スーパーロボット七つ目大戦α
 
 
新西暦1××年
 
 
は、世界的に農産物の出来も良かったのだが悪党の出来もよかったようで、宇宙にも地下にも地上にもウジャウジャと現れそれぞれの悪の能書きとモットーとともに地球を壊すなり乱すなり支配するなりそれぞれの方針通りに動き出し、通常の市民生活に大いに迷惑をかけていた・・・・。悪の軍団の腕っぷしと元気の良さと常識のなさはそこらの常識に凝り固まった普通の軍隊などではとても相手にならない。敵戦力の気力をアップさせてさらなる凶悪兵器を使わせるだけである。常識、通常を、普通をあざ笑い蹂躙する非常識軍団に対抗できるのは、さらなる非常識・・・いやさ特別!つまりはスーパー、な、(しかしウルトラではない)戦闘兵器を駆る者たちだけ!っていうか、のみ!!おまけに正義の心をもっている!!!
 
人、そのスーパーな集団体を第十三独立分隊、ロンド・ベルと呼ぶ。
 
スーパーかつダイナミックな圧倒的な破壊力攻撃力を誇り、朝日が昇る、英語で云うとサンがライズする、常勝朝日の負け知らずの無敵軍団である。しかも、独立分隊の名は伊達でもなんでもなく、補給らしい補給は新兵器の搬入の際など、たま〜にしかせずあとは現地調達、資金を悪から奪って腹を満たしていくという、少々外宇宙でも異世界でも未来世界でも戦い続けるという生活力旺盛なたくましすぎる孤高の戦士たちである。
 
そして、その戦略たるや、巨大な叩き台とハンマーを製造して相手を粉砕するアメリカと十二分に準備を整えて大攻勢をかけて一挙に事を決する全縦深速戦即決ソ連と足して”武装商人”アラビア風味をつけたようなもので、まことに徹底している。
なんせ戦闘を長引かせることはなく、必ずその場でケリをつけている。
 
早い話が、あまり名将でなくともロンド・ベルの指揮官は務まると云うことだが、とにかくロンド・ベルは「勝てる」戦力をてめえらだけ所有しているわけで、とにかくやたらめったらに強い。
 
うえに、たかだか一つか二つの空中戦艦に戦力をしこたま詰め込んでの高機動でPGM騎兵隊のような戦力投入をやらかすので相手は逃げようもない。
ロンド・ベルが通ったあとには悪の存在はもちのろん、草木の一本も生えないと云う。
 
とりたてて、弱点と言えば・・・・・そのバカ強さが政治家や軍隊の偉いひとに恐れられ疎まれて平和を取り戻しご用が済めば即時解体されて、メンバーはあちこちに散らされて中心面子も左遷されることくらいで、何かことがあればまた再びメンバーを揃えて集成するまでしばらく時間がかかることくらいであろうか。まあ、もともと建制された常備軍ではないから当然のなりゆきではある。ロンド・ベルをぶっつぶすにはこの初期の段階で最精鋭の大軍を叩きつけて中心メンバー(ブライト・ノア、アムロ・レイ、兜甲児、破嵐万丈など)を抹殺してやるしかあるまい。正義の心は不滅だろうが、生命は一個しかない。
 
 
なにはともあれ、悪の総元締めとケリをつけるのは、いつもロンド・ベルであり、この悪と戦う激しい台風の目玉にいたければロンド・ベルに参加するしかないわけである。
 
 
 
「と、いうわけで我がネルフもロンド・ベルに参戦するわよ!」
葛城ミサトが素晴らしく便利な接続語と共にこの地球の危機に立ち向かう決意を吼えた。
ちなみに。
”と、いうわけで、”という葛城ミサトのセリフがどこを差しているのかは不明である。
 
 
「はあ?」
いちおう、名目上の上司であり、保護者でもあるので”お約束の文句”は出さなかった惣流アスカ。使徒でもないのにプラグスーツに着替えて呼び出されたからなにかとおもやあ。
 
