スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<コマンダーゼロルート>
 
 

 
 
神々が滅び去ったかのような黄昏時・・・・
 
 
トランシルバニアあたりの、いかにも吸血鬼が出没しそうな地域の、なおかついかにも悪の吸血鬼が住んでいそうな古ぼけた城にむかっててくてくと歩いていく六人の若い男女。
これから血と悲鳴と恐怖のホラームービーでも始まりそうな人数構成ではあったが、そういうことにはならなかった。というより、なりようがなかった。なぜなら・・・
 
 
「なんで毎回毎回余が負けねばならぬのだ・・・よく考えたらこんな不自然な話はないではないか!ここだけの話だが、卿らもそう思うだろう!!」
 
ここだけの話、といいつつ拳を高らかにするあたり、育ちがいいのか陰謀には向かないというか、タイツ姿のフランス貴族に刀のような襟巻きをつけた格好の、角の生えた宇宙人・・・・ボアザン星地球征服軍司令官・プリンス・ハイネルは憤懣やるかたなしと同行者らに語りかけた。地球を征服しようというのだから、地元の怪異など恐れるにたりない。
 
苦手なのは毎回邪魔してくれるボルテスVとロンド・ベルくらいなものである。
 
ちなみに、スパロボも回数を重ねているのでネタばらしなるのかどうか、プリンス・ハイネルはボルテスVのパイロット剛健一たちの腹違いの兄貴にあたる。いきなり「ハイネル兄さん!」ときて敵ではなく仲間だったり、フラグをたてて仲間になったりもすることがあるが、この七つ目大戦では「敵」である。しかも毎回毎回やられてかなり闘志を燃えたぎらせているタイプの「スキル・逆恨み」つきの厄介な敵となっている。
その傍らにはリー・カザリーン。ボアザン星屈指の生物学者で将軍の地位を持つ美女であり、ハイネルの乳兄弟。獣士の素体となる生物を育成したりする。ちなみに、密かに彼を愛していたりするわけである。もちろん、こちらにも立派な角が生えている。
 
 
「確かに。ここだけの話だがそう思うぞ」
 
と、ハイネルと同じ声で応じたのは地球から34万光年離れたキャンベル星からやってきた、もちろん友好条約を結ぶためではなく侵略するためである、大将軍ガルーダ。
非常に性格が激しく、非常に冷徹。強者とキャンベル星人至上主義者であるが、コンバトラーVとロンド・ベルに毎回やられて己のアイデンティティに揺らぎが生じているクール美少年である。ちなみに、上と同じくネタばれになるのかどうか分からないが、ガルーダの正体はショッキングなことに地球侵略軍の総大将・オレアナの息子である、という疑似人格、記憶をもたされた「ロボット」なのである。鳥人間タイプに変身できたりもする。
声優は市川治さんである。このところ、地球侵略がうまくいっておらんのでキャンベル星からは第二軍を送るかどうか、そうなれば当然更迭である・・・・、そんな重圧も与えられているので、半身がない休息区司令ミーアを抱きかかえながらあまり元気がない。戦い一本槍のガルーダをこれまた密かに愛している彼女はロボットだったりもするが、恥じ入りながらも幸せそうだった。もちろん、これは気分転換のためのピクニックなどではないが。これから向かう先の”取引相手”が、なぜか「女性同伴」を指定してきたからだ。
 
 
「確かに。地球人どもは卑怯卑劣な手を使う輩だが、それだけでは納得できん。戦力的に余らはあの者どもを確かに上回っているはずだ・・・」
 
と、理知的な悩ましいボイスで、声優は同じ市川治さんなのだが、応じるはバーム星地球攻略司令官・リヒテル提督である。その傍らには戦闘ロボを設計したりするライザ将軍が。美形三人美女三人、華やかなりし、悪の華、である。
が、リヒテル提督の厄介なところは本人の言うとおりに自分は悪ではなく、奸計をもって父親のリオン大元帥を殺した地球人こそ非道卑劣な輩であると信じている点である。
実のところはリオンの地位を狙うオルバン大元帥というバーム星側の陰謀暗殺というか政治闘争だったりするのだが。美形なだけにその思いこみパワーは凄まじく、「地球人への攻撃修正+40%」くらいある。これはメガノイドに対する破嵐万丈なみである。
しかし、個人的な性格は非常に高潔で、常に地球への移民を切実に待つバーム星十億の民のことを考えている・・・・すぐカッとなったりするのは若いせいであろう。部下や仲間の信頼はそういうわけで非常に厚い。エリカという美しい妹がおり、それがよりによって宿敵である闘将ダイモスのパイロット、竜崎一矢と恋仲になってしまうという苦悩のシェイクスピア入っている提督でもある。
 
