スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<THEビッグオー ルート>
 
 
に、突入する前にちょっとした予備知識のコーナー。(なんせおまけですから。サービスいいでしょ?)
「THE ビッグオー」は四年前くらいにファーストシーズンが放送されたサンライズのロボットアニメ。(原作 矢立肇 監督 片山一良 スーパーバイザー さとうけいいち)
「我、神の名においてこれを鋳造する。汝ら 罪なし・・・」という決まり文句とともに地下より出現する巨大メガデウス・ビッグオーとそれを駆る交渉人ロジャー・スミスが謎を解き敵を倒すという、40年以前の記憶を住民全てが失っている、など謎めいた背景世界をもちながらもオーソドックスな展開をする愛しいような古潭の色のある、ピカピカするものが一切ない、ある意味お子さまにも安全な?アニメである。しかし、このスタイルをガキンチョには理解できまいなあ。わはは。オープニングとエンディングの歌がまたいいんだ。これが。
 
言うなれば
レトロのかび臭さより、レトロの芳醇さがある、ウイスキーみたいなアニメ。
 
まずはレンタルビデオで一話分借りてみるのをお勧め。それで幸福な酔いを感じたなら
全巻借りればよい。サンテレビとか石龍県でやってない系列局でセカンドシーズンを現在放映しているので、その県にお住まいの幸運な方は観られますな。いいなあ・・・。
漫画も出てます。講談社マガジンZで連載中の単行本。(作・有賀ヒトシ)全六巻。連載再開したので、そちらの「ロストメモリー」・・・・内容的には五巻と最終巻の間、5,5巻になるという・・も、いいです。
リンクをつないでキャラクターの画像を頭にいれてもらえばいいんですが、まあ、興味の出た方はビデオ屋で本物を観た方がよろしい。そちらのほうが正解。キャラクターの声のイメージとかもありますしね。ちなみに、執事ノーマンの声は冬月副司令の方だったり。
 
 
 
さて、おまけ本編をどうぞ
 
 
<ビッグオールート・・・・・ショウタイーム!!>(ウは上げ気味に)
 
 

 
 
世界的に悪党の出来が良かった今年、エヴァという無敵の戦力を擁しとるので、ともに悪を倒そうとロンド・ベルに参戦を申し込んだネルフ・葛城ミサトであったが、その申し出は「なぜか」「不思議で」「謎なことに」断られてしまう。納得がいかないというより、これは何者かの策謀であると灰色の脳細胞と豊かな度胸で見抜いた葛城ミサトは短気を起こしてロンド・ベルに反旗を翻すよりここは冷静になって腕のいい交渉人(ネゴシエイター)に間に入ってもらい、もう一度ロンド・ベル参加の意志を告げる、という段取りを踏むことにした。
 
 
「で。この方が四十年前に住民全てがそれ以前の記憶を失った街、パラダイム・シティーからいらした腕利きのネゴシエイター、ロジャー・スミスさんよ」
 
「なぜ、この席に子供を?」
さすがに優秀なロジャー・ザ・ネゴシエイターはつっこみどころが違う。まずは交渉せにゃならんのは目の前のこの女性らしい・・・・やれやれ。
 
この女性・・・・雇い主クライアントになるかもしれないこの葛城ミサト・・・・特務機関の要職にある以上、この赤いジャケットでミニスカというカジュアルな外見にダマされてはいけないのだろう・・・だが、赤だの白だの青だの黒だの奇妙な上下一体化した服に身を包む少年少女を同席させるあたり・・・まあ、かなりの変わり者であるのは確かだ。
 
その卓越した職業的観察眼で奇妙な格好の少年少女を見る・・・・。にしても凄い格好だ。
これで街を歩かれたらかなり困る・・・犯罪を助長することになるだろう。いや、そうではない。中身の問題だ。中身の・・・・人間はその立ち姿で多くのことが推察される。
その者が歩いてきた人生が出る・・・・。
 
軍隊の訓練でも受けたらしい凛々しいのある赤いスーツの少女、
 
陽の光より月の光を受けて育ってきたような白いスーツの乙女、
 
・・・・・どう目を凝らしても街で遊び学校に通うだけの普通の少年にしか見えない青いスーツの男の子、二人の女の子より場違いな雰囲気なのはなぜだろう?
 
