スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<RAHXEHONルート>
 
 

 
 
 
教えて 強さの定義
自分貫くことかな? それとも
自分さえ捨ててまで まもるべきもの まもることですか
 
                   <坂本真綾・・・ヘミソフィアより>
 
 
 
いつものパターンであると、ここで作品紹介にいくのですが、今回は少し事情が・・・。
まずは主人公のことや背景世界のことよりさきに言っておかねばならないことがあります。まずは、この一点をすっきりさせておかないと、何がなんだか分からなくなる・・・・・石龍もまさか、こんなことは、こんなはずはあるまい、と気楽に考えていたのですが、世間は石龍が思っているよりも深かったようです。だから、まず最初に言っておきます。
 
 
 
「”さいたまジュピター”なんてのは嘘です」
 
 
 
と。本当は「東京TOKYO JUPITERジュピター」です。だから、知り合いに「ラーゼフォンの舞台って、”さいたま”なんだよなー」などと知ったかぶって大恥をかいたりしないように。
 
注意喚起が遅かったような気もしますが。
 
「そうだよなー、東京が消えるなんてのはありきたりだし小松左京だし、時代はさいたまだよなー、さいたまジュピター最高!」などと意地悪なアニメに詳しい友人にほくそ笑みされながら肩など叩かれたりしないように。
「さよならジュピター、にかけて、さいたまか・・・・言われてみるとSFかも」
アニメなんか見ない本読みの友達に誤った知識を教えないように。
 
 
・・・・と、ここまで書いても大半の方は「わはは。そんなのネタだろ」と百二十くらいに承知されてしまうのでしょう。テキスト系にしてはキレが足りぬのう、と精進せいよ、と言われるのも覚悟の上ですが。サバンナのガゼルは風の中、死ぬまで立ち続けないといけないのです。不完全なデータを書き変えながら進むのです。
 
 
そういうわけで、石龍に騙されないように、レンタルビデオ屋さんなどで「ラーゼフォン」を借りて鑑賞してチェックしておくのをおすすめしておきます。
というわけで、作品紹介はこれでおしまい。だって本物を観る以上の説明なんてないし。
声の演技など文章で伝えようもないですしね。石龍が一番気にいっているのは神名マヤ・・・主人公神名綾人の母親で青い血の組織MUの偉い人の声。冷血で冷静そのもので、それを劇中一切完璧に崩すことはないのですが、それでいて、子供を放置したような感じがない、思いの丈を集めても、力を振り絞っても、平温にあがることのない声の温度を知りつつ、語る口を閉ざさない・・・・人間の子を拾ってしまい、己に触れて凍傷にならぬように注意深く用心深く育てる雪女、とでもいえばいいのか・・・・
神名綾人くんは、基本的に闇も欠損もない普通の青少年で、ラーゼフォンをはじめとする巻き込まれた状況に対応するのに忙しくて、己の声を叫ぶのにはかなり時間がかかるので、彼を知るには彼を育てた母親像を理解した方が早いような気もします。
 
 
「できるなら・・・・私があなたを産んであげたかった」
 
 
と、こうやって注意喚起はしておきましたので、再び露骨に「嘘八百」なところが出てきても、つっこんだりせぬように。信じたりせぬように。きちんと、予習をする人は大丈夫なはずです。
 
 
(ちなみに、「ラーゼフォン」は映画にもなってますし、小説版やマンガ版も出ておりまして、微妙に設定が違うところがあります。マンガ版とアニメでは”美嶋玲香”の設定がどえらい違っております。如月久遠もかなり。ええ、そりゃ衝撃をうけるくらいに。その点は、ご承知おきくださいますよう)
 
 

 
 
さて。時は西暦2015年。
 
 
渚カヲルは単独で、”さいたまジュピター”内に潜入した。木星にも似た色彩の外敵の侵入を完全に防ぐさいたま全域を覆うバリアーフィールドもなんとか四号機の力を持ってすり抜けた。
 