「と、いうわけで・・・・っていうのが良く、分からないんですけど・・・」
碇シンジが質問する。その顔色には賛成とも反対とも書いていないが。確かに謎すぎる。
参戦してエヴァに乗って実際に痛い目見るのは自分たちなのであるから。もうちょい・・・・説得力のあるワードが欲しいものだ。言い出したら聞かない性分なのは分かっているけれど。「それに、第三新東京市の防御はいいんですか?もし、使徒が来たら・・・・」
 
 
「ふふふ・・・・・的確すぎる質問をダブルで。シンジ君、成長したわね・・・・」
 
 
「ミサト・・・・大丈夫かな」
「昨日、痛んで捨てようとおもってたレバさしを夜中に一人でゴソゴソ食べてたし・・・」
惣流アスカと碇シンジがその尋常ではない反応に心配げに顔を見合わせる。
 
「結論から云うと、”使徒は来ない”わ。エヴァの参戦に碇司令の許可も頂いてます。
ほら」
葛城ミサトはデスクから一枚の書類を碇シンジたちに見せた。
 
 
”と、いうわけで、エヴァ四体のロンド・ベル参加を許可する・・・・碇ゲンドウ”
 
 
「うーん、たしかに父さんの印鑑が押してある・・・・・・しかも、こっちも・・・
”と、いうわけで”・・・・?」
まじまじと書面を確認する碇シンジと惣流アスカ。一歩離れて綾波レイ。
「新手の使徒の陰謀じゃないの?・・・・・それに、エヴァ”四体”って勘定が・・・・
もしかして・・・・参号機・・・・鈴原?まさか明暗ってことは・・・・」
 
 
「ふふん、るん」にんまりと笑う葛城ミサト。なぜか勝ち誇っている。
 
 
「彼よ・・・・・・」綾波レイの赤い瞳が振り向いて、もう一対の赤い瞳を映した。
 
 
「ひさしぶり・・・・四号機ともによろしく」渚カヲルであった。プラグスーツ装着であるあたり、やる気はまんまんらしい。
 
 
「ふふ、”と、いうわけで”使徒は来ないわけなのよ。だから後顧の憂いなく戦えるってわけ。第三新東京市だけが無事でもよそがグチャグチャにされちゃあ遅かれ早かれ生活が成り立たなくなるわ。どうせ日本が占領されれば堅壁清野しても同じことだし。連絡なしに単独で戦力の逐次投入するよりこっちも団結一丸一束ねになって事に当たった方がいいわよ」
 
・・・一応、それらしいことを考えてはいたらしい。
 
「一応、参加しておけば未知の敵の対戦情報とかももらえるわけだし。機械獣とかモビルスーツとかどう戦えばいいのやら豊富なノウハウを持ってるわけだしね。逆に言えば、参加することはギブ・アンド・テイクであっちの戦力もいざとなれば借りられる助けてもらえるってことだし・・・・聞いてる?」
 
 
葛城ミサトのそれらしい説明は、時間軸など関係なく旧交を温める子供たちの耳ATフィールドで弾かれる。「ふっ・・・・まあいいわ。これからスーパーな激戦が待っているのだから・・」
 
 
どんどんどんっ!!
 
 
作戦部長室のドアが激しく叩かれた。まさか時間軸がくるって戦略自衛隊の突入ではあるまいか。だが、入ってきたのは日向マコトだった。かなり慌てている。彼も葛城ミサトにコキ使われつつ使徒戦で神経を鍛えられているはず。その彼がこうも取り乱すとは・・・
 
