スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
<碇シンジ的ロンド・ベル生活>
 
 

 
 
進軍途中で休憩していたとある廃村で不思議な少女に出会った・・・ところでミケーネ帝国に襲撃されてしまった碇シンジ。奮闘はしたが多勢に無勢、危ういところを暗天から稲光とともに現れた偉大な勇者グレートマジンガーに助けられ、礼とともに事情を話す内にもともとの目的であったロンド・ベル参加をあっさり許可される。なぜか、赤い般若ロボットを所有する謎の少女・アルフィミィも「わたしもねるふの一員ですの」などと嘘をついて同行することになったが・・・・
 
 
人生山あり谷ありワンツーパンチで一寸先も見切れない闇というか、捨てる神あれば拾う魔神ありというか、十二支のネズミゴールというか、とにもかくにも、他のチルドレンを差し置いて、トップ当籤を果たしてしまったわけだ。まあ、そこらはさすがに主人公である。
 
 
というわけで、スーパーロボット七つ目大戦α、鋼と激動と魂の本編が始動するわけであった。
 
 
今まで数々の悪党、怪人宇宙人その他もろもろを退けてきた猛者揃いのロンド・ベル。
その中での碇シンジの居場所は・・・・・「僕はここにいてもいいんですよね」などと小声でもしょもしょ言っても誰も聞きやしないテンション高いアドレナリン炸裂日々是戦闘のアーガマ内でのエヴァ初号機パイロットの立場は・・・・・いったんは参戦を断られているネルフのチルドレンの位置は・・・・・
 
 
「マジンガー一家」
 
 
その中にあった。もちろん、アルフィミィも同じである。
これは、この二人を拾ったのが剣鉄也であった、というのが全てで特に意味はない。
 
カモの刷り込みのように、ミケーネ帝国と単独で戦う碇シンジと初号機の姿に、「これはオレの仲間だ」と脳みそに刻まれてしまったのだろう。剣鉄也から見ると、碇シンジはもうすっかり「弟分」であり、もしこいつになにかあったらオレが黙っていないぞ、と口にはださないものの、周囲にそのようなプレッシャーをかけるのだ。また、普通であればありがた迷惑、暑苦しいと感じるはずのその強烈プレッシャーを全く気にしない、気にしない、気にしない、碇シンジとアルフィミィはまったくもって剣鉄也にとっては「かわいい弟分」であり、「かわいい妹分」であった。これは処世術とかなんとかいうより、なんとなくウマがあうのだろう。しょうゆマヨネーズのような意外な組み合わせであった。
 
 
たとえば、ロンド・ベルが学園だったとしたら、新入生碇シンジと留学生アルフィミィは、入学初日の登校途中に、暴走族あしゅら団に襲われ、少年は少女を守りなんとか奮戦したものの、ナイフで刺される間一髪のところを、格好良く現れたバリバリの剣道部の主将に救われ、ううむ、あしゅら団相手にここまでやるとはこいつは見所のある奴だ、と目をかけてもらうことになった、というわけである。その後に待つのは剣道部への強制入部。
このような竹刀、いやさ、次第なのであった。
 
 
実のところ、防御力に欠けるモビルスーツ部隊などは盾役として、ATフィールドの使えるエヴァ初号機を自分たちの小隊に欲しがったりもしたのだが、剣鉄也を前にしてはそんなことは言えなかった。ともかく、一番最初に出会った人間が命運を決めることもある。
 
マジンガー一家に入った、ということはもろに最前線で、敵の攻撃をその鋼の体で防いで、大攻撃力でぶちのめす、ということをせねばならない、ということだ。一歩も退くことを許されない、スーパーロボットの花道ではあるが、その分危険度は高い。
求められるのは、操縦技術うんぬんよりもひたすらに度胸と根性と熱血と頑丈さである。
あえていうなら・・・・・・「魂」?
 
いまさら「僕、怖いからイヤです」などといおうものなら、マジンガーブレードで斬首されるだろう。新入生がダブルマジンガーにつき合わされて最前線に立つ、というのはゲッターチームやコンバトラーV、ボルテスVチームなど他のスーパーロボットたちにも(剣鉄也の気性を知るが故に)心配されて同情されて、
「お前も大変だな、鉄也さんに見込まれちまうとはな。だけど、この葵豹馬様とコンバトラーVがしっかりフォローしてやるからな、がんばれよ!」
「碇シンジ君、これはハイブリットアーマーだ。良かったら使ってくれ。?ああ、ボルテスは頑丈だから大丈夫だよ。これからよろしく頼むよ」
「たとえ慣れずに失敗しても大丈夫だ!その後の特訓はまかしてくれ!!どんな困難でも克服できるようにしてみせるぜ!トカゲでもウーパールーパーでもカミツキガメでも、どんとこいだ!はっはっはっはっは!なあ、ムサシ!」
 
そのおかげで早く馴染んだり、強化パーツをめぐんでもらえたり、特訓のメニューを考えてもらえたり。
 
「いや、シンジはこんなおっとりおぼっちゃんみてえな顔をしているが、実はスゲエやつなんだぜ。なんせたった一機で機械獣を片っ端からバッタバッタと・・・・」
さっぱりとした竹を割ったような兜甲児がアクションつきで廃村での武勇伝を語ってくれることも、碇シンジの名がロンド・ベルで早く馴染むことにかなりの役割を果たしていた。
 