 
葛城ミサトが強引に押っ立てようとしているロボット梁山泊、ドロン・ベル設立のためにさっさと北の大地にいかねばならないのに、なぜこのような単独行動を渚カヲルがとったというと、やはりそれはドロン・ベルのため、であるとしかいいようがなかった。
最終的には碇シンジのため、間接的には葛城ミサトのため、なのであるが、決して屋上でであった美少女二人の幻影を追いかけたわけではない。
あれほど派手な新聞広告をうっておきながら、集合地点に誰も来ていなかったら、ドロン・ベルの沽券にかかわる・・・というか、今後の活動がかなりやりにくくなる。名前が名前であるだけに、恥ずかしさ満点。まあ、二次案であったという「水木イチローズ」よりは多少はいいけれど・・・
 
渚カヲルにして、「だれもこないでしょう」と思っていたわけだった。
 
さいたまジュピターの内部に、巨大な神性の力を感じる・・・今は、深い眠りに・・・いやさ、それよりも深い場所、さながら卵の中で夢をみているような。
出来れば、それを味方につける。こちらの戦力はまだまだ足らない。
悪の軍団組織の目を惹きつけるに足る戦力でなければ援護射撃にはならない。
援護射撃をしくじれば、そのだけ最前線に立つロンド・ベルのシンジ君に危険が及ぶ・・・・・
大局的視点というやつである。ほかのことはどうでもいいんかい、という極大射程でもあるが。さいたまは東京のすぐそこであり、この悪の豊作の年に、さいたまを牛耳っている”さいたま総督府”がなんらかの動きを見せないとも限らない。むしろ、あの少女の幻影はこれから起きるさいたまの動乱の予兆ではなかったのか・・・・
 
渚カヲルがそう感じたのならば、それは電波ではないし、気のせいでも心配しすぎでも不安神経症による妄想でもない。断じて。
出来れば、にこにこ笑って歌でも歌っていたいのだが、そうもいかない。
愛する者は守りたい、と思うものだし、この少年の愛情の範囲はとても広い。
さだまさしの歌なみに広い。おおきな愛になりたい、あなたをつつんであげたい。
 
 
渚カヲルのさいたまジュピター潜入には、葛城ミサトもいい顔をしなかったが、認めた。
碇シンジのことがあるし、さいたまジュピターでは時間の流れすら異なっている、という話すらあり、内部の状況はまるきり分からず危機に陥っても応援など出せようもなく、危険すぎる。指揮官が百人いれば百人とも却下しただろうが、葛城ミサトは認めた。
地理的に21世紀警備保障の危険度を出来るだけ減らしておきたかったし、その上、「歌を愛する仲間を連れてきますよ」などと、渚カヲルがやけに自信ありげなのである。
結局のところはその微笑みに騙された、ともいえる。ロジャー・スミスがいれば怒っただろうが、彼はすでに北に飛んでいる。やめろといわれて素直にやめるタマでもない。
ただ、それは惣流アスカと綾波レイには秘密にされた。
 
エヴァ四号機は実のところは飛行可能であったが、大十字九郎の好意によって、飛行ユニット”シャンタク”を展開させたデモンベインに運んでもらうことになり、さいたままでひとっ飛び。「オレたちもついていこうか?荒事には慣れているし」と気のいい大十字九郎は投下直前にそんなことを言ったが、渚カヲルはやんわりと断った。「皆さんはもはや、我らの主戦力ですから・・・必ず帰りますけれど、それまでのことよろしくおねがいします」こう頼まれてなぜか、アルとエルザが赤くなる。
「ま、任せておくがよい!」「まかせるロボ!」。青春部活動なノリである。文化系の。
「ちと疎外感なのである。我が輩、理系であるからして」「・・・ってウエスト。なんで、てめえとエルザがまたしても乗り込んでやがるんだよ!!デモンベインは二人乗りだ!」
「九郎・・・今度はしくじるなよ」
そんなひと騒ぎに微笑して、渚カヲルと四号機は、デモンベインの手から離れて、
 
 
翔んだ。さいたまジュピター内部へ。ATフィールドが障壁を中和する。
突破にかかった時間は、十秒もない。わずかの時。しかし。
その間に流れていた膨大な「流れ」が、渚カヲルのプラグスーツの時計を音もなくねじ曲げ、押し潰し、圧壊させる。そこから、別の数字が浮かびあがる
 
 
年号表示・・・・・西暦1997年・・・・
 
 
赤い瞳が十八年分の時の涙を吸い込んだ。