 
それはそうとして、三人とも地球侵略軍のトップであり、こんなところで護衛もつけずにてくてく歩いていていい身分ではないのだが・・・・・ついでにいうなら敵の敵は味方、とはいうが、同じ地球征服を目的をしている以上、そう簡単に共闘できる仲でもない。
はっきりいって信用できたものではない。道が同じであるからしょうがなく同行しているにすぎない。気性の激しいガルーダなどは「いい機会であるからここでキャンベル星の威光を見せつけてやるか。どこの星が宇宙スペース№1なのか」などと腹の底で戦国魔神なことを考えていたりする。なんせ葵豹馬の両腕をぶった切ったこともあるほどに武術の腕が立つガルーダである。ロボットアニメなのに肉弾戦でカタをつけようとしたガルーダである。得物である大鎌を閃かす・・・・が、それをやれば背中から残った一人にやられる可能性もあるのでやめておく。さすが将軍だけあってバカではないのである。
 
 
三人に共通しているのは、ロンド・ベルに毎回負けている、ということだった。
 
それも、なぜ負けるのか分からない。彼らはロンド・ベルを上回る戦力をもっている。
数といいパイロットの質(というと語弊があるが、要は戦闘のスキル、経験値)といい、たまには意表を突く作戦をたてたり、新兵器を投入してみたりするのだが、勝てない。
 
負ける。天の時、地の利、人の和、戦にはそれが大事であるが、それは好き放題に戦を仕掛けることができる彼らにある。ロンド・ベルから打って出るのは最終決戦くらいなもの。
 
負ける。負ける。負ける。
 
戦術的に負ける要素はないはずなのに、負ける。これはよほど指揮官が無能だととられても仕方がない。だが、彼らとて他の星ではそれなりの戦果をあげているのだ。
なんのてらいもなく、真正面からぶつけるだけで勝てる戦力を擁していながらなぜ?
どんな戦闘においてもかならず相手より多い戦力を用意してきた。戦闘は数である。
おまけにロンド・ベルは余裕なのか、手持ちの全戦力を投入しないことがよくある。なにか地球の掟でもあるのか、規定数以上は戦闘に繰り出してこないのである。不思議だが。
 
それなのに。
 
ロンド・ベルの作戦勝ち?バカを言え、奴らにそんな策士がいるものか。いるのはひたすら熱血バカだけだ。寄せ集めらの連中にそんなに高度な作戦など実行できはしない。
ではなぜ?
ロンド・ベルのスーパーロボットが非常識なほどに強力でしぶといことが挙げられるだろう。だが、それだけでは説明がつかない。こちらのどれい獣や獣士、戦闘ロボも強いのだ。連中に確実にダメージを与えるだけの力がある。それなのに、最後には負ける。
 
 
それはなぜか。
 
 
分からない、といいつつ、実のトコ、分かってはいる。ただ、認めたくないのだ。
悔しいのだ。”そんなもの”に負けていたことを認めるのが。三人ともなんせプライドが高い。愛するそれぞれの男たちの苦悩を想い、それぞれ顔をみあわせる女たち。
 
 
 
精神コマンドである
 
 
 
それがあるから、ロンド・ベルが勝つのである。ろくな戦術もないくせに、倍する戦力を敵して勝てるのである。さんざん破れてきた彼らだからこそいえる。逆に言えば、”それさえなければ”ロンド・ベルなどコテンパンである!!と。
 
だが、そんなことができるのかどうか・・・・・・・三人を招いた主は、「それができる」と。そのためのマシン「精神コマンダーゼロ」を売ってあげましょう、と取引をもちかけてきた・・・・・ただし、女性同伴で、と。一体何者であるか、正体は分からない。
 
強力な兵器を売ってあげましょう、などというなら三人とも鼻にもひっかけなかったであろうが、この申し出には心が動いた。その怪しさ、危険性は百も承知の上で。
もし、万が一、そんなことができたなら・・・・・・、ロンド・ベル、いやさ精神コマンドの前に苦渋をなめさせられてきた彼らがそう考えて願って、ここまで足を運んだとて無理もなかろう。純粋の戦闘力ならば、我らが勝つ!つまりは、これで正々堂々と闘うことになる、いままでは奴らの奸計にハメらえていたのだからして・・・・理論武装も終えて招待主の待つ城の前に立つ六人。女たちは実はここに来るまで何度も諫め、止めたのだが、男たちの足は止まらない。他の女を連れてゆく、などといわれたら我慢もならない。
こうなれば地獄の底まで一緒にと。
 
 
 
ゴゴゴゴゴゴ・・・・
 
 
城門が、開いた。