 
マジンガー一家で良かったのかどうか、まだ分からない。
だが、碇シンジのロンド・ベル内の居場所は、そこであるのは間違いなかった。
どんなに力があっても、仕事があっても、居場所のない人間は哀しい。
とりあえず、葛城ミサトらと離れてしまった碇シンジであるけれど、寂しくはなかった。
 
 
「わたしも・・・いますの」
賑やかで活気のある雰囲気の中、碇シンジのその隣にはたいてい、アルフィミィがいた。
なんで嘘をついてまで同行してきたのか、よく分からない。けれど、あの村に一人で置いていてまたミケーネ帝国がやってきたら大変であるので、詳しくは詮索しない。
 
「やっぱり、さびしかったのかな・・・・・・」
 
そう思うと、ねるふの名を用いたことは・・・身分詐称ってことになるのかなあ?そのわりにはばれないし・・・まあ、いいか、とほうっておく碇シンジであった。さすがに自分の父親が総司令だけのことはある。
まさか、妖怪です、ともいえないし。僕をパイロットにするくらいの父さんだから、なんとか誤魔化すんじゃないかな。いろいろ困るようなことになっても。うん、そうしよう。
 
そのことが葛城ミサトたちの頭をどれだけ悩ますか、心配させるのか、分かっていない。
まあ、そのうちにとんでもない目にあうであろう。
 
 
その料理技能とのほほんとした、巨大ロボットのパイロットにはあまりいない中性的な風貌と生かして、女性パイロットたちの井戸端の輪にまで、すんなり溶け込んでいたりするのだが。
 
 
閑話休題
 
 
さて、ロンド・ベルがダイ・ガードを切り捨ててまで国外へ大急ぎに急いでいたのは、、「最初の大勝負」のためだった。作戦名は「金色彗星」。今後の展開に大いなる影響を与えるであろうミッションなのだそうだ。新入りの碇シンジにはよく分からないのだが、聞くところによると、要は「とあるパイロット」をスカウトする作戦なのだという。
 
 
「へー。そんなにすごい腕のパイロットの人なんですか?”神の目をもつ男”とか?」
「・・・・特殊な、精神コマンドをおもちとか・・・ですの?」
ロンド・ベルのこのメンツを揃えながらなお戦況を左右するというのだから、その人物はどれくらいすごいのか。また、その人物の乗るロボットはどれくらい強いのか。
アーガマの内部でモビルスーツを急ピッチで組み立てているのだけれど、関係あるのかな。
それも、金色の・・・・
 
碇シンジとアルフィミィが食事後のマジンガー一家の団らんの中で尋ねてみると、「えっ?あー、そ、そうだな・・・すごいといえば・・・すごい、かな?なあ、さやかさん」「え、ええ。一流のパイロットだとおもうけど」「そ、そうね。ロンド・ベルになくてはならないひとよ」「そうだわさ。そうだわさ」なぜか返答に歯切れが悪い。兜甲児も炎ジュンも弓さやかもボスも答えにくそうに目配せしあい、結局のところ、親分である剣鉄也に任せることにした。押しつけた、といってもよい。
 
「?・・・・・」べつに、こどもってどうして生まれるの?などと聞かれたわけでもあるまいに、どうしてそんなにうろたえるのか分からない碇シンジとアルフィミィ。
当然の疑問だとおもうし、話からすると何度も一緒に戦ったのだろう。よく分からない。
実力は凄くあるけど、ものすごくクセの強い人なのかも・・・・・・?この人が口をはばかるんだから、相当なものだなあ・・・・などと考えつつ、しばらく目を閉じ考えていたふうの剣鉄也の言葉を待つ。
 
 
「シンジ君」呼びかけるその声はとても重たく響く。声帯も腹筋も鍛え抜かれている。
 
「はい」
 
 
「世の中には・・・・・そうだ、世界には」
 
「せ、世界ですか」なんか急に偉大な話になってしまった。さすがはグレート。ロンド・ベルにいる限り、自分はこの人についていかなくてはならないのだ、という想いを新たにする碇シンジ。剣鉄也はごまかしや韜晦でこんなことを言っているのではない、この男の脳裏には本当に”世界”があり、大まじめの本気なのである。ロンド・ベル内で一目も二目も置かれる理由である。
 
「味方にいればそれなりの地味な働きしかしないが、敵にまわすとその十万倍くらいの力で襲いかかってくる種類の人間がいるんだ・・・・・オレたちは彼を繋ぎ止めにいくんだ」
 
しかも言うことに遠慮がない。確かにその通りなのだが・・・
 
 
「繋ぎ止めに・・・・」そうなれば自分の名前は縁起がいいのかしらん。「ですの」
 
 
「そうだ。彼の名は・・・・・クワトロ。クワトロ・バジーナ大尉だ」
 
 
「桑トロ・・・」
名前は変だが、確かにそれなら急いで仲間にしたほうがいいにきまっている。まるで観客の多い巨人戦になるとがぜんがんばるマイナー球団みたいだが。トロトロやっているヒマはないわけだ。碇シンジとアルフィミィのその時の画像イメージは桑畑の真ん中で居眠りしている、クワガタの角をもったトトロであった。いびきをかく彼を目覚めさせスカウトしなければならない・・・・・・・・