになってから、なんで僕を連れてきたんですか?なんて聞いても仕方がないので、これから受け取りにいくZZZについて尋ねることにする。
まさかこの科学宇宙時代に、「起動するために、キミの新鮮な心臓が必要なんだ」とか言われることはないだろうし。「サイコミュの強度が強すぎてパイロットとの間に緩衝材になる者が必要なのだ。キミは一応、ニュータイプ技能もちだからな」と言われることなど考えもしないイーノである。
 
 
「トリプルゼータってどんなタイプの機体なんですか?」
もちろん、イーノ・アッバーブは素直な善人に入る男の子であるから、「いやー、我ながらナイスな導入説明ゼリフだなあ」などといううがったことは考えない。これがマセガキまっただ中の他の少年パイロットなどだと、「ねー、クワトロ大尉、なんでこんなに女の子連れてきてんスか?」なんてことを真っ先に問いただすのだが。
 
 
「む・・・・そうだな」
頭の中でそろばんを弾いていたが、そんなことはおくびにも出さずにこの坊やの質問に答えるクワトロ大尉。人間、黄金だけでは生きていけない。息抜きである。
 
 
「端的にいうと、”対コロニー落とし”ガンダムといったところか。タイプとしては射撃系。格闘能力はほぼ零にちかい、狙撃能力に特化された機体だ。これ一機でコロニー落としに対抗できる・・・・」
 
 
「ム・・・・」
今まで無言無表情を貫いていた操縦席のヒイロがわずかに眉をひそめる。
 
 
「な、なんか凄そうですけど・・・・・・・でもそれって、敵がコロニー落としをやるまで、出番無しってコトですか?」
それをやる当人がこうして目の前にいるのだから皮肉といえば皮肉の極み。
あなたがここにこうして変なことを考えなければ、いらない機体、ということになりゃせんかそれ、と坊やのイーノは声にはせずに。
 
「名探偵も真打ちも最後に出てくればいいのだからな・・・・・最終回だけに出てくるガンダムというのも・・・・たまにはよかろう・・・・・」
本気なのか、美形にそぐわない冗談なのか・・・・・クワトロ大尉は薄く笑う。
 
「で、どんなビジュアルなんですか?あ、それよりもサイズは?けっこう大きそうですが・・・・アーガマに積める、んでしょうね」
 
 
「・・・・・・・・・・」
なぜか沈黙。
 
 
「クワトロ大尉!?」
 
「・・・そのような小さな砲ではコロニー落としに対抗できんよ。元来、地上で使用する機体ではないのだ。アーガマに積むメリットもない」金髪を掻き上げて断言する。
 
「まさか廃棄されたコロニーレーザー砲にガンダムの頭をつけただけ、とかいうアムロさんが自殺するような代物なんじゃあ・・・・・・!」
デンドロビュウムの拡大版が鉄仮面のラフレシアなら、それをもういっぽ進めた感じのものを想像するイーノ。
 
「・・・・そんなものはガンダムと呼べない・・・・・・」
考えることは同じらしくヒイロが珍しく不満を露わにした。確かにそれではあまりにあんまりだ。
 
 
「まあ、待ちたまえ・・・・」若者二人を大人の余裕で制するクワトロ大尉。
「ZZZは従来の通り、戦場で用いる機体ではない・・・・・・その真の価値はマップ兵器を凌駕した・・・・”インターミッション兵器”であることだ」