「大変ですっっ!!葛城さんっっ!!」
 
 
「どしたの。日向君」そのわりにはのほほんとしている葛城ミサト。
 
「お、おちついて、気を・・・静めて聞いて下さい・・・・・たいへんな・・・・ことになりました・・・怒らないで、聞いて下さい・・・・・・」
 
 
「落ち着いてるケド・・・・・・あはは、まさかロンド・ベルにあたしたちの参戦が断られた〜!とかなんて話じゃあないでしょうねえ」
 
 
「・・・そ、そのまさかです・・・」
 
「なあに?」
「あに?なんだって日向君、ワンスモアプリーズアゲイン」
 
 
「ロンド・ベルにネルフの、エヴァの参戦を断られてしまいました・・・・。えー、なんというか・・・戦闘能力は認めるが、戦力的に不安定であり、あー、つまり・・・暴走されて同士討ちされてもかなわないし、使徒を引き込む恐れがあるのでそれと戦うのは宗教的にちょっと・・・という人間もおり・・・アンビリカルケーブルも引っかかりそうで困るし電力を戦艦から食うのがかなわないし・・・・ルートがややっこしい人類進化のテーゼ袋小路にはまってしまうのもご免被りたいし、第三新東京市の守備という本来の使命を果たしてくださればそれでもう十分に有り難いので、それに邁進してください、と申し出自体には最大限の感謝を、と仰っておられまし・・・・・た・・・・・・・が・・・・・・・・・」
上司から風速四十メートルオーバーで吹きつけられる鬼気に怯えて、声が出なくなる日向マコト。彼としては使徒が出ない保証されあればたまにはよそに行ってみたい気分もあったし、なによりスーパーロボットとそれ関わる綺麗どころたちとお近づきになれるのは嬉しくないはずがないわけで。参戦を断られたのは残念無念であり、だが、それが正直に出てしまう自分に後悔してもすでに遅い。
 
 
「ウフフフフフフッフフフフフッフフフフフッフフフフフッフ・・・・・・」
邪魔大王国のヒミカ(鋼鉄ジーグの悪ボス)も気合い負けしそうな狂笑いの葛城ミサト。
うつむいたその顔は屈辱の般若なりや。まさかこのような結果になるとは・・・・
 
 
「ま、まあ・・・・・しょうがないじゃない?こっちの実力がよく分かってないのよ。
使徒の情報は外部に漏れないように隠蔽していたわけだからさ、それに関係するエヴァの力とかも・・・」
実際に「いらない」と戦力外通知を受けたのは自分たちであり、恥かかされて怒ってもいいのだが・・・・目の前でこういう有様を見せつけられると・・・・・かえってなだめにかかる惣流アスカ。苦労が多い。
 
 
「そうか・・・・僕たちはいらない子供なんだ・・・・あいた」
ぺし、と惣流アスカに後頭部はたかれる碇シンジ。
「あんたそーゆーキャラじゃないでしょ。鬱になるの不許可・・・・つうか、普通、戦わずにすんで喜ぶトコじゃないの?」
 
「じゃあ、喜ぼうか?・・・・わーい」今日の晩ご飯はステーキだと知らされたやんぐめんな喜びを表現する碇シンジ。
 
「碇君・・・・・命はだいじにしたほうがいいわ」
こういう場合は守りようもないので、本人に注意をうながす綾波レイ。すこしはおりこうになりますように。
 
「で、どうするんですか」仲間のためにを悪を裏切り正義に寝返るのも、その逆も等価値である天秤少年、渚カヲル、公平と言えば公平な、節操がないと言えばない、フィフスチルドレンが葛城ミサトに問うた。
 
「う、うーん・・・・・」
 
 

 
葛城ミサト 選択
1・
「この屈辱は・ら・さ・で・お・く・べ・き・か」というわけで、たまたまやってきたネオジオンのスカウトに応じてロンド・ベルを叩きのめす・・・・(逆襲のミサトルートへ)
 
2・
「これはなにかの間違いよ。何者かの謀略の可能性もあるわね」というわけで、腕利きの交渉人(ネゴシエイター)に間に入ってもらってもう一回話し合ってみる・・・・・(THEビッグオールートへ)