・・・・老成させた魂を若い肉体に秘儀を用いて一時的に埋めたような・・・人の規格を解除された、神話の挿し絵に登場しそうな、黒いスーツの少年・・・・・・
 
黒の服の銀髪の少年はなかなかよいな。黒、というのがよい。
 
独特な矢印まゆげを困った感じでひそめるロジャー・スミス。もちろん、相手に悟られぬように。女性と名がつけば無条件に屋敷にいれる信条を持つ男だけのことはある。信条と言えばもう一つ、ロジャーの屋敷で働く者は全て黒服を着ることが義務づけられている。渚カヲルに目をつけたのは、そういう意味である。ネゴシエイターの名誉のためにつけ加えておく。彼には世間に隠さねばならない性癖などない。
 
 
「ネゴシエイターさんも、アシスタント・・・・かな、女の子を連れていらっしゃるじゃない」
にこ、と言い返す葛城ミサト。初めから「ああ?!エヴァにのって命かけるのはこの子だから同席の権利はあるわ。子供扱いすると痛い目みるわよゴルァ。こっちは雇い主よ!」などと言わない。彼と交渉するのではない、彼には交渉して「もらう」のだから。・・・・ロンド・ベルと。
 
ついでにまー、今回の「陰謀」を暴いてもらわないと。敵方の戦力を削ぐ策略かもしれないし。
 
そういうわけで、温厚に、つと、とロジャー・スミスの後ろに立っている黒いドレスの少女を指さす。エプロンとかはつけてないからメイドじゃあるまい。まあ、仕事場にメイドを連れてくるバカもいないか。人形のように整って美しい顔だが、ちょっとへんだ。
少し、レイに似ている・・・か。
 
「あなたも座ったら?礼儀正しさの邪魔をする気はないけど、この子たちも座ってるし、その方が落ち着くわ」
 
 
「はい、そうさせてもらいます」黒いドレスの少女は、葛城ミサトにそう勧められるとぎょっと目を見張るほどのスピードでロジャー・スミスの隣に座った。それでいてガタガタという不様な音はしない。機械のように正確の座り方、というのがあれば、これがそうだ。
ちょっとあっけにとられたのが、黒いドレスの少女がロジャー・スミスの許可を一切得ずに遠慮もなく葛城ミサトの言に従ったことだ。なんだろう?この二人の関係は。
座る一連の動作が終了すれば、黒いドレスの少女はもう一時間も前からずっと座っていたような顔をしている。まさに人形だ。碇シンジたちもすこし驚いている。
 
 
「ドロシー!」
その性急は無礼にあたる。事実、依頼人を驚かせているのだから。矢印マユを思い切りひそめて叱るロジャー・スミス。しかし、それは冷静そうなネゴシエイターには似合わぬ性急な、感情が表れていた。・・・・・あれあれ、なんなんだろうこの二人。ちょっち面白くなってきた葛城ミサト。長らく離れていた兄妹とか、都合で数ヶ月まえから一緒に暮らしはじめた叔父と姪とか?
 
 
「だって、クライアントの命じたことだもの。従わないわけにはいかないわ」
そっぽも、唇もとがらせることもなく、真っ正面をむいて、しごく当然のことだろう、という、とくになんの感情も働かせる必要もない、という顔でドロシーと呼ばれた黒ドレスの少女は答えた。確かにまあ、その通りなんだけど・・・・・言葉の綾って知ってる?
 
 
「あんたの生き別れの妹さん?」「・・・・・わたしに妹はいないわ」
惣流アスカが綾波レイの横顔をつつくように。
「うーん、クールだなあ」感心している碇シンジ。
「彼女は・・・・もしかして」渚カヲルはドロシーの正体に気づいたようだ。
 
 
「でしょう?ロジャー。違うの」
 
 
「う・・・・・うぐ・・・・・ま、まだ依頼を受けると決めたわけではない」
交渉人としてこんな少女にやりこめられてどうすんの・・・・大丈夫かいな、と思いつつもこの矢印まゆ毛が聞き捨てならんことを言うので葛城ミサトは携帯を取り出すとエヴァの予備ゲージに置かれている鉄の巨人・・・「メガデウス」というらしい・・・・の姿を見せつけた。ちなみに、これが交渉人ロジャー・スミスの切り札「ビッグオー」である。
パラダイムシティーでは”ロボット”とはいわずに”メガデウス”と呼ぶのだという。
 
 
「あんたねえ、こんなもん一緒に持ってきといてそりゃないでしょ。依頼受けられないならケージの使用料金もらうからね」
とんでもないことを言い出してロジャー・スミスを追いつめる葛城ミサト。交渉人の予感は当たっていた。「口止め機密料金も含むから、そりゃもう目の玉が飛び出るわよ!」
 
 
「・・・・ロジャー、あなた、そんなことが出来たの?」
 
 
かなり真剣なまなざしでロジャー・スミスを見つめみあげるドロシー。天然か。
だが、そうではないことがいずれわかる。
 
 
「ムム・・・シンジに匹敵するマジボケ・・・・・やるわこの子・・・・」
「そうね・・・」
脅威を感じる惣流アスカと、なぜかそれに同意する綾波レイ。
「忍者マン一平じゃあるまいし、普通の人間にはそんなことできませんよ。ねえ」
 
 
「も、もちろんだ・・・わたしには出来ない」
 
普通の人間はしらんような碇シンジの大昔ネタで突き込まれさらに追い込まれるロジャー・スミス。ピンチだ。思わずビッグオーを呼びたくなるが、ここは我慢だ。
「日向君色に染まっちゃダメよ、シンジ君。将来、なにげなくヒドい目にあうから」
あわしている当人がいうのだから当確だ。
 
 
「彼女のことは説明してくださった方が・・・・いいと思いますよ」
 
会話が混沌の谷間へ真っ逆様に落ち込みそうなところを渚カヲルが舵をとることで救った。やはり、黒いスーツのこの少年は違う。ロジャーは己の見立てに改めて納得。
その柔らかく、知性と調和した優しさを秘めた赤い瞳。どんなに傷ついた人間をも信用させずにおかない、深い何かを感じさせる目がロジャーとドロシーを見守っている。
確かに、このままだと収集がつかない・・なにしにこんなとこまで来たのか。
秘密にするようなことではない・・・・・それに、こんな科学の砦のようなところの住民ならば、それに過剰反応して、彼女を、ドロシーを傷つけるようなこともないだろう・・。
 
 
ドロシーは、彼女は、アンドロイドだ。
 
 
だが、満員ギリギリのエレベーターに乗るのを躊躇するような、心もある。繊細な、心が。
彼女は、アンドロイドだ。だから、重たいのだ。抱えて走ったりすると、腰にくる。
ちなみに130キロある・・・・。
確かに、今のように単純というか素直というか、率直すぎる反応をしてムカっとくることもあるが、それは造られた外見以上に、人の世で過ごすまだ経験が少なく、幼いのだということを考えれば納得できる。こっちが深夜仕事で疲れて眠っているのに、昼過ぎになると高速ピアノ演奏で文字通り叩き起こしてくれるし、ブラックコーヒーしか飲まないと行っているのに、人間の栄養学を口にして、ミルクと砂糖をたっぷり入れてもってくるし、・・・・まだまだ言うことはあるが。
掃除は黙ってやるし、足は速いし、頭からライトは照らせるし、ビッグオーの操縦は出来るし、黒いドレスも似合うし、いいところも、多く、ある。
 
アンドロイドであるが、「守る」に値する女性だ・・・・
 
と、私は考えている。ならば・・・
 
 
「あー・・・・紹介がおくれましたが、私の助手であるR・ドロシー・ウェインライト嬢は、通常一般の規格で言う、あー、人間、ホモ・サピエンスではなく、アンドロイドなのです。しかし、優秀、かつ、迅速、そして、我が家で二番目に信頼する”人間”です」
 
 
「一番はだれ?」R・ドロシーが問う。
 
「もちろん、ノーマンに決まっているだろう!年季が違う。な、なんなんだ、その目は」
 
「別に。うちにはロジャーの他にはノーマンと私しかいないわ・・・」
 
「い!・・いや、あのその、・・・・”我が家”というのはそういう意味ではなくだね、ドロシー・・・だから、なんといっていいか・・・・」
口が命の交渉人がこれでいいのかいな?・・・・・という意地悪な視線がない。それを浴びせられることを覚悟するくらいに一瞬狼狽えてしまったロジャー・スミスだが。当然、その場合はケージ使用料を支払わされるのだろう・・・・
 
 
「やっぱり貴方に頼んで良かったわ、ロジャーさん」葛城ミサトが自分も安心、相手も安心させる大きな笑顔をうかべて言った。
 
「別に、”家族”に一番も二番もないでしょ、ドロシーちゃん」
 
 
「ドロシー・・・・ちゃん」
クライアントの馴れ馴れしい呼びかけに、どう反応してよいか、着席の時のような迅速が発揮できないR・ドロシー。葛城ミサトの言葉を噛み砕くには電子頭脳でもちょっと手間取った。それくらい、げんこつせんべいのように頑丈な”単語”だった。
 
 
「信頼性が判明したところで、さて、お仕事の話、しましょうか?」
 
 
「え、ええ!もちろんです。本題にはいりましょう!」
高らかに輝かしいプロの顔になるロジャー・ザ・ネゴシエイター。
この仕事は全力を用いたものになりそうだ。ビッグオーやノーマン、ドロシーの力を十分に借りた大仕事に・・・。プロの予感は当たるのだ。